液晶・プラズマテレビは省エネでない2

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テレビの記事に反響があった。
今回の赤旗報道は、エコ家電ということで、国がエコポイントを付与して販売を促進している中で発覚したので、次第に衝撃は大きくなると思われる。
JIS規格どおり検査をして、省エネになっているといってもそれは通らない。
特に国が付与したエコポイントは、実際の消費電力が小さくなることを評価して、付けたものだから、販売を促進すればするほど、実際の消費電力が増加するということになってしまう。
冷蔵庫と同じ誤りと書いたので、当時の赤旗の記事を引用しておこう。冷蔵庫もテレビも問題はJIS規格にあることがよく分かるだろう。実際の使用で省エネ家電になっていない問題は、冷蔵庫のときに分かったはずなのに、JIS規格が改まらないところに、JISが抱えている問題がありそうだ。

2006年6月29日(木)「しんぶん赤旗」
2万号迎える 「しんぶん赤旗」
冷蔵庫電気代
国と業界に適正表示要求
  “電気代が七分の一になるので買い替えた方がお得です”などと、家電メーカーと国が大宣伝して、毎年約五百万台もの冷蔵庫が販売されてきました。この宣伝が大うそだったことが本紙の追及で明るみに出て、経済産業大臣が制定している消費電力量のはかり方を決めるJIS(日本工業規格)が五月から全面改定されました。
 この結果、年間電気代四千円といって販売していた機種は、実際は一万八千円だったなど、おどろくべき消費者だましの実態がでてきました。
 五月中旬から、改定された数字が入った家電メーカーのカタログが店頭に並びました。年間消費電力量は、同一機種なのに軒なみ数倍にはねあがっています。(写真参照)
 この問題の追及は「新しく冷蔵庫を買ったが電気代が高すぎる。電気代表示がおかしい」という消費者のメールから始まりました。
 取材をすすめると、消費電力をはかるJIS規格が操作されていることがわかりました。最も電力を使う各種ヒーターのスイッチを切っているなど冷蔵庫の機能を果たさない状態で電力量を測定していたのです。
 経済産業省の外郭団体「省エネルギーセンター」も、このでたらめなデータをつかい『省エネ性能カタログ』までつくって、「省エネになる」「電気代が安くなる」と買い替えを大々的にすすめてきました。
 本紙は昨年六月十日付で「消費電力 表示の3倍 冷蔵庫カタログ実態と違う」と第一報。つづいて「削減温暖化ガス数値上積み 省エネ達成率過大に表示」などのキャンペーンで、国と業界の責任を追及する記事を次々と掲載。全国的な環境団体、消費者団体、各地の自治体が連名で国と業界団体に適正表示を求めるなど、大きな批判世論が巻き起こりました。
 省エネのために冷蔵庫などの買い替え促進に取り組んできた市民団体・自治体が相次いで冷蔵庫への省エネラベル表示中止をきめるという事態に発展。メーカーも国も大うそを是正せざるを得なくなったのです。
 告発メールを寄せた埼玉県三郷市の渡辺豊さん(59)は、なぜ本紙にメールしてきたのか、次のように語っています。
 「家電メーカーの宣伝をのせている新聞にもちこんでも握りつぶされるんじゃないか。『赤旗』さんなら、くらしにかかわる小さなことでも取り上げてくれるんじゃないか。家電メーカーの広告をもらっていないし、焦点をぼかさず、真実を報道してくれると思ってメールしたんですよ」
 実際、大手家電メーカーの全面広告が紙面を埋めている一般紙は沈黙。消費者をあざむく業界、国の問題点を指摘することもなければ、環境団体などの動きも黙殺してきました。(稲村 七郎)


冷蔵庫の場合は、JIS規格に入っていない機能をわざわざ取り除くような形で測定したようだが、JIS規格に合致している機能だけで消費電力を表示すればいいということになっているので、こういう操作がおこなわれたということだ。
今回の液晶・プラズマテレビの場合は、次のようになっていた(昨日紹介した赤旗の記事から抜粋)。

