二元代表制の重要性

雑感,政治

日本の地方自治体の首長の権限は、ほとんど例がないほど絶大なものになっている。予算提出権、条例や契約など(事件議決案)の提出権、職員への人事権、議会同意の人事案の提出権、独立している教育委員会に対する財政支出権など。地方自治体にとって首長は、独裁的な権限をもった存在となっている。
一人の人間に絶大な権限を与えているこの仕組みに対して、どのようなチェックの仕組みがあるというのだろう。首長が選挙で選ばれるように議員も選挙で選ばれるが、地方自治体の場合、絶大な権限をもった首長に対し、住民の代表として対峙しているのは、住民と議会以外ない。この中で社会の制度的仕組みとして首長に対し、たえず意見を言い、改善を求め、修正を要求する立場にあるのは議会しかない。首長も住民の代表なら、議員も住民の代表だ。議員が首長に対して是々非々で対峙しなければ、絶大な権限をもった首長の仕事をチェックできない。

首長と議員の関係を議員はどれだけ自覚しているだろうか。国会と同じように与党と野党があるとして、首長の出してくる議案に対して、おかしな傾向や許しがたい不正がはらまれていても、「ご無理ごもっとも」、「世の中には不合理なこともあるよね」とかなんとか言って全部賛成していたら、首長は完全な独裁者になってしまう。絶大な権限をもつ首長の与党が「何でも賛成」という態度をとったら、地方自治体にたいするチェックが全く働かなくなる。自治体の首長は、当然議会を意識し、「この議会さえ自分の自由にできたら自分の発案を全部実行できる」と考えることがあるのではないだろうか。

二元代表制というのは、選挙で選ばれる首長と議員が向き合っている。首長と議員は対等平等であり、議会は住民の代表として首長をチェックするというものだが、議員は議会全体にならないと首長に向き合う力を持てない。議会は予算案については修正権をもっているだけで、町の予算提出権を侵してはならないというように制限がかけられているので、予算を伴う条例案を提出して直ちに施行するということもできない。また、より根本的には、首長には専門的に仕事を行っている職員という行政の機関があるが、議員が行政に対抗して議案を出そうと思っても、議会事務局の職員は少数であり長と対等に議案を出せる力が与えられていない。

二元代表制というのは、国会の議院内閣制とは根本的に違う。政党に分かれ与党を形成することのできる多数が首班指名を行えば、そのまま内閣総理大臣になれる。議員の多数によって内閣を構成できるというのが議院内閣制だ。このような考え方を地方自治体に持ち込んで、自分たちは首長の与党だという考え方になってしまったら、議会によるチェック機能は果たせなくなる。議員一人一人が住民の代表として、自らの頭で考え、賛成と反対を決める。同時に議員間の協議を深めて一致点で協力し合い、首長と向き合わないと住民本位の行政運営を実現できない。

こういう状況の下で日本の地方自治体は成り立っている。
地方自治体のあり方を変えるためには、自治体の首長を住民本位の立場に立つ人物に変える必要がある。大阪の維新の会が自治体の政治を変えるために首長選挙を重視し、首長を取ることによって、実行できる政治を実現し、改革の旗手として議員を増やすという方針をもっているのは、地方自治体の仕組みをよく知っている者の方針だと思う。

日本共産党も住民とともに自治体の首長をとる運動をもっと行うべきだろう。住民本位の立場に立った首長を実現することの意義は極めて大きい。

こういう基本認識の上で日本共産党の議員のあり方を考えてみたい。
日本共産党は、住民の代表である議員を増やし自治体を民主的に変えることをめざしているが、日本共産党の議員だけで自治体を住民本位に変えるのはなかなか難しい。しかし、多くの議員は、自主的によく勉強し、具体的問題を具体的に改善するために奮闘している。その中で日本共産党の議員が1人誕生するだけで見違えるように自治体のあり方を変えた例がたくさんある。それは、日本共産党の議員がいない地方自治体のなれ合いが極端にひどいことにも原因がある。住民に対して議会をガラスばりにして、なれ合いをやめさせるところから改革は始まる。

しかし、もっと住民本位の地方自治体を作るためには、議会全体の改革が必要になる。カギを握っているのは二元代表制に対する理解だろう。議員とは一体何なのか。地方自治体で議院内閣制のような与党、野党という存在を作るべきではない。議員は住民の代表として是々非々で行政をチェックし、議員は一致点で力を合わせ、住民本位の自治体をつくる責任がある。こういう認識を広げる必要がある。日本共産党の議員が、議会の中で他の地方議員に対して議会改革を提案し、二元代表制としての議員の役割と議会の役割を再認識できるよう奮闘し、住民の代表である議員として力を発揮することを求める必要がある。

日本共産党は、住民と結びついて住民の要求実現のために一緒に運動してきた。この運動を日本共産党は、人民的議会主義と呼んできた。主権者である住民と議会活動の結合。これは実践的な住民自治という考え方だろう。住民こそ地方自治の主人公であり、主権をもった住民(この住民は実は国民よりも幅広い。住民主権の中には在住外国人も含まれるし滞在者も含まれる)の運動が議員と結びついて行われ、住民自治の力で自治体の政策を充実させたり、新しいことを実現したり、値上げをストップさせたり、自治体の合併方針を変更させたりしている。

日本共産党の議員と住民による運動をより発展させて、住民と議員全体の運動へとさらに変化させる必要がある。日本共産党の議員は議会改革とともに、住民運動に対しても全議員を対象にした運動へと発展させる必要性を訴えて、少しずつでも住民運動に協力する議員を増やすべきだろう。それこそが、地方自治体を民主的に変える力になる。選挙で選ばれる議員は、住民の代表として住民のために粉骨砕身力を尽くす。これが当たり前の姿になるよう日本共産党は地方で頑張らなければならない。


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Posted by 東芝 弘明