平和ボケ
平和ボケという話がありますね。
平和ボケの最大の要因は憲法第9条だと指摘している人もいます。
本当にそうなんでしょうか。
尖閣問題や竹島問題で、軍事的な対応を煽って、「いてまえ」という物言いをしている人たちがいます。韓国や中国に対して、「なめられたらあかん、国防軍を持って対応すべき。戦争になるなんて思えへんわ。とにかく腹立つやんか。もっと毅然と対応せんと」という意見です。
元外交官の中には、今の中国と韓国を巡る日本の対応はいかにも危うい、危険だと指摘する人もいます。こういう専門家の人の意見を聞いていると、軍事的な対応をあおりながら、「戦争なんて起こらんわ。でも懲らしめないと」という意見の危険性を感じます。
狭さは安倍さんや石破さんにも原因があります。
第二次世界大戦の教訓は、ドイツとイタリアと日本というファシズム3国が、世界に対して侵略線を展開したが、ファシズムは、連合国の反撃によって打ち倒されたところにある。二度とファシズムを許さないというのが、戦後の原点です。この世界史的な確認は、非常に大きなもので、いわば全世界共通の認識だと言えると思います。
国連の存在と国連憲章の存在が、この教訓の具体化でもあるということです。
戦後確立したこの国際的な体制を否定して、国際関係を樹立することはできません。しかし、日本の中の右傾化する論調は、このような戦後の原点への真っ向からの挑戦になっています。
日本の引き起こした戦争は侵略戦争ではなかったとか、アジア解放のための戦争だったという言い分は、国連や国連憲章の否定に繋がっているという自覚がないのかも知れません。
橋下徹さんの従軍慰安婦の発言は、アメリカやドイツから非常に厳しい批判が寄せられました。批判だけでなく、従軍慰安婦の実態については日本以上に詳しい記事が組まれました。日本の報道を見るよりも、外国の報道を見た方が、従軍慰安婦の本質を知ることができたというような状況になりました。
右傾化する主張は、憲法第9条を平和ボケの象徴であるかのようにいっていますが、第二次世界大戦の本質も、戦後の原点も、今日の国際情勢も十分理解しないで、軍事的な対抗を煽って、それでも戦争なんか起こらないよという意見の方が、よほど平和ボケなのではないでしょうか。憲法第9条を生かす外交と国づくりという観点の方が、国際情勢をよく理解して対応する力になるのではないでしょうか。
軍事的な対抗を煽る人々の意見の根底には、中国の脅威があると思われます。中国は軍備をどんどん拡張し侵略の意図を持っているというような意見です。このような分析を行うためには、中国の国際戦略をきちんと分析する必要があります。でもこういう意見は、中国が軍拡を行っている点に根拠を持っているように見えます。
アメリカが世界戦略をもって軍事的に対抗してきた歴史は、アメリカの国際戦略によって裏付けられます。現在は、テロとの戦いが前面に打ち出されており、一国でも先制攻撃を行うことを宣言している国がアメリカです。しかも、実際にこの戦略に基づいて、イラクとアフガンに派兵し、アフガン戦争は今も継続中です。
中国は、他の国との間で紛争問題を持っていますが、中国が戦争を引き起こしているという状況にはありません。中国の脅威をいうのであれば、ぜひとも中国の国際戦略がどのようなものであるのかを聞かせて欲しいと思います。
軍事的な対抗によって、緊張を激化させるべきではないという認識は、尖閣や竹島で軍事的対抗ばかり煽ると、一触即発のような事態が生まれ、戦争の危険さえ生じてくるという認識があり、これを回避するためには、徹底的な外交努力を行って、問題の解決を図るべきだという認識に支えられています。こちらの方が、より一層リアルな認識なのではないでしょうか。
戦争する普通の国になるように、と言いますが、国同士の戦争を仕掛けている国は、ほんの少ししかありません。戦争を回避して話し合いによって解決するというのが、大きな世界の流れです。
自民党は、国防軍を作る理由を抑止力の強化にあるように見せかけています。しかし、そこにはウソがあります。抑止力が問題であるのであれば、集団的自衛権は問題にはならないし、問題にすべきではないと思います。
集団的自衛権というのは、軍事同盟を結んでいるアメリカ軍が攻撃を受けたら、それは同盟国が攻撃を受けたと見なし、戦争に参戦できるというものです。アメリカ軍が攻撃を受けているので、日本の自衛隊が参戦するのは、アメリカ軍の防衛のためだということになります。つまり、集団的自衛権を認めれば、アフガニスタン戦争に日本の自衛隊が参戦できるようになります。
憲法第9条第2項をなくさないと集団的自衛権は行使できません。自民党が集団的自衛権を認める動きを強めているのは、国防軍を作ることに目的があるのではなく、アメリカ軍と共同で軍事作戦を展開するところに目的があることを、認めるものになっています。
「日本は戦争何てしないよ」「国防軍を作るだけなんだから」
こういう意見は、自民党の説明を信じている中から生まれていると思いますが、このような論理は、自民党の動きの全体をリアルに見れば、否定できると思います。
平和ボケは、何の根拠もなしに「日本は絶対に戦争何てしないよ」と言って現実を見ない人の中にもあるけれど、自民党の中枢部も含めて、平和ボケだと批判している人の中にもあると思います。
ディスカッション
コメント一覧
んんん・・・論理的に無理があるように思いますが・・・笑。
純粋に、憲法を読んだ場合、憲法9条は日本の状況と明らかに違いいます。現社会状況が憲法違反状態です。わざわざ憲法学者に頼る必要もなく、それほど難しい文章ではないので理解できます。
そういう状態を長期間放置することは、立法府である国会の責任です。
憲法改正はごく当然のことだと思いますが・・・
トリノさんの意見は一貫していますね。現実に憲法を合わせればいいということですよね。
ちょっと極端な例を書きます。
ヒットラーは、ワイマール憲法の緊急事態についての規定を活用して、全権委任法を成立させ、憲法を停止状態に追い込みました。独裁という現実を作り出しました。そういう現実が生まれれば、その現実に合わせて憲法を作ればいいということになりますか。ヒットラーの場合は、憲法を機能停止状態にして、侵略戦争を展開し、やがて崩壊しました。おそらく、ヒットラーの勝利に終わっていれば、独裁国家の現実に合わせて、憲法を改正しただろうと思います。
トリノさんの論理でいえば、こういうことになるということでしょうか。
それとも、こういう論理は極論でしょうか。
極端な例ではありませんよ。ただそのドイツの歴史に対する東芝さんの例は、両刃の剣なのです。そのヒットラーの
例は、どんないい憲法を持っていても戦争になることを意味しています。政治家に見識と判断力がなければ、いくらいい憲法でも意味がないのです。
自民党は集団的自衛権を憲法解釈を変えて認めようとする・・・そうなるのよ。憲法が長期に渡り現実と違うと、憲法に対する信任がなくなる。
戦争が起こるのは、憲法によって決まるのではありませんよ。そのときの世論や指導者の心理が大きく影響する。
本当に平和を守りたいのなら、憲法を守るのではなく政治家の見識や能力の質を守るべきです。
まあ・・・今の国会議員のレベルではダメでしょう。・・・あの簡単な「アベノミクス」の本質さえ理解できないのですから・・・笑。