東日本大震災ボランティア4

日本共産党

11月15日と16日、大船渡市内にある雇用促進住宅に入居している被災した方々を訪問させていただいた。
和歌山から持っていった救援物資の中にお米と富有柿があったので、それを袋に詰めてお配りすること、同時に困ったことや市役所への要望を聞かせていただくことが目的だった。ぼくとコンビになったのは岡田勉紀の川市議だった。お米と富有柿を両手に抱えながら階段を登るのは骨が折れる。
大船渡市に着いてから冷え込んできた。三寒四温の逆で三温四寒(ぼくの造語)で冬に近づいている。
大船渡市では、市が買い取る予定になっている雇用促進住宅と廃止の対象になっている雇用促進住宅があった。しかし、大震災後、これらの住宅は、仮設住宅と同じ扱いで緊急に住宅の提供がおこなわれ、抽選によって早いところでは4月半ばぐらいまでに入居された方がたくさんいた。まだ、多くの人が避難所で生活しているときに引っ越しが実現した人々だった。緊急入居だったのでわずかしか入っていなかった住宅に一度に多くの人々が引っ越しすることになった。全く改修も整備も行われず、住宅を提供した中でさまざまな問題が山積していた。
ぼくたち2人は、15日は山の中腹にある雇用促進住宅におじゃました。報告では、この場所での聞き取り調査を紹介したい。プライバシーの問題があるので、個人が特定できるような書き方は避けながら書くことにする。

■家電6点セット問題
大きな問題の一つは、家電6点セットに関わる問題だった。
家電6点セットとは何か。から見てみよう。
全国から集められた義援金の多くは、日本赤十字に寄せられた。これらの義援金の多くは、被災した各県が配分のための会議を構成して、配分の仕方を決めて何次かに分けて各自治体に配分されている。自治体は、被災者の方々に、決められた配分方法にもとづいて義援金を配布する。現在は第2次まで配布されたようで、近く第3次分が配分される予定だという。日本赤十字は、この義援金以外に仮設住宅の入居者に対し、家電の6点セットを仮設住宅に備え付けるという措置を講じた。この6点セットについては、ウキペディアに以下のような解説がある。

今回、「応急仮設住宅」(公営住宅は対象内、民間社宅は対象外)の被災者を対象に、薄型テレビ(32型)/全自動洗濯機/冷蔵庫(約300ℓ)/炊飯器(5.5合炊き)/電子レンジ/電気ポット(2ℓ)の「家電製品6点セット」(計約20万~25万円相当)が、日本赤十字社から現物支給(寄贈)された。この予算は、同社に日本国外から寄せられた「海外義援金」(総額約230億円のうち8割強の190億円を充当)によるものであり、日本国内で寄せられた義援金は使われていない。なお、対象者が約9万世帯にも上るため調達・配送が追いつかず、7月時点で3割の対象者にまだ届いていない。

雇用促進住宅に入居した方々も、この家電6点セットの配布対象者だった。しかし、入居が先になって、6点セットの配布が後になった中で、問題が集中的に現れた。
人が生活する場合、どうしても家電製品やふとん、食料などが必要になる。しかし、津波によって、自宅や家財道具が流され金融機関なども被災した中で、被災者はかなりの期間、次分がその時着ていたもの以外何もかも失った上に、お金も自由にならなかった人が多い。
雇用促進住宅に入った人に話を聞くと、4月11日から15日あたりで入居した人が多かった。その時点では、ほとんど何もない状態で入居するという事態だったようだ。生活するためには、家電製品が必要だったので多くの人は、何とか工面して、自分で家電を購入した方が多かった。何か月かして家電6点セットの制度ができ、雇用促進住宅の被災者に対しても打診があった。入居した方々の話を総合すると、6点セットは金額で提示されて、必要な物を選ぶという形になった。リストの中ですでに買いそろえた物は除外されるという中で、もらえなかった人が多かったようだ。少し遅れて仮設住宅に入った人々は、入居する時点で6点セットが備え付けられていた。
被災した人々の条件は同じだったので、雇用促進に入居した人々と仮設住宅に入居した人々にこれだけの差が出てしまった。

被災者と一言でいっても状況が全く違っている。大船渡市に縁もゆかりもなかったけれど仕事の関係で引っ越ししてきた夫婦の方もいた。新婚6か月で家財道具をなくした人もいた。会社の社長で会社と仕事道具の車両をすべて失った人もいた。中には親戚が東北の各地にいた人もいた。また、震災後母と夫をなくした人、津波によって1人だけ生き延びて、家族全員を失った人、幸いにして家族が無事だった人などさまざまな状況があった。
家と家財道具が流された人が、仮設住宅や雇用促進住宅に入ったということだが、職場を失って仕事場が完全に崩壊し再建のめどのない人は震災とともに失業者となった。
夫婦2人家が流されたが職場は無事だった人は、震災後も仕事と収入があった。年金暮らしの人も娘さんや息子さんが東北地方にいた人もいた。仕事が存在したり、身内や親戚の人々に援助してもらえた方々は、4月半ばまでに雇用促進住宅に入っても、苦労しながら家電製品を何とか調達していた。個人個人の状況の違いの中で、冷蔵庫を確保できない方もいて、6点セットの支給の中で冷蔵庫を支給してもらえた人もいた。

