シン・エヴァンゲリオンに寄せて

雑感

シン・エヴァンゲリオンを見た。分からないところはたくさんあったが、結局は碇ゲンドウが亡くなった妻を再生させたいがためにしていたことで、エヴァも使徒も全部仕組まれたものだったというかなりエゴイスチックな話だった。それをやめさせて、碇シンジが世界を取り戻すというお話なのだなあという感じだった。SFの終わり方の一つのパターンは、異次元の亜空間と巨大な人とその世界の崩壊というものだ。それを通じて解決して世界を取り戻すという形。
こういう終わり方には既視感がある。似ている作品がいくつか頭に浮かぶ。地球や宇宙を描いてテーマが大きくなるとかなり観念的になる。

ファンタジーを破綻させないために大事なのは唯物論的アプローチだろう。具体的世界の具体的な物語。男はつらいよの山田さんのようなアプローチがその典型。寅さんは、てきやで全国を旅しながら商売しているということだが、どうしてこれで生きていけるのか分からない。風邪を引いたりけがをしたりすることもあるだろうに、健康保険にさえ入っていないし、国民年金を払っているようにも思えない。そういう意味で寅さんは、荒唐無稽なファンタジー的存在だと思われる。しかし、寅さんのまわりには、極めてリアルな庶民を中心とした人間の世界が描かれている。ファンタジーとリアリズムの結合によって、寅さんにもリアリティが生まれる。見ている人はリアルな世界に共感しながら、寅さんというファンタジーにも少し憧れる。

シン・エヴァンゲリオンから受け止めた一つのメッセージは、ファンタジーには、リアリズムのとの結合が必要だということだった。この点で十分成功したとはいえない側面をも、シン・エヴァンゲリオンは持っている。これと比べると、ジョージ・ルーカスが描いたスターウォーズ全6作品は、ファンタジーとリアリズムが溶け合ったいい作品だったように感じる。

でもシン・エヴァンゲリオンの面白さは、ここに書いたことを大きく超える。テレビアニメがあり、劇場版があって一度完結した話を、序・破・Qという題名でさらに劇場化して、最後にシン・エヴァンゲリオンとして描いたのか。
ぼくが見始めたのは序からだった。エヴァとは何なのかさえ、一切説明しない描き方からしか、この作品に触れたことがないぼくにとって、使徒とは一体なんだったのか、エヴァとはなんなのかとかとかいうコアな部分さえよく分からない。どうして、庵野秀明さんが、何も説明しないような描き方をしたのかさえ分からない。でも分からないままでも面白い作品に仕上がっている。何を描きたかったのかということを探究するのも面白いかも知れない。


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雑感

Posted by 東芝 弘明