御坊市の新庁舎を視察した

出来事

10時30分の少し前に全員が集まったので、役場の玄関前に集まって御坊市の新庁舎視察にバスで向かった。
御坊市は、起債が適用できる期日が迫っていたので、5年間という短い期間で庁舎を建設した自治体だった。御坊市が新庁舎を建てて使用を全面的にスタートしたのは今年の1月だった。できたてほやほやの市役所だった(写真は御坊市の本会議場)。
市役所や役場の建物は、建設の基本コンセプトをよほどしっかりして建てないと、使い始めた以後、課題が吹き出してくる側面がある。どうやって、住民の意見を汲み取りつつ、基本的な考え方を建物に反映させる努力が必要になる。その点でやはり5年間という建設期間は短かったようだ。質問すると、市内全域から意見を聞くということは十分できなかったという話が出てきた。

かつらぎ町も今後2年間で要求水準書を作成することになる。この短い期間で住民の思いを豊かに取り込むことができるのか、心配になってきた。あまりにも時間がなさ過ぎる。話を聞いていると、長期総合計画の策定の期間が短すぎたことが頭に浮かんできた。策定まで1年間というスケジュールでは、日程がタイトになりすぎて十分な意見交換ができなかった。3月会議で仕上げたいという当局との間で、日程調整に課題が出てきて、結局最終的には不十分な形になってしまった。長期総合計画では、議員の中から出てきた論点に対しても、議員間協議を深め、さらに踏み込んで要求をまとめるという点でも時間がなさ過ぎた。
庁舎建設でも同じことが繰り返される懸念がある。最初にスケジュールありきで進めるべきではないと思う。

御坊市の庁舎は5階建てだったが、職員更衣室は全部1階にあった。作業服などに着替える場合は、全部一番下の階に降りる必要があるようだ。私物を執務室に持って行かないようにということも言われているのだという。南海トラフ地震の際に庁舎に到達する津波は3.5メートルだと想定されていた。津波というのは何度も押し寄せてくる。木造家屋等が津波で壊れると大量の瓦礫が波と一緒に押し寄せてくるので、御坊市の新庁舎の1階の部分は甚大なダメージを受けるだろう。もちろん、免震構造なので建物そのものは大丈夫だと思われるが、海抜ゼロメートルに近い現地に建て替えたので、新庁舎は、南海トラフ地震の際の防災拠点にはなっていなかった。それは懸命な判断だと思われる。御坊市は、災害対策本部を高台の学校に設定していると説明した。
緊急避難場所として2階以上は役に立つと思われるが、街が津波によって破壊された跡は、復旧にかなりの時間が必要だろうし、庁舎が本来の役割を取り戻すのにもかなりの時間がかかると思われる。

御坊市は、災害時の業務継続計画をしっかり策定しており、その考え方が具体的に庁舎に細かく反映されていた。これは見事だったと思う。バックアップの自家発電は、地下に重油のタンクを置いてポンプアップで屋上に上げるようになっていたが、防水対策を講じているので大丈夫だと説明した。必要な電源の確保という考え方で、自家発電で3日間は電源が確保できるようになっていた。地震対策の免震構造は建物が65㎝横に動いても力の逃すことのできる仕組みを組み込んでいた。これは見事だった。新しい建物は、2階に住民が相談する課を集めており、低いカウンターで相談できるようになっていた。

以下は見学して感じた課題を書いておきたい。課題だけ書く。
1階が会議室や更衣室、倉庫として使われているので、庁舎への案内が必要な状況になっていて、職員が2人、総合窓口で仕事をしていた。新庁舎には、市民が訪れてくつろいで話のできるスペースがほとんど確保されていなかった。小さい乳幼児を連れて庁舎に来ても、子どもを遊ばせることのできる場所が確保されていなかった。
自動販売機は2階の1か所にしかなく、各課の相談室も課の横にあるケースと離れているケースがあった。2階以上の階に作られた会議室が少なかったので会議がしにくいなと感じた。1階の会議室は、執務の現場と離れているので使い勝手が悪そうだった。
和泉市が市民の声を柔軟に受け入れて、子どもの遊べる場所や市民同士が語り合える場所、飲み物を飲める場所などが用意されていて、使いやすい感じがしたが、御坊市の場合はそういう配慮がされていない感じだった。これは残念だった。
2階以上の場所に会議室が少なかったので、「議会の委員会室も会議に使われていますか」と問うと「ときどきあります」という返事だった。書類を保管する場所がなかなか確保できず、書類の管理に課題があるという話だった。この悩みは深そうだった。

どのような建物を建てるのかという課題は、専門家と素人のコラボレーションによって実現する。いかにして建物の素人が感じる使い勝手の良さを専門家が実現するのか。ここに建物を建てるときのテーマがある。ここで十分な意見交換がなされないと、建てた後で根本的な問題が浮上する。
かつらぎ町の総合文化会館の最大の欠陥は、大ホールの舞台の奥行きが狭すぎるということだ。設計業者が初めて文化ホールを建てた結果、こういう問題が生じてしまった。舞台道具を搬入する搬入口が高いので、道具を舞台に入れるのに苦労している。こういう欠陥はいかんともしがたい。回収するとなると莫大な費用が発生する。

賑わいを作ることが目的で、庁舎建設は手段。この考え方で本当に大丈夫なのか。庁舎建設も賑わい作りも2つの目的だという方が安心する。手段である建物をよりよいものに。ぼくはそう考えている。


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Posted by 東芝 弘明