マイナンバーカードの問題点はどこにあるのか

雑感

マイナンバーカードの不具合について書いた山添拓議員のTwitterを読んでいると、山添議員のコメントの下に政府の言い分をそのまま、反論として紹介しているものがあった。客観的に記事のバランスをとるが如く注意を換気したいというものだった。しかし、政府の言い分を付け足して注意を喚起するという作業には、検証という観点がない。メディアなら政府の言い分も検証の対象となる。富士通のマルチコピー機による誤交付は、マイナンバーのシステムによるエラーではないという言い方、保険証の紐付け間違いは、ヒューマンエラーという言い方を山添たくさんのつぶやきの下にくっつけていたが、それが果たして反論になっているのかということだ。

政府の言い分はこう、野党の言い分はこう、判断はご自由にという記事が増えている。しかもこういう書き方をすると、政府の言い分の応援団が、わんさか政府を擁護して書き込みがなされる。ネット上ではこういう構図が成り立っている。

マイナンバーカードの仕組みは、政府が情報を一元的に管理しないで、番号によって29の情報を紐づけていくというものだ。ヒューマンエラーだといってのけるが、紐付け作業は全て人間による作業になる。こういう仕組みを設計したのは政府であり、データの管理の仕方が全く違う状況下で、膨大な紐付け作業を行なって、全く不具合が起こらないということを政府が考えていたとすれば、それはエラーの発生を想定できなかったということだろう。

その一方で、政府は自治体が保有しているデータをビッグデータとして活用するために様式を統一する作業を、膨大な予算を組んで自治体に実施させている。マイナンバーによる紐付け作業前にこういうことをしておいたら、エラーをもっと少なくできたと思われる。そういう準備をしないで、9000万件もの情報を29分野にいおて紐づけているやり方自体が、全くの準備不足だったと言わざるを得ない。
神々は細部に宿る。細部で起こっているエラーに問題の本質がある。
ヒューマンエラーは起こるべくして発生したもので、マイナンバーカードの制度設計に深く関わる問題であることは間違いない。

健康保険証のデータをマイナンバーで紐付けてマイナンバーを健康保険証として活用する事業で考えてみよう。保険者が持っている被保険者名簿と自治体の住基ネットの情報を照合する作業を進めるとどのような事態に遭遇するのかは、スタート時点で国が把握しておくべき問題だった。消えた年金問題が起こったように、健康保険証の紐付けでも同じことが起こらないかということは、まさに制度設計を進める上でイロハの問題だったのは間違いない。
ヒューマンエラーという言い方には、最初から国が制度に責任を負っていない無責任性を強く感じる。この責任を負わない逃げの言い分を山添拓議員のTwitterに被せるのは、おかしいと言いたい。

Amazonでかなり年間買い物をしている。ぼくは買った商品の誤配達に出会ったことはない。注文して宅配便で届くまでの間の確かなシステムには驚くべきものがある。注文取り消しの仕組み、ポイントの付与、ポイントを含む決済システム、配達場所の変更、クレジット会社との決済確認、どこにどう人間が介在しているかは分からないが、確かなシステムが組まれ、運用され、トラブルも含め対応している制度設計と比べると、マイナンバーカードで発生している不具合は信じ難いレベルの不具合ではないだろうか。日本のデジタル管理の水準の低さ、デジタル技術の低さが今回の混乱の根底には横たわっているのではないだろうか。

地方自治体が発行の責任を背負わされているのに、一体どういうことが起こっているのか、どのようなサービスが実現しているのかということさえ、自治体は全部把握できていない。まずは、マイナンバーカードでどのようなサービスが実現しているのかを、自治体は説明できるようになってほしい。
自治体は、カード管理の責任を背負わされている。住所変更したのに手続きをしないとカードは失効する。国が発行しているカードなのに、発行責任の一端が地方自治体にあるのは不思議でもある。
クレジットカードは、当然発行会社が管理に責任を負っている。トラブルが発生したらカードの裏に書いてある連絡先に電話を入れれば、問題は解決する。マイナンバーカードは、総責任者であるはずのデジタル庁が、トラブルに対して責任を負わなくてもいい仕組みになっている。カードについて問い合わせをすると、国の機関の中でたらい回しされたというニュースもあった。
マイナンバーカードに書かれているのは拾得したときの連絡先だけ。トラブルに対し総合的な責任を負う連絡先は書かれていない。
「このカードを拾得された方は、お手数ですが、下記連絡先までご連絡ください。《連絡先》マイナンバー総合フリーダイヤル 0120−95-0178(24時間受付)」

クレジットカードのように発行元の国が、すべてのトラブルに対し一元的に管理する方向に舵を切らないとトラブルは解消しないと考える。しかしこの方向を実現するためには、全体のシステムを一から考え直す必要がある。データの一元管理なしに国はデータ管理に責任を負えるのか。ことは簡単ではない。この課題と便利なカードに向けての一元化は、容易に統一できない。母子手帳や健康保険証、免許証などの情報を一元管理したときに、紛失すると生活にかなりの困難が生じる。再発行までの期間短縮も実現しないと、生活を維持できなくなる。

政府は総点検するという。かなりの期間をかけて点検しなけてば問題点が分からないシステムって何なんだろう。これは作った側が本質を理解できていないという点で、フランケンシュタインみたいなものだ。マイナンバーカードは、制度設計が根本的に間違っているのではないだろうか。


にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 和歌山県情報へにほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へにほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへブログランキング・にほんブログ村へ

雑感

Posted by 東芝 弘明