国葬の日に

雑感

安倍元首相の国葬儀当日。今日は、法的根拠がないにも関わらず、閣議決定と内閣府設置法に基づくと強弁して国葬儀を実行した日だった。国葬令は、戦後憲法施行時に「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」によって効力を失い失効している。法的根拠をもって行われていた天皇に貢献した人を国葬とする法律がなくなったんだから、戦後、国葬を復活させようと思えば、①法的根拠をもつこと、②戦前の天皇主権ではない新たな基準をもつことが必要になる。それは、吉田茂元首相を閣議決定だけで国葬儀としたときの反省でもあった。

政府も自民党も、まともに議論すれば、国葬が日本国憲法の精神と相容れないことは理解されていた。それは、1975年、佐藤栄作元総理を国民葬としたときの議論でも明らかだった。国葬を検討したが法的根拠がないことや国会審議で圧倒的な賛同が得られないことからみて、国葬を残念しているからだ。

こういう歴史的経過を無視して、閣議決定だけで国葬を実施した政府の態度が問われる。内閣府設置法の第4条3項33号「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)」を根拠に国葬ができるということになれば、内閣が国の行事を勝手に決定すれば何でもできることになる。国権の最高機関である国会で法的な根拠を決めなくても、全ての国家行事を内閣が閣議決定すれば、何でもできるというのは、極めて乱暴だ。しかも補正予算も組まずに予備費で対応するのも、国会の手続きを無視するもので許しがたい。しかも今回は野党が8月18日に臨時国会の召集を求める要求書を出し、国葬や統一協会問題、物価対策とコロナ対策について審議すべきとしていた中でのことだった。
審議する時間はあったにも関わらず、国会を開かないで国葬を内閣だけで強行したことは、記録されるべきだと思われる。

夕方役場から自宅に帰ると、国葬についての放映が、ほとんどのチャンネルで行われていた。礼賛一色のものだと言っていい。国民世論が分断され、意見が分かれた中での国葬と言いつつ、国葬の放映を行う日本のメディアは、国民の立場に立ったメディアではないということだろう。

かつらぎ町は、町の旗と国旗を半旗として掲げ弔意を表していたが、それ以外のことはしていなかった。
ぼくは、8月12日、議員名で国葬が行われても、「安倍晋三元首相の『国葬』に対し地方自治体として弔意の強制につながる態度をとらないよう求めます」という申し入れを行い、①安倍晋三元首相の「国葬」に賛意を表明しないこと。②自治体として弔意の強制につながるような態度をとらないことを求めていた。文書による回答はなかったが、この申し入れに対する協議は行った。その後、町として半旗だけは掲げるということになったという経緯がある。

かつらぎ町には表彰規定がある。この表彰規定に基づいて町制施行50周年のときには表彰が行われた。国葬によって安倍元首相の国葬を行うのなら、国葬にする基準が明確にあってしかるべきだろう。これさえなく、予算も計上しないで行われた国葬は、全国の都道府県、市町村の手続きよりも国の方がきちんとしていないと言っていい。

安倍首相の葬儀は、すでに7月12日に遺族の手によって終わっている。今回の国葬は、いわばお別れ会や偲ぶ会的なもの。政治家だったのでまさに政治的なセレモニーとして実施されたものだ。
弔意は亡くなったときに済ませてある。

法の下の平等、思想、良心の自由という憲法に触れる国葬は、現憲法下では成立し得ないもの。弔問外交として岸田首相は40人の外国要人と会ったことが大々的に伝えられ、安倍首相の功績を一方的に賛美し、自分の政権維持につなげようとして、人の死を政治的に利用したのは、本当に浅ましいと感じた。
亡くなって3か月近くたって偲ぶ会が行われたときに、死者の政治利用に対して政治的な理由によって行かないという態度を取ってもそれはいいだろう。そんなことも考えた。
国会前では、国葬に反対する集会が国葬の開始される時間である午後2時から1万5000人の規模で開催された。空気を読むことが至上命題であるかのような日本にあって、国葬反対の意思を貫いて、それを態度表明した人々のはエールを送りたい。
ぼくは、議会だよりの編集があったので、その時間は役場で作業に追われていた。ぼくが関わっていた空間では、時間は何事もないように過ぎていった。
死者を弔う形は、いろいろあっていい。国葬にして物議を引き起こす判断は本当に間違っていたと思う。内閣葬にした方がよかった。それは死者を傷つけない一つの方法だった。なぜ突然銃弾に倒れた安倍さんの、政治的な評価が二分した人を、こんな形で利用したのか。このことを判断した内閣の責任は強く問われるべきだと思う。


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雑感

Posted by 東芝 弘明