持続可能な地域発展の仕組みを考える

雑感

「人口減少には歯止めがかからない。あと10年もすれば、新たな市町村合併が起こってくる」
この意見には、説得力がある。それは、地域の衰退傾向が事実として進行しているからだ。
では、どうやってこの傾向を脱していくのか。
最近考えはじめているのは、持続可能な運動だ。全国の事例には、企業を早期退職した方が、地域を掘り起こし、組織を作りボランティアを中心に地域の活性化のスタートを切っている例がある。これらの取り組みに魅力はあるが、考えているのは、そういうスーパースター的な人がボランティア組織から引退するときに、運動が持続していくのかどうか、ということだ。

いろいろな組織が持続可能な力を持って運営されていくためには、運動理念とともに財政的な仕組みが必要になる。
たとえば、総合型地域スポーツクラブは、会費制のクラブとして自立しようとしている。組織を持続可能な形で運営していくためには、どうしても事務を担う専従者を雇用する必要がある。憩楽クラブの場合、現在雇用しているのは女性2人。パートで勤務されている。この女性職員がいることで組織の事務が支えられ、運営が滞りなく行われる。
日本は、スポーツインストラクターに対し、報酬を払う例が極端に少ない。総合型スポーツクラブは、インストラクターに対し、少額だけれど報酬を渡している(とても十分な額には達していないが)。目指しているのは、インストラクターが社会的にスポーツの担い手としてもっと評価されていくということだ。スポーツのプロはアスリートだけではない。地域でスポーツを支える人々が、教えるプロとして生活が成り立つような状況が生まれれば、地域におけるスポーツを支える仕組みは大きく変わる。
スポーツを支えるすそ野が広くなれば、楽しむスポーツもアスリートを育てるスポーツも、幅も広く層も厚いものになる。

総合型地域スポーツクラブは立ち上げて5年、NPO法人化すれば7年補助金が出る。この補助金によって運営が支えられているが、それ以降は、組織として独り立ちすることが問われる。会費収入で職員を雇いインストラクターに報酬を払い続けることができれば、持続可能な組織として発展できるのだけれど、人口の少ない田舎のスポーツクラブを会費だけで成り立たせるのは困難だ。憩楽クラブも自立をめざす検討の中で会費の値上げを検討し踏み切ったが、それでも会計的には厳しさがつきまとっている。

地方自治体が、総合型地域スポーツクラブや住民が作ったNPO、任意の団体などの持続可能性をどう考えるのかが、ひとつの課題になっている。最近大切だと思いはじめているのは、スモールビジネスという考え方だ。例えば、総合型地域スポーツクラブにスポーツ施設の管理運営を指定管理することによって、100万円前後の収入を得られるような仕組みを構築するとしよう。今まで個人や団体に委託していた委託費の範囲で指定管理させることができれば、自治体としては、新たな財源が必要だということにはならない。しかし、総合型地域スポーツクラブが施設の管理運営を担うことによって、総合型スポーツクラブの運営をも支えられるようになれば、従来の委託費と同じ費用で400人、500人の会員を抱える総合型地域スポーツクラブの運営を持続させられる。

スモールビジネスという発想は、ボランティア組織の維持管理運営にとっては非常に大きな力になる。ボランティア組織は、住民のボランティアによって成り立っているが、その組織にパートの職員を置けるような仕組みを構築できれば、ボランティア組織であっても、組織の日常的運営が可能になってくる。ボランティアについても、無償という考え方ではなくて、一定の有償ボランティア(例えば1日1000円というような報酬)を考えた方がいい。ボランティアだけど独自の経営があり、そこに100万円などの公的資金が入ることによって、400人、500人の運動が組織できるようになれば、100万円の公的資金は小さな資金で非常に大きな仕事を果たすようになる。

ぼくが6月議会で提案した、妙寺駅と笠田駅の簡易委託駅化もスモールビジネスの一つの形態になる。切符の販売をJRから委託され、収入を得るという簡易委託という形態は、1日10時間(たとえば朝の6時から夕方4時まで)、365日駅に職員を配置するための基本的収入を確保することに道をひらく。駅は、3人ないし4人の職員(もちろんパート)がローテーションを組んで365日運営するようになる。この体制を維持するために紀勢本線のある駅では、自治体から100万円の補助金が出ている。この100万円を出すことによって、年間4人で駅を管理するシステムを構築できるということになる。たとえば1日1万円の費用がいるとすると、年間365万円維持するのに必要だが、切符販売で265万円を稼ぎ、100万円の補助金で底支えするという形態になる。
この簡易委託駅を通じてどのようなことを実現するのか。それは、簡易委託駅を作る自治体の考え方によって変わってくる。

福祉有償運送を行っている人々の存在を知っている。運行はボランティアによって成り立っている。ガソリン代を利用者からいただくということで、心ある人々が、自分の車を提供して福祉有償運送を担っている。話を聞いていると運営に参加している運転手は、全くの無報酬だという。しかし、支えている中心的なスタッフも無償、運転手も無償という形で、いったいどれだけの期間、運営を続けていくことができるだろうか。軸になって支えている人が引退してしまったら、この仕組みが持続するだろうか。ここに底支えする公的資金が投入されれば(それは有償運送への補助という考え方でもいい)、事務を担うスタッフを雇い、運転手にたとえ1日1000円から2000円でも支払えるようになれば、組織の安定性は格段に高まる。

地域の活性化を担う任意団体の組織についても、スモールビジネス化が実現できるような形を考えれば、いろいろな組織が生まれてくるかも知れない。地域おこしNPOを作り地域の仕掛け人の役割を果たす。そのために若干の補助金を出す。もちろんお金儲けにつながるようなビジネスを考えてもらう。そうやってこの組織が地域おこしの担い手になっていくというのも面白い。地域おこし支援員をこういう仕組みのなかで運用すれば、支援員がただ単に世話役だけではなくて、地域で仕事を起こしながら世話役を行うことができるようになるかも知れない。そうやって立ち上げた経営体が、採算の合うようなビジネスに発展する場合は、地域おこしのNPOから独立すればいい。地域にどうやって仕事を起こしていくのか。スモールビジネスから事業が始まるというのも一つの考え方だろう。

無償のボランティアで運営するのではなくて、持続可能な組織運営を考えていくことと小さなビジネスを結びつける。考えると面白い。


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雑感NPO

Posted by 東芝 弘明