黙って賛成の議会、通告なしの質疑も否定

雑感

もうすぐ全員協議会がはじまる
もうすぐ全員協議会がはじまる

後期高齢者医療広域連合の議会が開催された。ぼくは、全員協議会の席上で、質疑について通告した人の後で通告しなかった議員についても質疑を認めるべきだという提案を行った。

提案の際、議長に提出した文書が、全員に配布されたので、それを読み上げて提案させていただいた。
文書は次のとおり。

和歌山県後期高齢者医療広域連合議会
議長 榎本 喜之 様

質疑の通告制について

平成27年2月9日
和歌山県後期高齢者医療広域連合議員 東芝 弘明

貴職におかれては、ますますご清栄のことと存じます。
さて、平成26年7月28日の広域連合議会の全員協議会において、質疑は、質疑通告をしないとできないことが申し合わされました。この件について、従来のように質疑通告のない議員に対しても、通告者の質疑終了後、質疑ができるようにしていただきたく、申し入れを行うものです。

県議会や市議会は、委員会主義を採用している関係もあって、本会議における質疑については、通告制を採用している議会が多いという特徴をもっています。基本的に通告制を採用している議会でも、通告していなかった議員が、通告者の質疑終了後、質疑を認めている議会も存在します。和歌山県内では、委員会審議でも通告制を採用している議会、委員会では通告制を採用していない議会など、さまざまな状況があります。ただし、委員会は本会議とは違って、質疑の制限回数がないのが基本です。議員数の少ない町村議会では、本会議主義を採用している議会が多く、質疑の通告制を採用している議会は少ないという特徴をもっています。

本広域連合議会は、委員会の存在しない議会であり、審議は全て本会議で行われます。限られた時間内で審議をどのように保障するのかという課題は、議会運営の根本に関わる問題です。
本広域連合議会は、通告制を採用しながらも、質疑の持ち時間を保障していないので、1議案に対し3回の質疑しかできません。地方議会の基本ルールである3回の質疑では、問題点を深く明らかにし、結論にいたることには限界があります。
質疑にこのような制限のある議会で、通告していない議員の質疑を保障することには、深い意味があります。通告者の議員の質疑を聞いて、「今の質疑に対し、私ももう少し問い質したい」「他の角度からお聞きしたいことがある」というように、質疑を行いたい気持ちになるのは当然のことです。
質疑を通告者のみに限ってしまうと、住民の代表として、質疑の中でさらに問いたださなければならない問題が生じても、疑義を質せないことになります。このような事態は、傍聴者を含む県民からいえば、「どうして議員はだまっているのか?」ということになって、納得が得られないのは明らかです。

完全なる通告制を採用するのであれば、通告者に対して一定の質疑時間を保障し、一問一答形式に移行すべきです。質疑は3回までという制限を設けるのであれば、通告なしの質疑を認める必要があります。
全国町村議会議長会が編集している『議員必携』は、発言を取り扱ったページで、通告制は望ましいとしながらも、「通告はしないで、発言希望者が起立して「議長」と叫び、自己の議席番号を告げる方法がある」と書き、通告制をとらない発言を認めています。本広域連合議会が、以前採用していた方式は、この『議員必携』の立場に立ったものです。

全国の市町村議会では、議会改革がさかんに行われています。住民に開かれた議会をつくることに主眼をおいた議会改革では、議会運営上の見直しもさかんに行われ、見直しの中では、議員相互の意見交換が重視されています。
議会形式でない普通の会議の中には、他人の意見を聞き、その意見に触発されて意見交換がなされ、実りある結論を見いだそうとするものがあります。議会も広い意味では会議そのものであり、自分以外の議員の質疑に触発されて質疑を行うのは、極めて自然な会議のあり方だと思われます。

以上が通告していない議員による質疑を認めるべきだという私の提案です。建設的な意見交換がなされ、従来の方法に運営を戻されるよう重ねて要望いたします。

何人かの方が発言して採決していただいた。結果は3対多数(2〜3人欠席していたので24人か?)で否決された。昨年の7月の議会で通告しない議員の質疑は認めないことが申し合わされたので、ぼくは、議論の中で今回は通告が必要だという形にして、次回からは通告しなかった議員も質疑できるようにしてはいかがか、と重ねて提案した。
「7月に異議なしという形で決めたのだから」という発言があり、これが全体を動かしたようだ。

