調律師とピアノの物語

雑感,文学

「日本語の文章って、こんなにも美しいものだったのでしょうか」
そう感じた。
言葉によって音楽が表現できるなんて考えたこともなかったのに、この人は言葉で音楽を表現していた。物語を読み終えた次のページに「謝辞」という短い文章があり、「そして私のピアノを四十五年に渡って見守り続けてくださった」という言葉があった。
ピアノを弾いてきた作者が、調律師の森に分け入って書いた小説は、言葉によってピアノの音を表現していた。
『羊と鋼の森』
こんなに文章が綺麗な小説に出会ったのは初めてだった。羊から美しいという言葉が生まれ、善いという字も羊から生まれた。ピアノのフェルトは羊の毛によって作られていて、このフェルトが鋼で作られた弦を打つ。鍵盤を押すと音が生まれる。ピアノの中には羊と鋼の森がある。調律師は、この森の中に足跡を残しながら入っていった人々。ピアノの音が好きなら森奥深く入っても出てくることができる。

事務所の本棚に眠っていた本を、どういう経緯で買ったのかは忘れてしまった。もしかしたら新聞の一番下にある本屋大賞の広告だったかも知れない。『ビブリア古書堂の事件手帖』を読んで、小説にもう少し触れたいなという気持ちが、本棚からこの本を取り出す力になった。本をたくさんちりばめている『ビブリア古書堂』がもつ本への誘いと『羊と鋼の森』はつながっていなかったのに。
宮下奈都さんの小説をもう少し読んでみたい。


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雑感,文学

Posted by 東芝 弘明