住宅の流失という状況にもさまざまな違いが現れている。震災によって、大船渡市や陸前高田市の地盤は、80センチほど下がったのだという。海に近い地域は、津波がやってきたら根こそぎ破壊されてしまう地域と一定の被害を受けるが、そこまで至らない地域という線引きがおこなわれている。破壊されてしまう地域での住宅再建はできないといっていい。財力のある人々は、高台に住宅用地を求めて家を建て始めている人がいる。しかし、このことによって高台の地価が上がり始めている。

訪問の中では、「坪あたり18万円から19万円に土地が跳ね上がっている」という発言もあった。
元の場所で住宅を再建できない人の中には、津波のこない土地をもっている人もいた。この方は、来年、そのに住宅を立てるという。また、中には、「道路の再建、線路の再建は、地盤が低下したのでかさ上げしておこなわれるので、その計画が決まらない限り自宅を作り直すことができない」という人もいた。
店舗と家屋が一緒になっていた商売人の人は、直すためには「5000万円以上かかる」といい、再建のめどは全くないと言った。
「現地で住宅を再建したいが、子どもたちが津波を怖がっているので、元の場所に住宅を建てられないと思っている」という人もいた。
港の近くでは、高級食材であったイクラ、ウニ、アワビなどが大量に腐敗した。この海産物を処理するために1万8000トンを地中に埋めたところがあった。その結果、夏になるとものすごい悪臭と大量のハエが発生した。来年もこの問題でおなじような状況が再燃すれば、住宅を建てることができないという人もいた。
住宅再建という同じ課題でも、被災者によって全く違う状況がある。
被災者の人々を訪問して、「すべての幸福な家庭は似たようなものだが、それぞれの不幸な家庭は、それぞれの姿で不幸なのである」というトルストイのアンナ・カレーニナの書き出しが思い出された。同じように家と家財道具が流されたのだが、家族を失った人、仕事を失った人、会社やお店を失った人、住宅を失って以後、立地条件や土地を持っている条件の違いによって直面している事態が大きく違っている。千差万別のような状況だ。

話を家電6点セットに戻そう。
たまたま、抽選によって少し早く雇用促進住宅へ入居できたことによって、その後何とも言えない不公平な事態が生まれた。家電製品を調達できた人も、かなりの苦労をして用意したのであって、条件は仮設住宅に入居した人と何ら変わらなかった。
訪問の中で「6点セットがいただけないのであれば、それに見合うお金をいただけたらありがたかった」という発言があった。それは、本当にそのとおりだと思う。

■雇用促進住宅の住宅事情からくる問題
廃止が決まっている雇用促進住宅の住宅の状況は良くなかった。最上階の5階では雨漏りに悩んでいる人がいた。排水が悪くてトイレの匂いが部屋の中にこもって困っている人がいた。結露とカビに困り果てている人もいた。日当たりの悪い部屋の1階では、コンクリートの上に畳が敷かれており、雨が降ると畳がじっとりしてくるという悩みもあった。これらの問題の窓口は、雇用促進住宅を管理している機構にあり、この機構は管理業務を他の団体にさらに委託している。市役所が窓口になっていない。その結果、住民の悩みを市役所に訴えても事態がほとんど改善しない状態に置かれていた。
これは、国会議員に関わっていただいて、交通整理をおこない、窓口を市役所の中に置いて、できることは積極的に改善するという立場に立ってもらって改善を図る必要がある。調査させてもらった後、ここで書いていることが実現されるよう提案させていただいた。

■ボランティア活動について
震災以後、多くのボランティア活動がおこなわれている。日本共産党がおこなっているボランティアもその中の一つに過ぎない。阪神大震災以降、社会福祉協議会が大きな役割を担って、現地のボランティアセンターとなり、ボランティアを受け入れて重要な役割を担ってきた。また、さまざまな団体や会社、個人がボランティア活動をおこなってきた。その意味も大きかった。日本共産党のボランティアも、社会福祉協議会に結集し瓦礫の撤去などにも加わり活動してきた。外国人によるボランティア活動にも頭が下がる思いがした。また若い人々のボランティア精神の発揮には明るい未来を感じた。NPOなどの活動には、ヘリコプターを使ってテントや救援物資を緊急に運び込むなど、災害直後の機敏な対応もあった。土木関係や建築関係の会社の協力も極めて重要だったし、たくさんの会社が救援物資や義援金、商品提供などのさまざまな支援をおこなった意味も大きかった。
警察の全国動員による活動、自衛隊員の捜索活動や土木作業、自治体職員の支援活動なども極めて重要な役割を果たした。医療分野における医療関係者の奮闘は、人間の命を守る上で特筆すべき重要な役割を果たした。
個人の力によって寄せられた救援物資や義援金、友人や知人のさまざまなサポートが、大きな支えになったことも大きかった。大規模に組織的に、さまざまな協力が重層的におこなわれて今がある。これらの活動のすべては、絆という言葉を体現したものだったのではないだろうか。

