自分一人で孤独に、地道に努力する

雑感

「議会と自治体」の3月号の3本の論文を集中して読んだ。一度読んだだけでは、分かりにくいところがある。日本共産党の議員は、党中央が発行している「議会と自治体」を活用して、議会の準備を進める。中でも当初予算の特集が組まれる3月号は、自分の住んでいる自治体の財政を分析する上で、重要な視点を与えてくれるものになるので、重宝している。
政権党である自民党は、自民党の議員に対し、国の予算や地方財政計画に対する詳細な解説はなさそうだ。結局、こういう資料の有無と、資料に基づく丹念な比較検討と予算を読み解く地道な努力の差が、議員力の差になって表れる。

2月に東京在住の弁護士の方から連絡があり、和歌山市内で会う機会があった。日本共産党に入っている弁護士の方で和歌山出身の弁護士さんだった。
この方は、お会いした席でこのように語った。
「日本共産党の弁護士が、能力が高いとか頭がいいとかいうのはないと思います。私たちが扱う事件の中には、少額困難事案と呼ばれる事件があります。それは、住民が裁判に勝ってもあまりお金を得られないような事件で、弁護士が引き受けても儲けにならないような事件です。しかし、訴えた人にとってはどうしても解決したい問題があるということです。同時に、お金にならないのに裁判をして勝つのも難しいというものです。こういう問題を多くの弁護士は、避ける傾向にあります。ものすごく苦労が必要なのに、時間がものすごくかかるのに、なかなか勝利の展望が見いだせないからです。こういう事件であっても、私たちは引き受けています。ときには、針の穴しか開いていないような所から、事実を掘り起こして、ねばり強く取り組んで、何遍も足を運んで裁判に勝つこともあります。もちろん負けることもあります。日本共産党の弁護士と他の弁護士の違いは、どれだけねばり強く、丹念に、地道に事実を追求するかに尽きるといえます」

なるほどと思った。この話は、ぼくたち議員にも同じことがいえると思った。日本共産党の議員が、飛び抜けて頭がいいとか、優れているとかいうのではない。どれだけていねいに、丹念に、議案や予算を精査し、質疑や質問を組み立てるのかにかかっている。一度読んで理解できる理論書なんていうものは少ない。分からなければ何度も読み返す。分からない議案については説明を聞き、後で自分で理解できるところまで丹念に調べて準備をする。
準備にはかなり膨大な時間がかかる。徹底的に準備し、構造的に物事を捉える。一般的に理論を理解するだけではなくて、予算の流れに即して制度や事業がどう具体化されているのかを調べて、物事を立体的に把握する。こういう準備をしてはじめて、的確な予算質疑ができるようになる。こういう作業は、自分の頭を使って、資料に徹底的に書き込みを行って、はじめてものになる。
「難しいからわかりません」
というレベルに留まって、努力をしない人は、何年議員をしても議案や予算を読めるようにはならない。

議案や予算書は難しい。説明は一行だけ。数字と漢字がズラズラ並んでいる。その無味乾燥に見えるような説明文のウラには、制度がある。難しい事業名である場合は、事業の考え方や内容がある。さらに、その制度を具体化した自治体の現実の姿がある。事業を推進する職員の体制がある。住民との関係もある。
日本語の意味を理解しただけでは、何もわかっていないに等しい。行政は、説明だと言って読み上げるだけに終始することが多い。何年も努力を重ねていると次第にある程度のことは見えてくるが、新しい制度は、毎年法律の改正も含めて生まれてくるので、内容を理解するためには、地道な努力が必要になる。20数年議員をしても、一読して理解できるというものではない。一度読めばほとんど理解できるという議員はどこにもいないと思われる。

そういう難しさがあるのに、準備をしない議員もいる。準備をしないと当然、十分な質疑はできない。能力に差があるのではなくて、準備の有無、準備の広さや深さに違いがある。ぼくたちがやっているような準備をすれば、同じようなことができるはずだが、徹底的な準備をしない傾向が強い。

議員の質が問題になり、質の向上を図る努力が問題になったりする。分からないことを徹底的に聞き、理解を深めようという聞き学問でも、ある程度議員の質は向上するのだけれど、そんなことだけでは議員の質は上がらない。ああでもない、こうでもないと右往左往し、文献と資料の間を渡り歩き、自分でていねいに議案と資料を読み解いていくという、孤独な作業をしないと議員の質は上がらない。勉強は、独習がすべての基本になるが、議員活動における準備も、集団的な討論よりも独習の方が議員の質の向上に確実につながる。一人でていねいに調べるという孤独な作業なしに、議案と予算を読み解くことはできない。


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雑感

Posted by 東芝 弘明