庁舎建設、現在の到達点
帯庄跡地に民間の力で優良住宅を建設
本会議の後、庁舎建設検討調査特別委員会が開かれて、町長の思いを語る時間がもたれた。その中で、今年度の事業として、帯庄(元地酒造りの屋敷があった)の跡地に80戸(40戸×2)の住宅(民間の力を借りた方式、PFIで建てる優良住宅、町が民間に建ててもらい、町が建設費を家賃収入で払っていくもの)を建てることも語られた。この帯庄の跡地は、庁舎建設の候補地の1つだったもので敷地面積は9195.74㎡ある。この話と庁舎建設の関係は後で書きたい。
庁舎は民間の力を借りて建てる
庁舎については、民間の力を借りて現地に建て替えるというものだった。現地の1万799.07㎡の土地には、本庁舎と保健福祉センターが建っている。現地再建設ということになると、今ある建物が邪魔になってしまう。方針としては仮庁舎は建設せずに、今の庁舎を使いながら建て替えることを明言しているので、新たな庁舎を建てるためには、現庁舎と同じほどの面積の土地を確保して、今の本庁舎のある西側に建物を建てないと建設できない。しかも、土地が低いので、今の地面を国道の高さまで上げていく努力も必要なのかも知れない。ただし、西側の用地を新たに購入して建物を建てるという話を町はしていない。買わないと話は合わないのに、決定された「基本構想」には、用地購入をするという計画は入っていない。
元々4つの候補地の1つだったとき、現庁舎については、用地購入は課題として書かれていなかった。この考え方どおりであれば、新たな用地買収はないということだが、実際、2024年度の新年度予算には、役場の前の畑を2000万円で購入する費用が計上されている。現地なら用地買収の必要はないという話は変化している。
庁舎はすべての職員を集約する施設になる
現在、職員は、社会福祉協議会の職員も含め、本庁舎、保健福祉センター、防災センター、総合文化会館、佐野上水道(上下水道課)という5か所に分かれている。これをすべて集約して、ワンストップのサービスを実現するという計画になった。耐震基準をクリアしていないのは本庁舎のみ。保健福祉センター、防災センター、総合文化会館、佐野上水道は耐震基準を満たしている。こういう状況にはあるが、全職員を一か所に集約することが町の方針として決まったということになる。
決め方にも変遷がある。大谷の集荷場が予定候補地になっていたときの審議会では、「移転するのは本庁舎のみ」と町の患部は答弁していた。それが、昨年の3月時点では、どの施設が移転するかはまだ決まっていないということだった。それが最近、すべての施設を集約するという方針に変わった。なぜ変遷したのかという点で、合理的な説明はない。
民間の力の借り方
民間の力の借り方は次のようになる。
計画の内容は民間の会社に提案していただいて、その提案を受けてから町としてどういう施設をつくるのかを考える。今の時点で町が計画を立てると、民間の手をがんじがらめに縛ってしまうことになる。そうなると民間の会社は投資意欲を失う。こういうことがあるので民間の提案を受ける。庁舎の形は民間の提案によって変わってくる。町長が語ったのは、現庁舎の場所にかつらぎ町が発展するような賑わいをつくるためにどうするのかということ。これが最大のテーマなのだという。
町長の言葉で言えば「新庁舎建設にあたっては、単に『庁舎を建設する』という視点ではなく、庁舎建設をまちづくりの手段として捉え、民間資本による敷地内への商業施設の誘致を進め新たな賑わいの創出を目指します。そのため、庁舎と商業施設等の一体的エリア整備に向けて、民間連携に取り組んで参ります」となる。
雲をつかむような難しい話
ぼくは、昨年の3月に一般質問で庁舎建設の問題を取り上げた。この時点から変化したのは大谷集荷場を断念して、現庁舎の場所を建設予定地とし「基本構想」をつくったということだ。この基本構想の基本は、町の計画を具体化しないという観点に貫かれている。町が昨年3月の一般質問の時点で語っていた考え方の基本は変わっていない。つくられた「基本構想」は、建設場所が決まらないと基本構想も立てられないと言っていたのに、建設場所をふまえた部分は、浸水地域なので1階部分をどうするのかという視点だけ、極めて一般的なものだった。結局は、民間の投資意欲が失われないよう、町の計画をざっくりしたものにすべきということに尽きる。新年度予算には、庁舎建設について民間の力を借りるための伴奏型支援委託1982万2000円が計上されている。この委託先と町は力をあわせて、計画の具体化に向かって動き出すことになる。
これから先は民間の提案にもとづいて考えようということなので、雲をつかむような話になる。建設費?————これは民間の提案を待たないと分からない。
帯庄の跡地に庁舎建設を
帯庄の跡地を町が買って令和7年度に住宅を建設する計画を明らかにした。今年度予算は501万円。この構想を打ち出したことによって、妙寺駅の北側に改札口をつくる話が出ているらしい。これは、これで魅力的な話だが、この帯庄跡地を購入できるのであれば、ここに庁舎をPFIで建設することの方が、はるかにいいのではないだろうか。浸水地域からも外れ、地震対策も講じることができる。土地の抜本的なかさ上げも必要ない。駅にも近い。ここに庁舎と賑わいができれば、妙寺の地域の人は、人の集まる拠点ができ、賑わいもできるし駅にも近いのでいいことづくめだ。一番大きな課題は、道路の拡張整備だが、現在の庁舎の用地を拡張して造成を行い、1階部分を浸水対策にあてながら建設するよりも費用は安く上がるのではないだろうか。
二転三転した庁舎建設は、詰めが甘かったところにも原因があった。しかし、詰めが甘いということは、話に柔軟性があるということでもある。現庁舎での建て替えを、今の庁舎を活用しながら行うためには、大規模な新たな用地を必要とする。このように見通しにも甘さがあるので、この「甘さ」を利用して、帯庄跡地に庁舎を建設するという方向に転換する方が、町民の利便性にとっても、地域の発展にとってもいいのではないだろうか。柔軟性というのであれば、こういう柔軟性を発揮してほしい。
庁舎の現地再建設は、住民アンケートを取って決めたものではない。今の時点で課題を示して、現地再建設か帯庄跡地かをアンケートを取って決めてはどうだろうか。帯庄跡地の方が建設費は大きく違うものになるのは、見通せるのではないだろうか。