国民には二重の負担増、企業には三重の恩恵

雑感,経済

安倍総理の記者会見が、報道ステーションで紹介された。
消費税増税をおこなう決意が表明された。
消費税は5%から8%に引き上げられることになる。

この話を聞きながら、こう考えた。
8兆円の消費税増収分を今までの社会保障の予算に上乗せすれば、社会保障は充実するけれど、国は、そういうことはしない。借金でまかなっていた社会保障のお金の穴あき5兆円は、国民に負担してもらう。────簡単にいえば自己責任原則の徹底だ。
借金の穴埋めなので社会保障はよくならない。さらに高齢化が進展するので、社会保障の負担増と給付減(サービスの削減)が実行される。国民にとっては、消費税増税と社会保障の負担増がのしかかってくる。
これを緩和する対策は、低所得者対策としてのお金のばらまき(一人当たり15000円程度)と住宅取得に対する30万円の給付と住宅取得減税の拡充だ(合計で7000億円程度)。明らかなのは、焼け石に水だということだ。しかもこの焼け石に水は、すぐに終わる。石は焼け続けるのに(再来年には消費税10%)、水はところどころ、しかも少ししかかからない。

消費税増税を行えば、景気は落ち込むので、6兆円(このうち7000億円程度がさっきの国民向け対策)の借金をして景気対策を行う。
もし、増税しないで景気対策を行ったら社会保障の借金5兆円と景気対策6兆円で11兆円の借金をつくることになる。国は、これはできないと考えた。社会保障は国民が使うものだから、国民に消費税増税を押しつけて責任を取ってもらうということだろう。
一方、企業には、復興増税を1年前倒しで廃止し(これだけで1兆8000億円の減税)、さらに法人税減税(これはまだ計算の外)をしようとしている。

ここまで書けば結論は見えた。簡単だ。
国民には、消費税増税と社会保障の負担増という2重の押しつけ。
企業には、景気対策と二つの減税という3重の恩恵。
これが、今回の安倍総理の決断だった。

消費税という税金は、一体誰が納めているのか。
消費税は、企業の力によって大きく左右される税金だというところに特徴がある。
日本の巨大企業は膨大な下請け業者を抱えている。巨大企業対下請けの関係は、対等平等ではない。ご存知のように著しい単価の切り下げがある。小さな部品納品業者は、ものすごい単価切り下げの中にある。消費税の転嫁もままならない状態に置かれている。大企業は、自分の商品を物流のルートに乗せるときに消費税を100%転嫁している。転嫁できるかどうかも企業対企業の力関係による。
その上、輸出企業は消費税分が国から返ってくる仕組みがある。例えばアメリカには消費税がないので、商品を生産する過程で転嫁されてきた消費税を完成した商品に転嫁できなくなる。国は一定の規模の輸出企業には、この転嫁できない消費税を返している。結局、大企業は実質は消費税を納めていない。

実際に消費税を納めているのは、商品を販売している小売業者であり、小売業者に消費税を払っているのは消費者だということになる。消費税は、最終の商品販売という段階で実現する仕組みになっている。
ただし、末端の販売業者にはリスクがつきまとう。
なぜつきまとうのか。答えは簡単。納税業者である末端の小売業者は、消費税を回収している税務署から逃れられないからだ。消費税を払うのかどうかは、実は、小売業者と税務署のやりとりによって実現している。それでも取りこぼしが多いのは、末端の小売業者が経営破綻するからだ。お金のないものからは取りようがない。
小売業者は、商品を仕入れた段階で消費税を支払っている。中小の末端業者は力が弱い。巨大スーパーなどは、消費税の納税業者になっているが、こちらは、農家との契約などによって、仕入れのあり方を大きく変えてきた。末端の小売業者でありながら、大手スーパーは、生産・加工にまで巨大な力を持っているケースが広く存在する。このような企業になると、仕入れ業者の単価をものすごく買いたたく場合が多い。
小売業者は、赤字経営になっても、販売した金額に比例して消費税を納めなければならない。消費税は、消費者からもらった預かり金だから、販売するたびに消費税を預かっていることになる。税率が上がれば上がるほど、非課税業者の上限が下がってくるので、納税業者である中小の小売業者は厳しくなる。

消費税を価格に転嫁できるかどうかは、経済力に左右される。そういう意味では、日本の消費税は、弱肉強食の力関係が貫徹される野蛮な税金だと言わなければならない。

安倍さんの顔を見ると腹が立ってくる。この人は、次第に現実を見なくなっている。言葉が何だか宙に浮いている。
串田孫一さんは、腹が立ったらテレビをスリッパで叩いていた。薄型テレビは液晶であり、わが家な場合は、画面にガラスがはめ込まれていないので、スリッパで叩いたら画面が壊れる。
仕方がないので、腹の立つ思いを、指先に込めて、キーボードを叩いている。

今日は30度を超えたらしい。暑い。国会が開かれていない今の状態は、走り出していない車の空ぶかしのような状態だ。前に進んでいないのにやたらめったらエンジンが熱い。日本という車のエンジンは壊れそうだ。


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Posted by 東芝 弘明