学問の自由と批判的精神

雑感,教育

全国学力テストの結果が発表された。応用力が弱いという結果になっている。
応用力のある本物の学力を身につけるためには、物事を肯定的に理解しつつ、同時に批判的にとらえるものの見方、考え方を身につけることが必要になる。
日本の教育は、この点で極めて大きな、根本的な問題を抱えている。

体制に従順な人間を育成し、企業の役に立たせたいという思惑と
真に科学的なものの見方、考え方とは根本的に矛盾している。
科学的なものの見方、考え方には、タブーを怖れない真理探究の精神が最も重要になる。

原発問題を例にとってみよう。
安倍総理は、福島原発事故を引きおこした国、日本だから、あの事故から教訓を導き出して、世界一安全な技術をもっている。というような意味のことを言って、原発を輸出し再稼働しようとしている。
本当にそんなことをしていいのかどうか。

見極めるために具体的に問いを立ててみよう。

原発はどのような仕組みで電気を発生させているのか。
原発の技術は安全か。軽水炉とは何か。沸騰水型原子炉と加圧水型原子炉との違いはどこにあるのか。
福島原発の事故はなぜ起こったのか。地震が原因なのか、津波が原因なのか。
そもそも、なぜメルトダウンが発生したのか。
事故による放射能汚染はどうなっているのか。
国のいう安全基準とはどのようなものなのか。
除染とはいったいどういう作業なのか。
福島原発事故の教訓によって、どのような改善がなされたのか。
なぜ原発を輸出しようとしているのか。
原発が1基も動いていないのに電気は十分足りている。どういう仕組みで電気は作られているのか。
福島原発事故の対策費はどこから出ているのか。なぜ東電は経営破綻しないのか。
被災者はどのような状況にあるのか。補償はどうなっているのか。将来の見通しはどうか。
なぜ国は再稼働を急いでいるのか。
新しい安全基準とはどのようなものなのか。福島原発事故のような地震が発生しても原発は大丈夫なのか。
少し考えただけでも、いろいろな疑問が出てくる。科学的なものの見方考え方の出発は、自分で問いを立てて、それを自分なりに調べて検証することにある。

なにものをも怖れない批判的精神。それが学問を発展させてきた。学問は、批判的精神を中心になり立っている。
ぼくが立てた問いは、自然科学と社会科学にまたがっている。自然科学とともに社会科学の力が問われている。
自然科学は、自然の法則を明らかにする学問だが、人間の社会で生きている限り、自然科学も社会に深く左右される。

安倍さんの推進している原発輸出問題も自然科学と社会科学がクロスしている。ぼくがざっと考えてみた問を解き明かすだけでも、安倍さんの原発輸出問題の是非は見えてくる。
もちろん、学問の真理を探究するためには、自然や人間を大切にする理知の精神が必要になるが、学問を探究するためには、理知の精神に立って、徹底的にタブーを取り除かなければならない。このタブーの中には、日本政府や文部科学省の公式見解も含まれる。そういうものを突破して、学問の自由を追求しないと物事の真理には到達できない。

日本の場合、現在の社会体制に順応することと、学問の自由、学問の批判的精神は真正面からぶつかり合っている。文部科学省は、歴史学の上でも、政治学の上でも、道徳規範の問題でも、一方的な見解を子どもたちに押しつけている。その最たるものが、君が代と日の丸だ。真の学問は、この問題を批判的に取り扱うことを求める。真理探究にとって、タブーは最大の障壁になる。

学問の自由と批判的精神の溢れる学校を小学生の時代から作り上げてこそ、応用力をもった子どもを育成できる。そういう子どもたちが、若者になれば、当然のこととして、政治や社会のことに対し、真っ直ぐに疑問を抱き、真理を探究するようになる。そうなれば、本当の意味で国民主権が国民の中に根をはって、現在の変な政治体制は、終焉を迎える。新しい政権は、国民主権に根ざしたものになる。
政府や経済界は、社会体制に従順でありながら、自分の専門分野では批判的精神をもちタブーを怖れず立ち向かう人間を育成しようとしている。こういう問題の建て方は、根本的に誤っている。誤っているだけではなくて、政府が望んでいるような人間はなかなか誕生しない。

人間は自然科学と社会科学という2つの分野に学問の領域を広げてきた。この2つの分野の学問は、政治や経済、社会体制から逃れられない。だからこそ、自然科学でも社会科学でも、学問の自由と批判的精神という武器が必要になる。この2つの武器は、ときには体制に立ち向かう大きな力になる。
戦争は、自然科学と社会科学の両方の発展を著しく阻害する。真理探究という学問的精神は、戦争する国家にとっては忌々しいものになる。

子どもたちに学問の自由を。
子どもたちに批判的精神の保障を。
この2つの精神は、日本の未来を左右する。


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雑感,教育

Posted by 東芝 弘明