「液晶・プラズマテレビの場合、白、黒、カラーバーなどの静止した画面、付加機能類のスイッチを切るなどの条件で測定していました。この測定方法は、経済産業大臣が制定するJIS(日本工業規格)によるものです。」


白・黒・カラーバーの静止した画面というのは、昔よくテレビ放映していない時間に放映されていたカラーを調整するためのテストパターンの画面のことだろう。「付加機能スイッチを切るなどの条件」というものの詳細が知りたいが、これはおそらく、JIS規格にない機能については、すべて取り除いて測定したということだと思われる。
このやり方は、冷蔵庫の場合と非常によく似ている。冷蔵庫の記事は、2006年6月末。冷蔵庫のJIS規格が見直されたのだから、その時になぜ古いJIS規格の全面的な改定が行われなかったのだろうか。3年も経過しているのにJIS規格の全面的な見直しが行われていないのは、どうも腑に落ちない。
非常に長くなるが、JIS規格について、日本工業標準調査会の説明に耳をかたむけてみたい。

工業標準化について
標準化(Standardization)とは、「自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化すること」ということができます。 また、標準(=規格:Standards)は、標準化によって制定される「取決め」と定義できます。標準には、強制的なものと任意のものがありますが、一般的には任意のものを「標準(=規格)」と呼んでいます。
したがって、工業標準化とは、工業分野における標準化のことであり、我が国では, 国が定める工業標準としてとして日本工業規格(JIS)が制定されています。
工業標準化の意義は、具体的には、自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化してしまう「もの」や「事柄」について、経済・社会活動の利便性の確保(互換性の確保等)、生産の効率化(品種削減を通じての量産化等)、公正性を確保(消費者の利益の確保、取引の単純化等)、技術進歩の促進(新しい知識の創造や新技術の開発・普及の支援等)、安全や健康の保持、環境の保全等のそれぞれの観点から、技術文書として国レベルの「規格」を制定し、これを全国的に「統一」又は「単純化」することであると言えます。
これら工業標準化の意義を「規格」の機能(働き,作用)に着目して整理すれば、次のように説明することができます。
(1)経済活動に資する機能
1. 製品の適切な品質の設定
工業標準化は、製品の品質に関し一定の水準を与えることができる。この場合、製品の品質に係る工業標準化は企業ニーズに重点を置いたものとするのではなく、使用者、消費者ニーズ及び公共の利益等社会ニーズについても十分に配慮した上で品質を規定する必要がある。更に、安全性や環境保護の分野では強制法規の技術基準によって規制されている場合が多く、社会ニーズへの対応の観点から、工業標準化は、これらの技術基準との技術的な連携に留意する必要がある。
2. 製品情報の提供
工業標準化は、商取引において売り手と買い手の双方の便益に資する形で、製品の寸法や性能・成分・強度といった品質等の製品の選択に必要不可欠な情報を提供し、取引上のコスト削減に資することができる。
3. 技術の普及
製品の性能や試験方法等について行われる工業標準化は、その技術について広く産業活動等への利用/普及を促進し、その結果、類似の技術開発の無用の重複を避け、生産性を向上し、更なる技術向上に労力を向ける等技術の発展に資することができる。
4. 生産効率の向上
工業標準化により、製品の種類、分類、性能が「単純化」され、生産活動における量産化が可能となり、スケールメリットによる価格低減が図られ、生産効率の向上に資することができる。なお、近年の生産技術の高度化は、消費者ニーズ等から製品の「多様性」を許容する方向に向かっており、この場合、工業標準化は、製品の「多様性」も許容しつつ、必要な「統一」や「単純化」を行うといった技術的な調整を行い柔軟性のある一定のルールを構築するツールとして活用することができる。
5. 競争環境の整備
製品の性能等の試験方法及び評価方法の工業標準化は、製品間の性能等の客観的な比較が可能となり、更に、技術の基礎的、共通的事項を統一又は単純化することにより、真に技術的な発展が期待される技術要素について競争を促進することができる。
6. 互換性・インターフェースの整合性の確保
部品相互の組み立て、部品の交換に際し、互換性が確保されていないことによる組み立てや交換の支障は非常に不便である。工業標準化は、このようなボルト及びナット間や、蛍光ランプ及び照明機器間の互換性を規定し、部品等の容易な交換を可能とすることができる。更に、近年では、コンピュータシステム間のインタフェースの標準化、情報、FA(Factory Automation)、電子商取引等の分野での互換性、相互適用性等インターフェースの整合性の確保を工業標準化によって実施することが重要となっている。
(2)社会的目標の達成手段としての機能
工業標準化は、"産業競争力の強化"、"環境・安全・権利の保護"、"省エネルギー・省資源の推進"等の政策目標の遂行手段として、適切な場合、強制法規の技術基準による規制という手段を講じることなく、主体的に企業、消費者の行動を促進することができる。
(3)相互理解を促進する行動ルールとしての機能
工業標準化は、関係者(製造業者、流通業者、使用者、消費者、研究者等)間で技術的要求事項、技術データ等を相互に伝達(コミュニケート)する手段として、用語、記号、計量単位、試験評価方法、生産方法、品質、安全度、仕様書のフォーマット表示等について技術基盤を統一することができる。更に、近年は国際標準化を視野に入れた工業標準化として、試験評価方法や消費財に関する仕様書、マーク表示、各種マネジメントシステムの指針等が重要となっている。
(4)貿易促進としての機能
貿易がグローバル化し貿易量も増大している一方で、各国の国家規格、強制法規の技術基準がそれぞれ異なっている場合はこれらの国家規格や技術基準の相違が貿易を阻害してしまう可能性がある。各国の強制法規の技術基準についてはそれぞれ整合させることは困難であるが、このような場合、工業標準化が自由貿易の維持・発展を図る目的として活用される。すなわち、各国の国家規格等が、国際標準化機関(ISO/IEC)が国際的なコンセンサスに基づいて制定する国際規格と整合化を図り、更に、このような国家規格を強制法規の技術基準が引用/採用することで達成される。