日本共産党のボランティアには、日本共産党ならではの救援活動がある。それは、被災者を訪問して聞き取り調査をおこなっていることだ。この分野での活動の意味は大きい。この活動は、被災者の声を直接聞き、自治体や国に働きかけることによって、切実な願いを実現しようとする政党本来の活動だと思われる。日本共産党の立党の精神は、「国民の苦難の軽減」にある。災害時の救援活動は、日本共産党にとって立党の精神の具体化でもある。
聞き取り調査は、自治体の保健師もおこなっている。ケアのためのこの活動は極めて重要である。
大船渡市では、仮設住宅に支援員が配置されて住んでいる被災者の要求を酌み取る仕組みが確立したので、今後は改善される仕組みができていた。訪問した雇用促進住宅には、支援員が置かれていない。様々な地域から移り住んできたので自治会もまだ確立していない。仮設住宅になるような仕組みづくりも課題になっている。
それでも、支援員という仕組みだけでは、個々人の生活再建という課題にまでは手が届かないだろうとも思われる。

しかし、住宅の再建、仕事の再建、生活の再建などの仕事は、本当は国がおこなうべきではないだろうか。国の機関が、地方自治体の中に人を配置して、被災者の個々の実態を聞き取り調査して、一人ひとりにアドバイスをおこなうとともに、制度の不備や改善をすすめ、同時に被災者への必要な支援を具体化していくことが問われている。こういう活動を国がしないと、震災から立ち上がろうとする人々を支援することはできない。国がこういう活動をすることによって、被災者支援はほんまもんになる。こういうことをしない国であるところに日本の不幸があるのではないだろうか。

国がしないのであれば、国会を動かしている政党はどうなのか。
日本共産党が、被災者の方々の声を聞き、それを国会や自治体に届けて改善を求めているが、政党でこういう活動をおこなっているのは、日本共産党だけだろう。
日本共産党は、全国からボランティアを組織して、現地で懸命に活動している。ボランティア活動は、大規模に行われてきたが、しかし、被災者全員の声を聞くということにはなかなか手が届かない。
地元のすべての議員の方々は、住民の声を聞き願いの実現のために様々な活動をおこなっているにちがいない。議会における質問を読ませてもらったが、震災問題で住民の要求を掲げて、それぞれが懸命にがんばっている。
しかし、政党の中で日本共産党のようにボランティアを組織して救援活動をおこなっているところはない。
問われているのは政党の活動ではないだろうか。政党としての活動がなければ、国会に被災者の声がリアルに届かない。個人の議員の方々が、各政党と結びついて、国会に被災者の声を反映しているということはあると思われる。でも政党として、選挙で活動するように住民の中に入り、被災者の声を聞く活動をおこなわないと、さまざまな被災者の声を太く国会に届けることはできないのではないだろうか。

地方自治体は、復興計画を立てて、それを実行に移すことが強く求められている。また震災によって発生している被災者に関わるさまざまな仕事も発生している。さらに破壊された自治体の諸機能の再建も切実だ。学校の機能の回復という一例をみても、グラウンドには仮設住宅が建っており、津波で使えなくなった学校もある中で、機能回復だけでも課題が山積している。その上に自治体としての日常業務があるので、手一杯の状態に置かれている。地方自治体は、住民の福祉の増進のために存在する組織なので、当然のこととして被災者の人々の聞き取り調査を行う責任がある。しかし、現実の状態を見てみると、現時点ではすべての責任を地方自治体が担うことは不可能になっている。国は、地方自治体のこのような状況を知っているのだから、自治体を支援するためにも、自治体の中に国のセクションを置いて、人的にも支援しながら主権者国民の願いに応えるべきなのではないだろうか。

調査の中で「失業保険が来年の5月で切れる」という人がいた。貧困の問題はこれから本格化してくる。瓦礫の撤去と分別作業がおこなわれているので、次第に再建へと視点が移っていく。これと併せて、仕事と生活再建が具体化していくが、一方で生活困難がより一層深刻化してくる人々も生まれる。困難が確実に増大していくのに、それが目に見えなくなっていく。被災者1人1人に視点をおく生活再建の支援が、おこなわれないと貧困に苦しむ人々の展望は開けない。マスコミは、目に見える部分が再建されていくことを見て、復興がおこなわれているというような描き方をするかも知れない。しかし、それは現実の一つの側面でしかないだろう。そういう描き方で震災を見ないでほしいと思う。個人の住宅と仕事、暮らしの再建、コミュニティーの再建、こういう視点で被災地を見てほしいし、ぼくは、こういう視点で活動したい。


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Posted by 東芝 弘明