恵庭の農畜産物直売所のもうかる秘密

雑感

IMG_4247

かのな
かのな

恵庭の道の駅花ロードえにわには、併設される形で恵庭農畜産物直売所「かのな」がある。
10月30日、道の駅の説明と質疑応答の後、「かのな」の説明を受けることになった。説明をしてくださったのは、「かのな」の店長だった。この方は元JAの職員だった方だ。冬、雪に閉ざされてしまうので営業をしているのは11月半ばまで、冬がすんでオープンされるのは4月に入ってからということになる。営業日数は365日のうち、226日程度。この日数で平成25年度の販売額は3億6600万円を超える。平成26年度は4億円を超える見通しだという。オープンしたのが平成19年。以来7年間ずっと右肩上がりで販売額を伸ばしてきた。平成25年度の一日の平均販売額は、162万円、年間来客数(レジで買い物をした人)は29万5000人、一日平均来客数は1306人、1日平均客単価は1241円だった。
お客さんが買う商品数は6.3品だったという。スーパーの買い物品数は10から12だというので6割ないし半分程度だ。従業員はパートがほとんど。店長を含めて14人が働いている。

賢いなあと思ったのは、商品の並べ方だ。
お客さん本位にトマトはトマト、ぶどうはぶどうという形で農産物ごとに集められて並べられている。この当たり前に見える並べ方に、深い哲学があった。
産直の販売所には、会員に場所取りをさせているところがある。この方法だと場所の確保でまず競争が起こる。できるだけ早い時間に順番をとらないと、いい場所がなくなってしまう。このやり方では、トマトやぶどうが生産者ごとに別々の場所に並べられる。生産者のコーナーはよく分かるけれど、さまざまな場所に農産物が散らばってしまう。
生産者ごとに並べると小さな事件が発生する。事件は、お客さんの心理によって必ず起こる。トマトを買い物カゴに入れた人が、それよりも美味しいと思われるトマトを発見すると、買い物カゴからトマトを出して交換する。買い物カゴから出されたトマトは、よく売れるトマトの横に置かれる。つまりAさんのトマトの所にBさんのトマトが集まってきて、Aさんのトマトが売れていく。Bさんのトマトは売れず、Aさんのところに移動しただけ、という形になる。この事件を解決するためには、売れないBさんのトマトを元の場所にせっせと運ぶ人が必要だ。
「かのな」は、こういう並べ方はしないで、同じ農産物を同じ場所に置く。商品を並べる権限はお店にある。お客さんが買い物をしやすいように商品を並べるというのは、スーパーの鉄則。これを貫いているということだった。店長の話は深かった。
レジを通過する商品は、瞬時に集計され、農家の携帯メールに販売状況が1時間ごとに通知される。農家は、売れ筋の農産物を補充する(この方式は、全国で採用されているらしい)。見ていると12時前に農産物を運んできた人がかなりいた。
商品の棚も高く積み上げるような方法は取らず、お年寄りでも買い物がしやすいように、という配慮が行われていた。

もう一つ大事だなあと思ったのは、70人の会員からの仕入が62.8%、共計品仕入(地元農産物でありながら会員だけでは確保できない産物、アスパラガスやトウモロコシなど)が2.1%あり、さらに業者仕入(全国の農産物を市場から確保)が31.9%あったことだった。恵庭市の住民がお客さんの53.7%、あとは北海道の近隣の方々がお客さんだった。
集客のカギを握っているのは、業者仕入れにある。地元の農産物だけでは食材をまかなえないのは明らか。どうしても偏りが生じる。お客さんは、その場所に行ったらできるだけ買いたい品物がそろっているのを望む。何軒もお店を梯子をして買い物をすることをあまり好まない。南部の梅、紀北川上の柿なども仕入れているという話だった。
「業者仕入れが大事なのではないですか」
ぼくはそう尋ねた。
「そのとおりです」
明快な答えが返ってきた。水を得た魚のような答弁だった。
かつらぎ町で産直を行う場合も、地元農産物だけに特化したような品揃えでは、うまく行かない。地元のお客さんをつかむためには、全国の農産物も加工品も取り扱う必要がある。そうしないとワン・ストップの販売はできない。その際に、どのようなこだわりを持って農産物や加工品を確保するのか。そういうことを真剣に考える必要がある。

コンビニがなぜ重宝がられているのか。コンビニに行けば、公共料金も払える、振り込みもできる、買いたい商品がコンパクトな店に集められており、一通りのものがそろう。小さいお店だけれど便利なコンビニ。これがコンビニの良さだろう。農産物直売所も、このような考え方から学ぶ必要がある。

「かのな」のマージンは20%からはじまった。このマージンは、売り上げの2割をお店に渡すというものだ。それが7年目の25年度は10%になり、年間の決算を打った後、会員に対してさらに5%の利益還元を行ったと店長は説明した。マージンはたったの5%。これは驚異的な話だった。
ここの道の駅は1日の交通量が対向車線も含めて3万6000台ほど。ぼくたちが行ったときも駐車場にはかなりの車が止まっていた。
かつらぎ町の物産販売。これらの事を学んで成功するかどうか。取り組みが問われている。


にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 和歌山県情報へにほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へにほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへブログランキング・にほんブログ村へ

雑感

Posted by 東芝 弘明