笠田中学校の卒業式で

雑感

議員を29年近く務めさせていただくと卒業式への出席も議員の年数と同じくらいになってくる。数年前から卒業式に出席させていただけるありがたさを噛みしめるようになった。
中学校の卒業式は、先生たちとの別れだけでなく、友だちとの別れが重なるようになった。鳥が大地を蹴って空に飛び立つように卒業式には、決然と離れて行く潔さがある。3月初めの空気の冷たい晴れた日は、卒業式と重なる清々しさを感じさせてくれる。空気の冷たさが新鮮さを運んでくれるような感じだ。
中学校の時代を終えるとき、この空気の中に今までの思い出が入り混じる。別れと新しい出発への思いが交差する日が卒業式でもある。
教職員は、入学式と卒業式があるからこそ、仕事に打ち込めるのかも知れない。仕事の苦労が洗われて原点に戻れる日が卒業式と入学式だろうか。

3月8日は、昨日までの雨が上がって晴れた日になった。昨日まで続いていた雨によって空気は冷たかったが、卒業式日和のような1日だった。あいさつの中にオリンピック選手の話が出なかったのはよかった。オリンピック選手の話は、語り手が神様のようになって、選手の努力を語るという感じが出る。それは選手の努力であって、語り手の努力ではないでしょうと思ってしまう。
送る言葉は、我が身をふり返って語るもの、自分の体と精神から出てくる言葉で語るものであってほしい。ぼくの同級生である校長先生は、自分の等身大の話をしていた。そう、こういう話が人の心に残るのだと思う。
オリンピックのように最先端で努力している人の話をする場合は、自分に照らした話にしないと神様視点が入り込んでくる。語り手はこのことを考えるべきだろう。

卒業生は、卒業式で歌う歌として、テレビドラマ『白線流し』の主題歌になったスピッツの『空を飛べるはず』を選んだ。この曲は1994年にリリースされ、1996年のテレビドラマの主題歌として採用されてヒットした曲だった。曲が世の中に出てから25年ほど時間が経っている。どうして卒業生がこの曲を選んだのかが、少し気になった。
歌詞は単純明快というものではないし、明るい未来を歌ったものでもない。『白線流し』というテレビドラマによって、曲に新しい意味が重なって歌に違うイメージを重ねることができたのかも知れない。
『空を飛べるはず』の比喩を深く折りたたんだ歌の歌詞を読みながら卒業生の歌を聞いていた。透明感のある声が胸に染み込んできた。

卒業式には涙が似合う。歌を聞いていると目頭が熱くなる。2時間。毎年いい体験をさせていただいている。
卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
保護者のみなさん、子育ての思い出と幸せを味わえる日です。おめでとうございました。


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雑感

Posted by 東芝 弘明