legend&Memories

雑感


久しぶりにMacFanを買った。スティーブ・ジョブズのプレゼンをまとめた本が付いていた。この人はぼくよりも5歳年上の人だった。巨大なコンピューターからパーソナルコンピューターを生み出して、革命を引き起こした人だった。
1983年のプレゼンテーションを読むだけで、天才的な人だったのがよく分かる。この当時は28歳だった。
スティーブ・ジョブズは、新しいテクノロジーにもとづく媒体(デバイス)が生まれても、作った人々にもその使い方が分からず、しばらくの間は「古い媒体の慣習に逆行する傾向があります」と語っている。
このものの見方は天才的だと思う。この視点からスティーブはコンピューターの未来を語る。
小型のコンピューターは、我々に何をもたらすのか。

この時すでに、スティーブはグーグルアースが実現したストリートビューが実現すると語っている。この考え方はカーナビにもつながるものだった。ゲームをしながら、マクロ経済学を生きた形で学べるようになるとか、天才的な科学者の思考や知識をコンピューターに写し撮っていけば、いつか、彼が亡くなってもコンピューターの中に彼がいて、ぼくたちの質問に答えてくれるかも知れないとも語っている。
新しいデバイスが、何をもたらすのか。それがどのように生活を変えるのか。

スティーブは、極めて具体的に、自分たちが生み出す新しいデバイスが、何を実現するのかを考えて実現してきた人だ。世間がまだ、コンピューターの使い道が分からず模索していた時代に、新しいデバイスで何を実現するのかをイメージして、しかも見事にそれをやってのけて見せた人だった。28歳の時に語っていたものの見方考え方が、亡くなるまで生き方の中心に座っていた人だった。
ここには、驚きを禁じ得ないものの見方、考え方がある。

現代はすさまじいスピードで動いている。技術がオープンになり、ランダムに、四方八方に発展し、それがさまざまなデバイスに組み込まれている。その中にあって、Appleは技術を貪欲に取り入れながら、非常に安定した信頼性のあるデバイスを作り始めている。もちろん、最初からAppleがこういう製品ばかりを世に送り出してきた訳ではない。
ぼくが、Appleを手にしたのは38歳だった。この当時、AppleはちょうどNEXTを買収し、スティーブをAppleにもう一度呼び戻す時期だった。

ジョブズ復帰の少し前にぼくは、Appleのコンピューターを手に入れた。当時はまだ今のように洗練されたものではなかった。買うたびに初期不良がついて回った。
デスクトップは電源が勝手に入った。始めて買ったノートパソコンであるPowerBookは、斜めに持ち上げるとバッテリーがずれて電源が落ちた。次のPowerBookは、最初からキーが斜めに曲がっていた。しかし、その次に買ったMacBookは、アルミニウムのボディをもつもので、一枚の板をくり抜いて作るユニボディと呼ばれるものだった。この時から初期不良はなくなった。
MacOSxに移行して、今は10.8になった。8回目のメジャーバージョンアップを行ったことになる。このプロセスの中で、CPUはPowerPCからIntelに切り替わった。移行期は、ソフトの互換性を最大限保つ、つまり板に板を重ねるようにしながら切り替わっていった。
変革は、いつも以前のテクノロジーからの飛躍を含む。それは政治も同じ。新しいものは以前の方法の根本的な批判を含む。こういうものがない変革はあり得ない。過去との決別を果たすときに、完全に過去を断ち切る訳には行かないが、断ち切らない手続きを経ながら、新しい部分はかなり大胆に跳躍する。

Appleは、ハードとソフトを一緒に作っている会社だ。ここに他の会社との大きな違いがある。自由度は少ない。よくAppleには自由がないという。この自由度の少なさがiPhoneの弱点だともいう。アンドロイドの方が自由度があるといわれる。
しかし、安定的に使えないようなデバイスを世に送り出して、苦労してサポートしようとしても仕切れないような雑なものを作っても、そのデバイスは使用に耐えられない。自由度が高い反面、雑多なものがいやというほど入り込んでいる。
ときどき、Apple以外のコンピューターなり、スマートフォンをさわる。
「何という機械を売ってるんや」という驚きがある。出来が悪い。

Appleの洗練された技術と洗練されたデザイン。──それはこのデバイスを通じて、どのようなことを実現するのかを具体的にイメージして作られたもの。スティーブ・ジョブズが語った具体的な未来の具体的なイメージをAppleが見失わずに、一歩一歩実現していけば、彼の精神は死なないにちがいない。
スティーブが死んだあとも、彼の語ってきたこと、具体的に描いていた未来と、それを支えていた思考、これがきちんとコンピューターの中に記録されていれば、質問すれば答えてくれるということが実現しているのかも知れない。
後に続くものが学ぶ気持ちさえあれば。


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雑感Apple,スティーブ

Posted by 東芝 弘明