後期高齢者医療広域連合の議会には、議会運営委員会が存在しない。したがって、全員協議会が議事運営について協議を行う場になっており、なかなか変則的な形になっている。

今回、通告していたのは、ぼくだけだったので、今日のこの決定は、「私たち議員は意見があったとしても、質疑はいたしません」ということを、自分たちで再度確認するものになった。
議会というのは、議案を審議するところだが、ただ単にほとんど賛成するためにだけ出席しているというのでは、本当に議員としての役割を果たしているのだろうか。通告していない議員の方も質疑できるように、という提案は、「みなさんも質疑してくださいね」というものだったのだけれど、みんなでこの提案を否決してしまったので、私たちは、今日の議会では発言しませんという態度を取ったことに等しい。

保険料の9割軽減、8.5割軽減、低所得者の所得割の5割軽減、元被扶養者の方の9割軽減という後期高齢者の軽減特例が28年度末で廃止されることに対し、存続を求める請願が提出され、ぼくが紹介議員になった。趣旨説明はぼくがおこなった。議員同士の質疑については通告制が取られていないので、趣旨説明のときに、質疑を求めた。議員同士の質疑は、通告制を取らないということは、当局は答弁の準備があるので通告していただきたい、議員同士はご自由にやり取りしていただきたいというような感じだろう。
この請願に対して、質疑も討論もなかったのに、請願は2人の賛成だけで否決されてしまった。
この特例廃止によって6割程度(おそらく和歌山県は60数%だと思われる)の人の保険料が2倍から3倍、多い人で10倍負担が増えることになる。
現時点では、特例軽減の廃止はまだ決まっていない。27年の新年度は、現行のままだ。したがって、現時点できわめて大事なのは、国に対し意見書を出して存続の意思を強く示すことだろう。こういう情勢下で、この特例軽減の廃止に対し、諸手を挙げて賛成するというのは、どんなに考えても納得がいかない。予算質疑の中で連合長は、特例軽減については、存続を求めたいという姿勢は変わっていませんと答弁した。この答弁からしても、議員の取った態度は、極めて冷たいものだと言わなければならない。

予算に対する反対討論を載せておこう。
この反対討論に対し、賛成討論はなかった。黙って賛成。これが後期高齢者医療広域連合の議員の多数の態度だった。傍聴人の方々は、このような議会をどう感じたのだろうか。

平成27年度和歌山県後期高齢者医療広域連合
特別会計予算に対する反対討論

一般会計と特別会計は、後期高齢者医療制度の一連の会計なので、2つの会計に対する反対討論については、特別会計のところで合わせて行います。今年度は、社会保障の制度改悪が、目白押しになっている中での予算審議となりました。私は、近未来に予定されている負担増を踏まえて、今年度の会計を見ることが問われていると思います。

昨年の10月15日、第82回社会保障審議会医療保険部会は、後期高齢者の保険料軽減の特例を平成28年度末で廃止する方向を打ち出し、さらに年明け早々、段階的に廃止する医療制度改革骨子案を発表しました。実施されれば、制度の寿命はあと2年間となります。影響を受ける高齢者は865万人、半数以上の被保険者が、2倍、3倍の保険料負担を強いられることになります。
軽減特例の廃止によって削減される予算は810億円です。予定されている「新・成長戦略」における法人税減税はマイナス5%で2.5兆円にのぼります。税率の1%分は5000億円。この6分の1の財源を確保すれば、負担増は回避できます。8%に増やした消費税増税分は、年間で8兆円。810億円を削除すべき財政的根拠はありません。軽減特例の廃止は、まったく納得のいかない負担増ではありませんか。この理不尽な負担増を止めることが、どうしても求められています。

平成28年度は保険料が改定される年度であり、29年度は軽減特例の廃止、消費税増税10%が実施されることになります。頼みの年金は減額が続きます。後期高齢者には、連続的な負担増が待っています。自民党と公明党が与党に復帰して実現したのは、後期高齢者医療制度の存続であり、多大な負担増だったということです。法人には2.5兆円の減税、高齢者には負担増、これが国民国家の取るべき施策でしょうか。
負担増がおこる原因は、75歳以上の高齢者を特別の保険制度に囲い込み、高齢者人口が増えるに従って、医療の負担を実感していただくというこの制度の仕組みそのものにあります。後期高齢者医療制度は、時間が経過すればするほど、高齢者への負担を強いる許しがたい差別と国民分断の制度であり、廃止すべき制度です。

議員は、この制度の矛盾に立ち向かって、高齢者の生活を守るために活動する責任と使命があります。私は今回、質疑の中で、せめて健康診査の内容を充実させ、負担も無料にして健康状態を少しでも維持できるよう改善を求めました。議員は、積極的に予算質疑を行い、さまざまな制度改善を求めてほしい。そこに住民の代表としての議員の仕事がある、このことを最後に訴えて私の反対討論といたします。


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雑感

Posted by 東芝 弘明