ドア・to・ドアの乗合タクシーに接近
条例関係の事前ヒアリングはできていたが、予算関係のヒアリングはできていなかったので、予算の質疑は不十分なものに終わった。一般質問の準備に手が取られたのが原因だったが、一般質問は議会が始まる前に終わっていればいいのではないかという指摘を受けて、そういう努力をしたいと考えはじめた。しかし、今回はそのようにできなかったので制約が生じた。事前のヒアリングには時間がかかる。予算のヒアリングの前で時間切れとなった。
ヒアリングをしている議員はかつらぎ町議会に何人いるだろう。「議案については全員深く準備していますよ」という形であってほしい。
現実で言えば、質疑をしない議員がいる。質疑をしない議員は、議案に対してどのような認識なのかは分からない。
ぼくは、〝質疑のために準備をしないと議案への理解は進まない〟と思っている。自分の体験から言って、ここに真理があると思う。準備をしない議員にとって議会の議案は「ちんぷんかんぷん」に近いのではないだろうか。質疑の準備をしない人は、住民に議案の内容を説明できないと思われる。
行政の本質に近づきたいのであれば、議案の事前調査を徹底的に行う必要がある。ぼくはそう考える。議会改革は、議員の議会準備の上にはじめて成り立つ。議案と格闘する議員が増えることを望みたい。
花園地域に限って、花園地域にある社会福祉協議会が、道路運送法第78条の規定に基づいて、自宅まで迎えに行き、指定した目的地まで送る会員制(事前登録制)の有償運送をはじめることとなった。車はワゴンR。料金は1回300円。目的地に指定されているのは、支所や医療機関、社会福祉協議会など。目的地を指定したのは、運行体制の弱さと関連がある。関係する道路運送法は次のとおり。
(有償運送)
第七十八条 自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
一 災害のため緊急を要するとき。
二 市町村、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(以下「自家用有償旅客運送」という。)を行うとき。
三 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき。
(登録)
第七十九条 自家用有償旅客運送を行おうとする者は、国土交通大臣の行う登録を受けなければならない。
適用したのは第78条の第2項だ。この規定は、公共交通のないエリアでないと運行できないなどという制限も書かれていないし、会員制という形をとるべきだとも書かれていない。市町村が、必要性を判断すれば、市町村の事業として「自家用有償運送」をはじめることができる。特定非営利活動法人であれば事業実施の主体者にもなれる。この条文の具体化によって、ドア・to・ドアの乗合タクシー的なものを実施することもできる。もちろん、民間の公共交通の営業を侵すようになると、民業圧迫のようなことも生じるが、棲み分けを行えば、第78条にもとづく有償運送をかつらぎ町の他の地域でも運行することはできるだろう。
ぼくはこの事業の実施を重視して、質疑をおこなった。この事業は、町がかたくなに拒んでいた乗合タクシー的なものにつながる重要な一歩になる事業だった。
「どうして自宅から目的地まで自由に行くことのできる乗合タクシー的なものにしないのか」ということを迫りたかった。目的地を限定する合理的な理由はない。
ただし議員の質疑は3回までという制限がある。この制限は、質疑の大きな足かせになっている。この前の議員研修にやってきた講師の先生曰く、
〝この3回という制限は、戦後地方自治体の議員にいかにして質疑をさせないかという観点で作られたもの。問題の本質に迫るためには、5回質疑しないと本質にはたどり着けない〟
ということらしい。5回まで質疑の回数を増やすというのも、1つの改革案だろう。
現状の中で質疑は3回までという議員の回数制限を乗りこえるためには、議員が集団で検討し、連携しながら質疑を積み重ねる必要がある。質疑を行う前の議員間協議の意味はここにある。ただ、本気で議員間協議を行うためには、議員による事前の自主的な準備にもとづく議員間協議を実現する必要がある。こうしないと効率が悪すぎる。わが町の議会がここまでたどり着くには、道はまだ遠い。
今回この議案に対する質疑は、ぼくだけだった。議員が繰り返し求めていたドア・to・ドアの乗合タクシーに迫ることのできる議案だったのに。これは本当に残念だった。