安全保障法案の廃案を求める請願、委員会で不採択

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かつらぎ町の総務産業常任委員会は、橋本伊都民主商工会が請願した安全保障法の廃案を求める請願書を不採択にした(文中、敬称を略している部分があります)。
委員会の委員は、大原清明、東芝弘明、小林総一、藤本憲一、福井強太の各議員。委員長は新堀行雄議員。請願採決の結果、「徹底審議と廃案」を求める意見書を提出しようということに賛成した議員は、東芝弘明と大原清明の2議員、意見書提出に反対したのは、小林総一、藤本憲一、福井強太の3議員だった。

審議の内容はおおむね次のとおり。
東芝弘明と大原清明議員の2人は、請願を採択することを呼びかけ、一致点を見いだすために、「憲法違反という憲法学者から疑義が出され、世論調査でも国民の多数が十分説明されていない、今国会で成立させるべきでないという状況になっているので、今国会では徹底的に審議し、廃案にすることを求めよう」という考え方を示した。
請願は、明確に今回の法案については、戦争法だという考え方を示し、結論として廃案を求めるものだった。2人の議員は、この請願が書いている法案の中身には立ち入らないで、「徹底審議と廃案を求める」という妥協点を打ち出したものだった。

6月4日に国会の憲法審査会で自民、民主、維新が推薦した参考人である3人の憲法学者が、現在の安全保障法案については、「違憲」だと指摘した。この指摘は非常に大きなインパクトを与えた。
委員会では、こういう状況を踏まえて、総務課長に出席をしてもらい、憲法に違反する法律をなぜ国会に提出することができないのか、という説明をしていただき、この憲法を守るべき人々が誰なのかを説明してもらった。この中で公務員は憲法に対し、遵守することを宣誓して公務員になっていることも語っていただいた。新人議員の中には、元県職員と元かつらぎ町役場職員もいる。これらの方々は、職員時代、日本国憲法に対し、遵守することを宣誓していたことになる。

この説明の上に立って、議論を行い、議論の中で東芝が3人の憲法学者の見解を、新聞記事を読み上げる形で紹介した。
これに対し、小林総一議員が、自身の作成したメモに基づいて「1) 我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、2) これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと、3) 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」を紹介し、「内閣法制局が違憲でないと言っているので違憲ではない」と発言した。
東芝は、「小林議員が今紹介した3要件が、集団的自衛権を行使できるという根拠になっているが、この新3要件は、従来の政府の見解、つまり、憲法9条1項は、侵略に対して自衛のための反撃まで禁止していない。しかし、密接な関係にある国が攻撃を受けたからと言って、日本が攻撃を受けていないのに、海外でその国といっしょに反撃することは憲法上許されない、というものと全くリンクしていない。整合性が全くないので憲法学者から違憲だという話が出てくる」と主張した。

この発言に対し、委員長から意見を促された小林議員は、「私は違憲だと思いません」という態度を再度表明した。
大原清明議員は、「憲法学者3人がこぞって違憲だという指摘をしているんだから、この意見を踏まえて考えるべき。世論調査を見ても国民は慎重に審議すべきだと言っている。請願はあるけれど、趣旨を少し変えて意見書を出したらどうか」と発言した。東芝は、この発言の趣旨に賛意を表明した。

藤本憲一議員は、東芝議員に聞きたいことがある、と切りだして、「今の法案が通ったら戦争が今にも起こるかのように言っているけれど、戦争は起こらないのではないか」と発言した。
東芝は、「PKO活動や多国籍軍による平和維持活動は、今まで土木工事などを行ってきた。治安活動や駆けつけ警護は憲法違反だという考え方だったからだ。しかし、今回の法案には、治安活動や駆けつけ警護ができることになっている。ドイツは、こういう活動に参加して50数人の戦死者をだした。自衛隊はすでにPKO活動として南スーダンに行っている。まずPKO活動で戦死者が出るのではないかと言われている」と発言しました。
藤本憲一議員は、「この法律が通らなかったら、じゃあどうするんですか。何か考えがあるんですか」とさらに尋ねた。
東芝は、「現行の法律で自衛隊は31回も海外に派遣されている。後方支援にも3回、一番多いのは、災害救助の12回。法律を作らなくても、十分自衛隊は国際協力をしているではないか。ただし、ぼくの考えとしては、自衛隊による軍事的な国際協力はしなくてもいいと思っている。9条を生かした平和的な国際貢献をすればいいと思っている」と答えた。

福井強太議員は、「ぼくは法案の主旨に賛成です。十分な説明がなされていないというのであれば、政府がもっときちんと説明すればいいのではないか」と発言し、さらに「意見書を上げると言うことだけれど、廃案にせよという意見書を上げるのであれば、ぼくは反対です」と主張した。
これに対し、東芝は、「国会で法案が廃案になる事例はたくさんある。地方議会と同じように国会にも会期があり、これは、国対委員長会議で決まる。たくさんの法案があるなかで、何を優先的に審議するかということで、多くの法案が審議未了廃案になっている。そもそも、安全保障法案は、もっと時間をかけてきた。それを夏までに審議し可決したいというのは、乱暴だという意見が最初からあった。国民が徹底審議を求めているのだから、廃案を求めてもいいのではないか」と発言した。
福井強太議員は、「政府がもっと国民に分かりやすく説明するようにできないんですか」と問うので、東芝は、「法案の審議に入っている。政府の法律についての趣旨説明はすでに終わっているので、あとは審議を通じて明らかにするという段階に入っている」と説明した。

国民の世論の動向を重視すべきではないか、と読売新聞の世論調査を紹介した東芝に対し、小林総一議員は、「国民の意見と言っても、果たしてどこまで内容を理解しているのか」という主旨の発言をおこない、「国民の動向に左右されるような政治ではダメではないか」という趣旨の発言をした。東芝は、日本国憲法の前文「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」を読み上げて、「国民の動向によって右往左往したらいいんですよ。それが国民主権でしょ」と説明した。

戦後の歴史の中で法案審議の最中に自民党推薦の憲法学者からも法案は違憲だという指摘が出され、しかも参考人の3人の憲法学者全員が違憲だというのは、前代未聞の出来事だった。多数の憲法学者、多数の弁護士が、憲法違反の法律だという指摘を行っている。この問題は、内容に立ち入る前の段階、法律の是非が根底から問われるような事態だと思われる。今回は、あえて法案の内容に深く立ち入らないで、この指摘を重視して一致点を探るような審議に心がけた。
しかし、こちらの趣旨は伝わらなかった。
問答無用のような後味の悪さが残る審議だった。

国民主権の日本で、しかも国権の発動たる戦争を禁止しているこの日本で、地方議員が国民主権を貫いて発言するかどうかという問題は、極めて重要な問題になっている。戦前の日本には国民主権がなかった。しかし、戦後の日本は国民主権が存在する。戦争を行うのか、それとも戦争を止めるのか。それを決めるのは国民以外にはありえない。政府が戦争への暴走に突き進んでいるときに、次第に国民世論が、戦争法案の危険性を見抜こうとしているときに、この動きにストップをかけるのが住民の代表である議員の責務だと思う。住民の代表である議員は、住民多数の意思を議会に反映すべきではないか。こういう認識があるので、あえて今回は、議員名を明らかにした。戦争法案に対し地方議員がどういう態度を取ったのか、というのは記録されるべきだと考える。


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Posted by 東芝 弘明