お彼岸の中

出来事

昨日の夜、妹からLINEに連絡が入り、明日、墓掃除に行くと言うので、一緒に墓掃除に行くことにした。原稿書きの仕事が昨日終了したので、急遽、この判断が成り立った。
「明日は雨やで」
ぼくも行くとLINEに書くと、妹から電話があった。天気は曇り時々雨という感じなのだという。
朝起きるとまだ雨は降っていなかったが、7時をすぎる頃にはかなり雨が降っていた。
雨やなあ、と思いつつ妹と兄貴を笠田駅に迎えに行った。2人を車に乗せ、自宅に戻って、コーヒーを淹れてあげて8時45分頃に家を出た。色花は途中で買おうと思いつつ車を矢立まで走らせた。9時を回っていなかったので花を売っているお店が目につかなかった。
「もう一度、こんにゃくの里まで戻ろう」
ぼくはそう提案した。「そんなに時間はかからんで。10分と少しぐらいで着くよ」
そう言って、もう一度星川まで車を走らせた。到着は9時13分頃だった。同級生の経営する物産販売所は店を開いていた。駐車場に車を入れると、ちょうどお店にお花が並べ始められた。いいタイミングだった。

妹が、桜のつぼみのついた木を買いたいというので、お墓に供える花に桜?と思いつつ「いいよ」と言った。妹は買えたことが嬉しかったようだった。

道路沿いの駐車場に車を停めると、そぼ降る雨に迎えられた。雨が少し降っている中を3人は石畳の奥の院につながる参道を横切って山の中に入っていった。数百メートル山の中に入ると、山の中腹に東芝家と父母の墓がある。杉の木からしたたり落ちるしずくは、杉の木の葉の養分を含んでいるので、墓石に当たると次第に墓は苔むしてくる。大きな大名の墓の石の頭には緑色の苔が積もっている。空気まで緑に染まるような景色の中を山の中に入って行く。杉の木に囲まれた山の中にある墓にたどり着いて、掃除の荷物を下ろし、兄貴は水を汲みに行った。
空のバケツを持って兄貴が戻ってきて、水がないという。ほとんど雨が降らない中、山の中を流れる細い水路の水がほとんど涸れ、水汲み場にも水が溜まっていないようだ。
仕方がないので、ぼくは細い水路を見ながら下まで降りて行き、石畳の参道まで戻ってみた。いつも掃除が終わってから手を洗う所に水が流れていた。いつもの水量よりかなり少ない。バケツで水をすくうと水が汚れてしまったので、底の泥が下に沈むのを待って、うわ水をすくうことにした。

ここまで下ってきては水をくんで墓まで戻るのは大変だった。2回目は、小さな柄杓を持って水路に水が溜まってることろがないか確認しながら歩いてみた。長靴を履いていたのでぬかるみは平気だった。地面に生えた苔とぬかるみを踏みしめながら水路に近づく。水路に流れている水は、ほんの少し地面をなめる程度。水が石を濡らして所々光っていた。それでも水路の中には上から流れ落ちてきた水をほんの少し溜めている場所があった。そこにしゃがみ込んで柄杓で1杯、また1杯と水をすくってバケツに入れた。20数回これを繰り返すと、8割ぐらいバケツに水が溜まった。ちりも積もれば山となる。よく見ると蚊が飛んでいたが、冬の蚊は刺しに来なかった。

ぼくの仕事の中心は水汲みになった。何度も水を汲みに行き、坂道を降りたり登ったりした。
高野山の従兄は、柴犬を飼っていたことがあり、名前ははさくらといった。従兄のがんを発見したのは犬のさくらだった。匂いを嗅いで鳴いて異常を知らせてくれたので、従兄は命を救われた。墓地の南側にさくらのお墓もある。妹はそこの花筒に桜の花を入れた。
「やっぱりいい感じやわ」
その声に促されてさくらの墓を見た。淡い桃色の桜の花が少し開いているのが見えた。枝がすっと伸びていた。
墓跡に向かって3人で交互に手を合わせてから、山を下り駐車場に出ると雨がかなり降っていた。杉の木に遮られて墓にはそんなに雨が落ちてこなかったのだと気がついた。杉の木の葉に溜まった水が滴となって落ちて、緑の世界を広げる。音のない世界でそれが繰り返される。

笠田まで降りてくると12時30分頃になっていた。


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出来事

Posted by 東芝 弘明