『十字架』

文学

「お父さん、読んでみてよ」
手渡された本は、重松清さんの『十字架』という文庫本だった。
この本は、娘が夏休みの読書感想文のテーマに選んだ小説だった。物語は、中学2年生のフジシュンが、3人がかりのいじめの末に自殺するところから始まっていた。死んだ子どもが残した遺書には、1人の「親友」の名前と、いじめた2人の同級生の名前と、思いを寄せていた女の子の名前が書かれていた。
子どもを亡くした家族と名前を書かれた4人の同級生。それぞれの肩に重い「十字架」がのしかかっている。背負って歩いた家族と同級生、背負わされるのを嫌がり逃げた同級生、それぞれの人生が描かれていく。

この小説は文庫本で395ページあった。
この重い話を娘はどう受けとめて、感想文として何を書くのだろうか。小説の主人公は、14歳から30代半ばまでの人生が描かれている。高校生が、この小説をどう読むのだろうか。興味がある。
小説は、自分の積みかさねてきた人生を土台にして読むものだということを改めて感じた。主人公が若い世代だから、自分たちの中学校や高校、大学の時代を追体験する感じになる。同時に親の人生にも心が揺さぶられる。ぼくは、複眼とでもいうような読み方になった。娘の10代の視点とぼくのような55歳の人間の視点は、違うだろう。


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Posted by 東芝 弘明