JIS規格は、以下のようなシステムで認可される。
「日本工業規格。工業標準化法により主務大臣が定める,鉱工業品の種類・形状・寸法・構造などに関する規格。日本工業標準調査会が規格制定を行い,通産省が認定する。認定した製品にはジスマークがつけられる。」
日本工業標準調査会は次のような組織だ。
「工業標準化法(昭和24年6月1日法律第185号)第3条第1項の規定により経済産業省に設置される審議会。英語名称は、Japanese Industrial Standards Committee で、略称は JISCである。」

つまり、JIS規格の管理は、経済産業省がおこなっているといっていい。地球温暖化問題で、日本政府は、最近、05年度を起点にして2020年には温室効果ガスの排出をマイナス15%にすると発表した。このマイナス15%という目標は、京都議定書で日本も批准した1990年比という基準年に換算し直すとマイナス8%にしかならない。90年比でマイナス8%という目標は、現在の省エネ技術で達成できるものだ。これは、国民生活に省エネ家電を普及したり、エコカーを普及すれば、マイナス8%は達成できるというものだが、省エネをコントロールしているはずのJIS規格が、テレビのような基準で定められているのであれば、このマイナス8%も怪しくなる。
温室効果ガスの80%は、企業が排出している。ここにまったく規制をかけず、省エネ家電だといわれるJIS規格も企業に非常に甘いというのであれば、国民生活に関わる工業製品の規制もザルで、企業の生産部門の規制も大ザルだということになりかねない。
テレビのJIS規格の古さは、日本の工業に対する規制のあり方、日本政府が企業に対して、どんな姿勢でのぞんでいるか、このすべてを物語っているものなのかも知れない。


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Posted by 東芝 弘明