NHKへの政治介入事件 2005年1月15日(土) 

雑感

01年1月30日放送の「問われる戦時性暴力」という番組に対して、自民党の安倍晋三副官房長官と中川昭一衆議院議員が番組の改変をNHK側に求め、内容を変更させた事件について、話が2点3点するようなやり取りがおこなわれている。
朝日新聞は、中川氏がNHKの関係者に会ったのは2月2日と同8日だったという中川氏の調査結果報告を記事にした。
しかし、同時に、この記事の中で、
“この問題で、中川氏は10日、朝日新聞の取材に対し、放送前日に面会した事実を認めたうえで、「NHK側があれこれ直すと説明し、それでもやると言うから『だめだ』と言った」と答え、その後も「(番組でとりあげた)模擬裁判につき、NHK教育テレビで放送するとの情報があった。NHKより番組について説明があった。公正中立の立場で放送すべきであることを指摘した」とするコメントを発表していた。”
と書いた。なぜ、基本的な事実と認識が180度ひっくり返るのか?
NHKは、14日、朝日新聞に抗議し、謝罪と釈明、訂正記事の掲載を求めている。
中川氏は、記事が大きな波紋を呼び、どんどん大きくなってきたので、調査をおこなった感じがする。その結果、事実そのものがなかったし、取材に対してもそういうコメントはしなかったという態度をとっている。
しかし自分の取材内容まで否定しているのは、かなり疑わしい。新聞の性格からいって、国会議員という社会的な地位の高い人に対して、ねつ造するような記事を書くことはまずないと思うからだ。これで中川氏は、朝日新聞と全面的に争う姿勢を示した。
中川氏とNHKが会ったのは、2月2日だったというコメントは、中川氏もNHKも1月13日におこなっている。偶然かも知れないが、歩調がよく合っている。
朝の「とくダネ」テレビでも指摘していたが、44分の番組が、最終段階で4分もちぢめられ40分となったところに疑問を感じる。普通、編集をし直す場合、番組の枠が44分ならそれに合わせて編集し直すのが常識だからだ。番組の間際に3分も削って元従軍慰安婦の証言をカットした理由については、明らかにされなければならない。番組の中で何を削ったのかを見つめれば、改変の意図は見えてくる。
実は、4分カットの問題については、裁判で争われている問題だ。「とくダネ」では、当時、取材を受けたVAWW—NETジャパンが、この番組が改ざんされたとして提訴している問題には全く触れていなかった。
この裁判は、昨年三月、東京地裁で一審判決が下されている。ただしこの時は、制作会社のドキュメンタリー・ジャパンにのみ賠償支払いを命じただけで、NHKの責任を一切問うていない。VAWW—NETジャパンは、この判決を不服とし控訴し、現在、東京高裁で係争中となっている。
第一審の判決は、不十分だったとはいえ、取材された側の主張が改変されたことを認め、制作会社の責任を問うている。この事実を見れば、何らかの意図をもって番組が改変されたことは確定しているといっていい。
この裁判闘争があって、今回のチーフ・プロデューサーによる内部告発があったということだ。この事実関係がないと、4年たってなぜ内部告発なのかが分からなくなる。
基本的な事実関係を否定することによって、訴え出た側に事実誤認があるかのような印象を与え、結果として権力を持っている側に都合のよい報道に流し込むような動きを感じる。国民の目の前で何が事実かを分からなくし、「それみろ、告発した側がうさんくさい」という受け止め方を増幅させ、やがて、告発した人そのものを攻撃する世論をつくろうとしているのかも知れない。
昨年起こった3人のイラク人質事件のとき、あたかも自作自演であるような情報をインターネットに流し、極論では「自作自演」説を増幅させ、「自己責任論」に流し込んでいったやり方を経験したが、それとの類似性を感じる。
マスコミは洪水のように情報を流すのではなく、いったいどちらに事実があるのか、これを見極めるための取材をしてほしい。ここにマスコミの存在理由と責任がある。


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雑感NHK

Posted by 東芝 弘明