質問にお答えします 2005年7月5日(火)

雑感

はい!質問です。「日本国憲法の全条項を守る。」つまり厳密な解釈で、自衛隊は認めない。それとも解釈として、自衛隊は軍隊でないので認める。どちらでしょうか?もう一つ、日米安保条約を維持する。または破棄して同盟関係をやめる。どちらなのでしょうか?


コメントで上記のとおり質問があったので、今日は文字制限のない日記欄で、この質問に答えさせていただきます(以下文体は「である」体)。
まずは結論だけ書く。
自衛隊は憲法第9条に違反した違憲の軍隊。しかし、自衛隊を解散するといっても簡単にはできない。ひとつは、国民の意識の問題がある。自衛隊が役に立っているという世論もある。また、20数万人もの国家公務員の再就職先をどうするのかという問題もある。日本共産党は、日米安保条約を廃棄して(締約国の一方が廃棄の意思を通告すれば、条約は1年で失効する)も、一定の期間、自衛隊は残ると考えている。その時期に、日本共産党を含む連合政権ができていた場合、災害救助などで自衛隊を活用する。
自衛隊の解散という課題は、国民合意を形成しながら時間をかけておこなうということになる。
日米安保条約には、アメリカに日本の全土を基地として提供しているという側面、対米従属関係の下での経済協力という側面、極東の平和と安全という名の下でのアメリカの軍事戦略の前線基地になっているという側面、軍事力を増強していく義務を負うという側面、いずれか一方に攻撃がなされた場合、共同防衛にあたるという側面などがある。アメリカの軍事戦略と経済戦略の柱になっている日米安保条約を廃棄し、日米間で新たに平和友好条約を結ぶというのが日本共産党の方針だ。世界には非同盟諸国運動がある。軍事同盟を結ばず、平和と中立の日本をきずくという方向にこそ、日本の発展方向がある。
憲法第9条を将来にわたって守り抜く政策を日本共産党がとったのは理由がある。戦後すぐ、もしくは高度経済成長以後もそういう条件にはなかったという認識だった。しかし、90年代を迎え、北朝鮮問題はあるものの、東アジアのなかに非常に強力な平和の流れが生まれてきた。これは、ベトナム戦争の教訓でもあったようだ。ASEANの流れがこれにあたる。
おもしろかったのは、最新の「17年度以降に係る防衛計画の大綱」だ。こう書いている。
「見通し得る将来において、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下していると判断されるため、従来のような、いわゆる冷戦型の対機甲戦、対潜戦、対航空侵攻を重視した整備構想を転換し、本格的な侵略事態に備えた装備・要員について抜本的な見直しを行い、縮減を図る」
この文章の次には、こう書くべきだ。
政府と自衛隊が認めるように侵略事態生起の可能性が低下しているので、9条を守り抜く条件は広がっているのだと。
以下は、結論に対する説明的なもの。
日本共産党の「日本国憲法の全条項を守る」という立場は、党の綱領に明記された立場だ。これは、日本国憲法を最高法規として守り、憲法を「規範」として国づくりをおこなうということだ。
自衛隊の問題については、当然、憲法9条との関係が問題になる。
憲法第9条は以下の通りである。

