かつらぎ町の「健康寿命」を考える

出来事

朝、裏の庭に水をまいた。シャワー型の水が地面に落ちる。乾いた土に水がしみ込んでいくのがいい。
雨が少ない。台風がやってきたあと、天気がよくなってから雨が降っていない。
台風の後、気温が一時下がっていたのに、ここ数日、じりじり気温が上がり始めている。10月だというのにこの2日、気温は30度を超えたかも知れない。
裏の畑に植わっている野菜は、ピーマンとシシトウだけになった。キュウリとミニトマト、ミョウガはおしまいになった。
畑の半分以上は、ラベンダーが占領している。はじめは小さいエリアだったのに、次第にラベンダーが繁殖してきた。
西の一番端っこ、ブロック塀の近くには鉢から植え替えたアジサイがある。鉢で育てているときは、大きな葉っぱで青々していたのに、植え替えると葉っぱが小さくかなって葉に茶色がまじり、辛うじて生きているような状態になってしまった。土が悪かったのかも知れない。
「アジサイにはたっぷり水をやってよ」
水をまいていると妻の言葉が浮かんできた。

午後、事務所の自席でMacを開き、議会広報の記事を作成した。2ページと3ページの見開きを担当してる。ここに掲載されるのは、9月会議の一番大きな議題だった隣保館の廃止と、廃止にともなう公の施設への移行についての記事と町長が日本一を目指すと宣言した「健康寿命」についての記事だ。
廃止される隣保館は6館あった。この内笠田東町民会館が笠田東児童館に、佐野住民会館が笠田公民館佐野分館になり、他の4館は地域交流センターになった。隣保館廃止が9月30日、新しい施設のスタートが10月1日だった。朝の間に笠田東児童館と佐野分館の写真を撮りに行ってきた。

健康寿命については、改めてネットで検索し、まずはウキペディアを見た。健康寿命を提唱したのはWHO(世界保健機構)だったことが分かった。2000年のことだ。WHOは、「平均寿命から介護(自立した生活ができない)を引いた数が健康寿命になる」としているらしい。この提唱を受けて日本でも健康寿命についての取り組みが始まった。
ウキペディアを離れて、厚生労働省のページに飛んだ。平成24年度の考え方がpdfファイルがあった。
現在、厚生労働省は、WHOが提唱した考え方をさらに発展させて、健康寿命を把握するように変わってきている。厚生労働省は、健康寿命を「日常生活に制限のない期間の平均」、「自分が健康であると自覚している期間の平均」、「日常生活動作が自立している期間の平均」という3つの指標から健康寿命を算出し、各市町村でも算出できるようにQ&Aを作成するとともに、計算シートまで作成している。

専門的な統計を活用したものなので、詳しくは分からないが、介護の自立判定という考え方から出発した健康寿命は、より精度の高いものに変わりつつある。

かつらぎ町は、健康寿命の把握を介護の自立判定に依拠して算出している。これに対し、9月26日、本会議場で次のような質疑を行った。

問 町長があいさつで述べた男性76・68歳、女性79・53歳という健康寿命であれば、すでに日本一だと思いますが。
町長 数字は目安です。
やすらぎ対策課長 国の健康寿命の考え方は13万人以上の人口がないと精度が落ちるので、要支援1、2にならず自立判定を受けた人で健康寿命を計算しました。県内5〜6市町村がこれで計算しています。
問 介護の自立判定で健康寿命を計算すると、疾病問題が把握できません。数字は一人歩きするので心配です。介護判定は、本人の身体的な状態と認知症の状態などで判定されます。これでは疾病を把握できないと思いませんか。
町長 数値はそんなに問題ではありません。
問 健康寿命だけを追及するのは、問題だと思います。たとえ障害を持っても生活の質を高めて幸福を実感できるクオリティー・オブ・ライフ(QOL)の考え方と健康寿命の2本立てにすべきではないですか。
町長 QOLについては研究させてください。

物事の変遷は、その物事の歴史なので、その物事の運動の変化を表している。町長が表明した健康寿命は、WHOが提唱した2000年当時の考え方なので、大きな間違いというものではないだろう。しかし、厚生労働省の現在の到達点から言えば、極めて不正確なものだということだ。厚生労働省の健康寿命のQ&Aを見ると、アメリカもヨーロッパも日本と同じような考え方に移行しているのが分かった。

本会議で行った質疑の観点は間違っていなかったと思う。健康寿命を目標にするのであれば、「日常生活に制限のない期間の平均」、「自分が健康であると自覚している期間の平均」、「日常生活動作が自立している期間の平均」という3つの指標で健康寿命を捉える必要がある。

町長は、議会答弁で「数字は目安です」「数値はそんなに問題ではありません」と答え、さらに「疾病を把握できないと思いませんか」という問いには答えなかったが、数値問題は、健康寿命とは何かという考え方の根本に関わる問題なので、改めるべきだと思っている。
実は、質疑では社会的福祉の問題については触れなかった。病気になっても生活の質を保障し幸福を味わえるようにするという考え方が、社会的福祉が充実した状態で、まちづくりにとっては、この考え方に基づいて街をつくっていくことが大事になる。
かつらぎ町の健康寿命の取り組みは、この考え方にちょっとだけ触れているけれど、具体的な取り組みとしては、これが全く欠落している。この観点の欠落こそは、最も大きな問題だろう。質疑では、社会的福祉の充実を追及すべきだということに必ずつながるQOLという考え方を提案した。QOLの考え方が検討されて、町づくりの柱に座れば、おのずから社会的福祉の充実が図られる。この問題を「研究させてください」と答弁した町長の言葉は重要な意味をもつ。
議会での答弁が、真剣に追求されるよう願いたい。

原稿ができたので議会事務局に車を走らせた。明日、また議会広報編集委員会がある。


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出来事Mac

Posted by 東芝 弘明