一般質問の仕方、自分流。

議員の活動

book1

議員の一般質問について、目的の定まらないような一般質問がときどき見受けられる。また、提案型の一般質問を行うべきだという話をすると、
「なかなかそこまでたどり着けないです」
というようないい方をする議員もいる。
日本共産党の議員が一般質問を行うときには、ただ単に当局に対してその事業に対する当局の方針を尋ねるだけ、というような一般質問はすべきではないと思っている。

25年近く一般質問を行ってきた者として、自己流の一般質問の仕方について書いておきたい。興味のある議員の参考にしていただければありがたい。

提案型の一般質問をおこなうために

1 質問のテーマを決める
質問のテーマを決めたら、その事業の何をどう変えるべきなのか、どういう提案をすれば課題を解決し前進させることができるのか、という問題意識を持ってそのテーマを調べる。つまり、質問を準備する最初から提案について、考え方を鮮明に持って質問を準備するということになる。例えば、ごみ問題についてとか国民健康保険税についてというような漠然としたテーマ設定はしない。テーマの選び方は、ごみの分別収集の改善についての提案とか国民健康保険税の値下げのためにというようなものになる。一般質問の目標、質問の焦点、質問の結論についての見通しがないようなテーマ設定をすると、「提案になかなかたどり着けない」というようにおかしなことになる。
テーマについて調査を行うときにきわめて大切なのは、テーマ設定したときの問題意識(こういう提案をしようというものも含まれる)が調査の過程の中で大きく変化していくことを大胆に視野に入れておくことだ。ここで柔軟性が発揮できるかどうかが、質問の成否を握っていると言っても過言ではない。最初の問題意識が変化しないで質問に入るという人がいるとすれば、それはかなり硬直的な頭脳になっているということを意味する。最初の問題意識に固執する人は、思い込み、石頭的な傾向が自分自身を支配していると考えた方がいい。

2 調査の仕方
(1) 情報を広く収集する
新聞、テレビ、雑誌、論文、本、インターネット、人との対話、生活相談などあらゆる情報が質問にとって役に立つ。テーマを決めたら、できるだけ広く資料を手元に引き寄せる。インターネット上の情報は非常に役に立つ。ネットは情報を把握するデータベースだと言っていい。日本共産党の議員の場合は、日本共産党の政策を基本として踏まえることをお進めする。党の政策には、問題解決の視点が数多く含まれている。情報の中で本は、最も確かな資料になる。本は、設定されたテーマに対し、視野深い論点を与えてくれる。

(2) 現場主義を貫く
すべての資料ついて大切なのは、資料を自分のアクションと結びつけて活用するところにある。新聞記事を読んで分からない点があれば、署名記事であれば書いた本人、新聞記者にコンタクトを取る。ネットでえた情報が生きるか死ぬかは、自分の能動的な取材にかかっている。地方自治体の情報であれば、北海道でも沖縄でも電話を入れて担当者とやり取りする。現場に行くことができるのであれば、アポを取って訪問し取材する。取材の相手が地方税回収機構であれば、そこに議員の名刺を持って訪ね、直接質問をする。情報の現場には人間がいて、人間による仕事がある。現場主義を貫いて、体を動かし取材を重ねて行くと、追求していたテーマが立体的に見えてくる。
取材の時に大事なのは、事前に取材するテーマを把握した上で取材に望むことだ。「知らないので教えてください」というのでは、相手にバカにされ、深い情報は得られない。地方自治体の議員であれば、自己紹介をすれば、率直なやり取りが成立する。

(3) 調査の中で得た「発見」と「感動」が質問に命を吹き込む
自分が体を動かして取材を重ねるという現場主義を発揮していれば、調査のプロセスにドラマが生まれる。この取材のプロセスの中で、最初の問題意識は、自ずから打ち砕かれたり、充実したりして変化する。場合によっては、自分の問題意識が気持ちいいほど打ち砕かれ再構築されることさえある。
徹底的な調査には、自分なりの新しい「発見」が必ず含まれる。新しい「発見」は認識の発展を促してくれる。そこには深い「感動」がある。取材で話してくれた言葉が、忘れられない思い出になる場合もある。自分なりの「発見」と「感動」が、一般質問を組み立てる際の重要なポイントになる。「発見」と「感動」が、一般質問に命を吹き込む。そういう質問は、聞く者の心を動かす力をもつのではないかと思っている。

