1300キロの旅
北陸道の三条燕インターを降りて、駅前のアパホテルに泊まっていた。ここを8時30分の出発して、北陸道を南下し、長野に向かってトラックを走らせた。長野道から中央道に行き名神を通って帰るためだ。
車から見える長野の景色は綺麗だった。あの長い恵那山トンネルは、トンネル内全線工事中で片側通行だった。京滋バイパスを通って八尾に出たので交通渋滞に巻き込まれることなく、京田辺から2時間程度で岩出に帰り着いた。
トラックからすべての荷物を下ろして、かつらぎ町に帰り着いたのが7時前だった。
2人で岩手県の大船渡市に行き、ボランティアをして帰ってきたので片道1300キロの道程だった。後退で運転して行き、帰ってきたので一人1300キロ運転したことになる。行きは、ほとんど休憩なしに直行した。高速を走り続けると神経が疲れてくる。
岩手は遠いところだった。
岩手に向かう途中、一番慌てたのは、セットしていたカーナビが使えなかったことだ。車のシガレットのところから電源を取ってカーナビをセットしていた。でもこのシガレットのところが壊れていたので、電源が取れずカーナビの画面はブラックアウト状態だった。5時間ほど車を走らせたところで、カーナビが作動しないことを発見した。
「一応、この地図も持っていってください」
出発の直前、9月にボランティアに行ってきたY君が念のために渡してくれた地図が、唯一の頼りになった。
カーナビの案内で車を走らせるということになっていたので、ルートの確認が極めて曖昧だった。新潟から磐越道に入ることも未確認だったので、磐越道に乗らずに車を走らせた。
トイレ休憩で立ち寄ったサービスエリアには、小雨が降っていた。ひっそりとしている。止まっている車は、ぼくたちのトラックだけだった。岡田さんは、車を降りて貼り出されている地図をしげしげと眺めていた。
「どうも来すぎたみたいや。もうじき高速道路が切れるで。つながってないわ」
岡田市議は、高速道路が山形県まで伸びていないことに気がついた。車の中で改めて手元の地図を見ると磐越道に行く必要があることが分かって、Uターンすることになった。これで1時間ほど時間を浪費してしまった。
磐越道は、新潟、つまり日本海側から日本列島を横断して太平洋側にある東北道につながる高速だ。このルートを通っていくと会津磐梯山を通ることになる。この山越えのルートは、かなり激しい雨が降っていた。
磐越道から東北道に乗り一関インターをめざして車を走らせる。一関インターで降りるという話だけは聞いていたので、地図に赤丸で囲われていたこのインターをめざして車を走らせた。
しかし、一関を降りても大船渡へのルートが全くわからない。もらった地図は、高速の表示がメインなので高速以外の細かい地図は簡単にしか書かれていないし、縮尺が荒すぎて頼りにならない。
「陸前高田にはどう行けばいいですか」
岡田市議が、料金所で大船渡の手前にある陸前高田への行き方を聞いた。
年配の顔の長いおじさんは、線がたくさん入った地図を渡して、ていねいに説明してくれた。
土地勘がないのでさっぱりわからない。
「どうもありがとうございました」
まずは真っ直ぐに行くということだけを頭に入れてトラックを走らせた。あとは道路標識だけが頼りだった。
朝飯のおにぎりを買ったコンビニでさらに道を聞いた。しかし、途中で2人ともものすごく眠たくなってきたので、道の駅のようなところで30分仮眠した。
「大船渡に着いたら共産党のポスターを貼っている家で共産党の事務所がどこにあるか聞いてみよう」
岡田市議がそう提案をした。
市内に入っても右に行けばいいのか左に行けばいいのか分からない。
当てずっぽうで左に行き、少し走ると日本共産党のポスターを貼った家が見つかった。
車を玄関の前に停めて、ぼくが尋ねに行った。
「おはようございます」
澄んだいい返事が聞こえたので、待っていると若い女性の方が奥から出てきた。感じのいい人だった。
「あのー、日本共産党の事務所をご存じないでしょうか」
「さあ、わかりませんが」
お礼を言って車に戻り、わが紀北地区の地区委員長に電話を入れた。
「そこは、どこや」
それはこっちが聞きたいことだった。
「事務所は市役所の近くや」
しかし、その市役所がわからない。電話で話をしていると、家からさっきの女性の人が出てきた。
「そこの散髪屋さんが共産党の方だと思います。その方に聞いていただいたら……」
散髪屋のくるくるがちらっと目に入る。
非常に親切な人だった。
電話で話をしている最中だったので、親切な女性とうまく会話できない。
「市役所はどこか分かりますか」
地区委員長と電話で会話しながら、親切な女性に尋ねた。
「市役所なら分かります」
この会話の途中、地区委員長は、薬局があるとか信号があるとか精一杯語ってくれた。話が錯綜する。
2人に同時に話が出来ないので、しどろもどろになりながらも「ありがとうございます」と頭を下げ、地区委員長には、「市役所が分かりました」と言って電話を切って、進んできた方向と反対に車を動かした。
現地に着いたのは朝の9時だった。
駐車場に着くと歩いていた男の人がぼくたちを見て、
「ごくろうさまです。お待ちしていました」と声をかけてきた。
その人はまさに今、車を降りたところだった。
事務所であらためてあいさつをすると大船渡市議の田中英二さんだった。
「9時に到着する予定だと連絡を受けていました」
ぼくたちの知らないところで9時に着くという約束が出来ていたらしい。
9時に着く予定だという話は、体操のE難度達成のような気がした。頭の中に花火が上がった。









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