現場に入って分析しないとね

雑感

『シン・日本共産党宣言』を読み、その上で『希望の共産党』を読んでいる。『希望の共産党』の方が面白いし刺激的。
共産党への批判も、考え方を深めさせてくれる契機になりそうだ。本の中には、共産党に対し率直な批判をしている学者の方がいた。この方は、党中央の文献に基づいて批判をしているが、それは、文献調査に留まってしまっている。党中央が党規約を2000年に改定し、それに基づいて活動してきた党組織の変化が、文献調査に留まっているので捕まえ切れていない点があった。捉えられていない論点は、捉えられていないがゆえに、文章には出てこない。大事なテーマに対し論究がないのは、認識にないんだから仕方がない。

日本共産党は、党の組織活動の原則を規定した党規約から前衛党という規定や「下級は上級に従い」などという規定をなくし、支部が主役という方針を打ち出し、双方向、循環型の党をめざして23年が経った。
この規約に基づく変化は、徐々に党内に浸透してきた。この中に実際の党組織や党員がいる。最近打ち出した「楽しく元気のでる支部会議」という方針は、まだ豊かなものになってはいないし、党中央の論理展開も少ない。ここを深めるためには、会議の民主的な運営とは何か、個人の尊重を会議の中で貫くとは何かという2つの側面からの探究が必要になると思っている。現在進行形のこれらの方針も含め、この23年間の党組織の活動の変化は、集中中心から民主的運営中心へと軸足を大きく変えるものだった。

共産党の一員として、活動してきて、民主主義の深さと重要さというものを折に触れて痛感してきたのが、この23年間だった。
今の党の規約は、支部が職場、地域、学園で党を代表すると規定している。この規約の規定は、それぞれの現場で奮闘する党組織が、自らの頭で考え、自らの決断で方針を決めるべきだという考えを示している。
第三十八条 職場、地域、学園などに、三人以上の党員がいるところでは、支部をつくる。支部は、党の基礎組織であり、それぞれの職場、地域、学園で党を代表して活動する。」
地方議会でも同じ。議員は、自らの責任で党を代表している。個人の認識は、ものごとを全面的にリアルに見られない狭いものであり、誤りを犯す可能性もあるから、そうならないよう集団で会議を開いて、互いに学習し合い意見交換している。もちろん一致しないことはある。
地方議会での対応で言えば、党中央の方針や政策に全てが書かれているわけではない。議案に対する対応は、自分の頭で考え、調べ、研究し、答えを出すことの方が圧倒的に多い。ぼくは、赤旗や党の論文に書いていることを、書き写して議会の原稿を組み立てることはしない。自分の実感のこもった言葉で書かないと主張は生きないと思っている。

党の方針は、全国的な性質の問題については党の全国方針を守っている。それは政党による国民に対する責任だ。でも実際はすごく幅がある問題なので、極端な意見の違いがないと変なことにはならない。もし意見がある場合は、直接中央委員会に意見を述べて、回答を得ることができる。意見を述べることは、どの組織に対しても行える。地方的な性質の問題は、自治的に処理する。この分野の問題に対し、中央委員会は責任を持たない。
第十七条 全党の行動の統一をはかるために、国際的・全国的な性質の問題については、個々の党組織と党員は、党の全国方針に反する意見を、勝手に発表することをしない。
 地方的な性質の問題については、その地方の実情に応じて、都道府県機関と地区機関で自治的に処理する」

こういう仕組みがあるので、委員長を党員の直接選挙で決める必要はないと思っている。指導機関は、階層的、限定的に組織に対して責任を負っている。志位委員長が、現場の党支部や地区委員会に指揮・命令するようなことは一切ない。これが方針だからこの方針に従えなんていうことはない。組織に対して指導と援助に入っても「必要な助言をおこなうことがでる」だけで指揮命令などはできない。
党規約の「第11条(六) 幹部を系統的に育成し、全党的な立場で適切な配置と役割分担をおこなう」を踏まえて、党内の任務は単なる役割分担であって、身分を表すものではないと説明されている。志位委員長が、何らかの特別の権限をもっているということではない。この点も組織としては面白い。この規定はなかなかいい。ここまで言い切っている組織は少ないと思われる。

民主的な運営を行って、決めたことはみんなで実践するという組織のルールは、実際は日本にある多くの組織のルールになっている。これを日本共産党は、民主集中制と呼んでいる。この組織方針に組織を硬直化させる問題点はない。
党中央の決定文書や政策や綱領と規約だけで党組織の全ての実態が分かるものではない。それはどんな組織も同じだろう。ルポルタージュのように現場に入って、実際にどうなっているのかを広く丹念に調べないと、人間が動かしている組織というものは分からない。
組織の姿を見極めるためには現場に行かないと、本質には迫れない。


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雑感

Posted by 東芝 弘明