3 原稿は一気に書く
時間ぎりぎりまで文献に当たりながら、質問テーマへの認識を深めていく。ここまで準備すれば、質問の組み立ては自然に出来上がる。ぼくの場合、質問の展開の仕方で頭を悩ませることは全くない。原稿を書く前に質問の展開の仕方は、自然に頭の中に出来上がっている。徹底的な取材と文献調査が、質問を組み立ててくれるといっていい。質問の作成に馴れていない人は、こういうようにはならないかも知れない。一つ一つの質問に対し、精魂かたむけて取り組んでいけば、人間の脳は、この努力に答えてくれるようになる。多くの問題は、脳が潜在意識下で情報を処理している。大事なのは、決めたテーマに対し、根本的に事に通ずる努力に尽きる。原稿を書き始めたら書くことにだけ集中する。
ぼくの場合は、wordのアウトラインプロセッサを活用している。普通のワープロよりもこちらの方が使いやすい。A4の用紙の右3分の1ぐらいを開ける。質問のか所には数行、答弁をメモ書きできるように空白を開ける。このようにして、A4用紙で13ページ程度に収まれば、持ち時間1時間、完全一問一答方式の原稿ができる。
原稿は「一般質問を行います」から「これで私の一般質問を終わります」まで書く。基本的には、「yes」という答えしか返せないような質問の組み立てを心がけている。事実の確認、認識の共有をうながしつつ、提案をおこなう。「yes」の積み重ねの上に立って、提案を受け入れてもらえれば嬉しい。質問原稿の中で組み立ての核になるのは、調査の段階で得た「発見」と「感動」だ。新しい「発見」は、聞く側にとっても新鮮なものであるケースも多い。生き生きとしたこれらの認識が、実際の質問をいいものにする。
一言一句質問を書いているが、答弁は相手次第。こちらの趣旨が伝わらないままずれた答弁、はぐらかした答弁が返ってくるケースも多い。答弁者の取る態度によって、質問は変化していく。事前に用意した質問原稿は、ナビゲーション的な役割を担う。時間が押してきたら質問をショートカットする必要も出てくる。時間との関係で質問をはしょるときに、用意された質問原稿は、原稿から離れた質問を軌道修正する上で大きな力になる。
かつらぎ町の一般質問は、国会の予算質疑のように完全一問一答方式で、持ち時間は1時間となっている。したがって当局の側は、答弁書をなかなか作成できない。やり取りは、真剣勝負にならざるを得ない。わが町の議会は、一般質問用の資料の作成を許可していて、議員が質問用に作った資料は、町当局、議員、傍聴者に配布される。資料作成が認められるようになったので、ぼくは、資料を軸にして一般質問を行うようにしている。
質問用の資料は、keynote(Mac)というプレゼン用のソフトで行っている。資料には、当局に作成してもらった資料もあるが、提案部分が分かりやすく理解されるように、プレゼンと同じような観点で作る資料も存在する。

 

以上が自分流の一般質問の仕方。

町当局相手にぼくは、惜しげもなく質問内容をさらけ出すことが多い。どんな質問になるの?という点で秘密主義は取らない。最も求めたいのは、誤魔化すことではなくて、議員による一般質問を町行政の発展の契機にしてほしいということだ。今回は、残業代の未払いをテーマに一般質問を行った。残念だったのは、町当局の側に率直性がなかったことだ。週38時間45分働いた上で残業をさせているという事実があるのに、運用上勤務の割り振りをおこなっていると答弁し、運用上割り振れていない事に対しては「運用がうまくいっていない」と答弁した。なぜ未払い労働になっている残業代を支払わないのか、という問いに答えないばかりか、現行の方針を改めるという観点はでてこなかった。しかも、事前のレクチャーをお願いしていたにもかかわらず、レクチャーはなく、ぼくには提出しなかった根拠を示すと思われる資料もあったし、答弁ではこの未提出の資料に言及して答弁まで行った。
ぼくが、事前に「この点はおかしいでしょ」と指摘をしても、根本的な検討が始まらず、今までの態度をかたくなに守ろうとした。職員の精神衛生も含め、健康を保持できること、原則に立ち返ることによって、法律や条例、規則をまもる職員を育成できること、課長によるマネジメントを確立して労務管理を改善できること、残業代を払うことによって、本当の意味で残業抑制を開始できることを提案したが、そういう契機にはならなかった。

法律や条例、規則は、詭弁を弄して解釈するためにあるのではない。もちろん、そういう世界は存在する。しかし、地方自治体にとって働き方を決めている条例や規則で大切なのは、自ら決めたルールを生かしてよりよい職場をつくることにある。残業になっている事実があり、10万時間も残業の未払いがある事実があるのに、運用上、この方法は許されるといい、予算がなくなれば残業代を全く支払わないというのは、働かされている者からすれば理不尽なことだ。
このルール違反を率直に認めない自治体が、果たして住民の側に立って仕事をしてくれるのだろうか。
問われているのは、そういう根本問題だろう。

残業代未払い時間の資料を載せておく。

2015年3月一般質問資料.001


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Posted by 東芝 弘明