すべては物語を描くために

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萩尾望都さんの本が赤旗日刊紙の日曜日の本欄で紹介されていたので、AmazonのサイトをiPhoneで開いて、書評を読みながら購入した。本のタイトルは『私の少女漫画講義』。この本には、イタリアのボローニャの大学で行われた少女漫画の歴史をひもといた講義が収録されている。
萩尾さんは、ぼくよりも11歳年上の方だから御年69歳だ。1日にわずか4ページしか描けないという趣旨のことが本の中で披露されている。4ページという枚数に衝撃を受けた。週刊誌の連載の場合20ページぐらいだそうだ。5日間続けて描いてようやく完成という感じ。これを何十年も続けているということになる。

もちろん、人によって描くスピードは違うだろう。背景が精細な人とそうでない人とは、大きく違うだろうし。
萩尾望都さんは、読書や調査を徹底的に行う人だった。自分の作品世界を自分の中にあるアイデアだけで作品を仕上げ続けているのではなく、多くのものから学びながら自分の中に生まれてくるイメージを形にしていく。そこに作品を生み出す力がある。本を読みながらそう感じた。
萩尾さんは、文章力も高い。本の中では、自作についても語っているので、読んでいない作品を読みたくなってきた。光瀬龍さん原作の小説『百億の昼と千億の夜』を漫画に描いた本も買った。この小説は読んだことがある。内容は忘れてしまったので、萩尾さんの漫画で味わってみたい。

ストーリーを生み出す力とは何だろうか。日本人の場合は、細部からストーリーが立ち上がってくる、というのがあるのではないだろうか。鳥山明さんなどは、メカを非常に細かく描いている。こういうところから物語がたち上ってくるのかも知れない。宮崎駿さんも機械物を非常に細かく描く。ナウシカが乗っていたメーヴェという飛行機は、実際に造ると空を飛ぶ(ラピュタのゴリアテが空中に浮くとは思えないが。飛行船だということなので浮くかも)。宮崎駿が描いている武器も、それぞれ実際のモデルがあるようだ。

外国人の顔をかなり幅広く豊かに描ける人は浦沢直樹さんだろう。外国人に見える。どこの国の人間なのか、わかりにくいのはちょっと嫌だ。多くの漫画家は、膨大な調査の下に絵を描いている。これが、息長く漫画を書く力ではないか。そう感じさせる本だった。

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Posted by 東芝 弘明