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

憲法第9条2項は、明確に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と書いている。自衛隊は、この9条2項に明確に違反した違憲の軍隊だ。
アメリカ軍が、日本国内でどのような任務を負っているのかを日本国民が具体的に知らないように、自衛隊がどのような訓練をおこない、どのような軍事力を持っているのかを圧倒的多数の日本人は具体的に知らない。テレビは、自衛隊の実際の姿をほとんど描かない。
自衛隊の軍事力は半端なものではない。世界第2の経済大国が、年間3兆円規模で予算をつぎ込んできた。アメリカに次ぐ軍事大国、これが日本の姿である。
自衛隊は、実戦部隊としては戦場での経験がない特異な軍隊だろう。しかも、空母を持たないで護衛艦を持っている軍隊でもある。対潜哨戒機が異様に多いという特徴もあった。対潜哨戒機P3Cオライオンの更新にあたって、国産機であるP-X/C-Xを開発中ということらしい。
アメリカは、極東軍事戦略の一環として日本に駐留している。80年代から自衛隊と米軍の合同軍事演習が大規模に行われ、太平洋での訓練も具体化されている。ぼくの同級生は自衛隊員として今も勤務している。彼が言うには、陸上の訓練でも合同演習は行われ、アメリカ軍が運転するジープに自衛隊員が乗るという形がとられている。
こんな合同演習、どちらが指揮をとっているのだろう。指揮権は米軍にあり。この可能性は消えない。
空母よりも護衛艦が必要なのは、自衛隊が米空母を護衛するからだ。自衛隊は米軍と一体的に行動してこそ、初めて有効に機能する。自衛隊は、米軍を補完し、あたかも有機物のように役割を分担しているのかも知れない。頭脳と胴体は米軍、自衛隊は手足なのかもしれない。
神戸には、アメリカの艦船が一隻も着岸していない。神戸港に入るためには、「非核証明書」が必要になる。つまり、アメリカ軍には、常時核兵器を搭載している艦船があるので、神戸港には入れなくなったということだ。在日米軍は、核兵器で武装された軍隊であり、この軍隊は、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争等々の出撃した。
近年、核兵器に対する密約が日米の政府間にあったことがアメリカの外交文書の公開で明らかになった。
アジア・中東にとって沖縄は、戦争のホットな拠点として映ってきた。これが諸外国から見た日本の現実だろう。
経済的な従属関係は、多くの人の目に触れるようになってきた。
なぜ、狂牛病の疑いのある牛を日本が受け入れていくのか。日本のように全頭検査をおこない、さばかれた肉になって以後も、生産地が最後まで分かるシステムをとればいいし、日本は現実にそういう体制を確立した。なぜ、アメリカンシステムを受け入れて、日本国民を危険にさらすのか。
日本には原子力発電所がたくさんある。原料であるウランは、アメリカから購入されている。なぜか。
アメリカ本国は1978年におこったスリーマイル島の原発事故以後、原子力発電所を新たに作っていない。原子力発電所は、原子力潜水艦のエンジンを転用して作った巨大な湯沸かし器だ。人類の科学水準では原子力を平和的に利用できない──これが、スリーマイル島の事故の結論だった。アメリカの核兵器製造の軍事戦略を維持するためには、ウラン鉱山を維持しなければならない。つまり、掘り出したウランを買ってくれるお得意さんを作らないとアメリカの核兵器戦略を維持できない。
日本は、アメリカのウラン鉱山を支えている。
日本は、原子力発電の安全神話をふりまいて原発への依存を高めている。
日本は、原発はクリーンな発電という宣伝までしている。核廃棄物の処理方法さえ確定していないのに。
農産物の輸入を嵐のように巻き起こし、そのために関税障壁を下げさせたのも記憶に新しい。農薬の基準もアメリカ並みに合わさせて、輸入しやすくしたということだ。
金融界でも同じことが起こりつつある。金融ビッグバンも、グローバルスタンダードもメガコンペティションも規制緩和もアメリカの要求から始まっている。
竹中平蔵さんは、新自由主義の騎手として、アメリカを手本に日本の構造改革を推し進めている。ものすごい増税の上に消費税の増税を押しつけようとしている。社会保障の分野では、給付減と負担増を押しつけている。貧富の差は拡大し、貧困化現象が加速しつつある。
こんな堅い話、読んでくれる方は、ほとんどいないだろうなあ。
事実に基づいてものを考える。事実から得た認識は、未知の事態に出会ったときに謎を解く力になる。しかし、現実が人間の認識を超えて動いている場合がある。人間の認識はなかなか一度には変わらないが、事実の重大な変化があったときには、人間はその認識を変えなければならない。
日本共産党の政策は、そういう努力のなかで発展してきたように感じる。
午前様になった。日付を調整して7月5日とした。あしからず。


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雑感

Posted by 東芝 弘明