スター・ウォーズの38年

雑感

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生み出された映画の生命力を考えていた。念頭には『スター・ウォーズ』があった。
この作品の脚本がジョージ・ルーカスによって書き上げられたのは1975年3月であり、『エピソード4 新たなる希望』の撮影が始まったのは1976年、上映は1977年だった。
ぼくが『スター・ウォーズ』を初めて見たのはビデオであり、たしか『エピソード6 ジェダイの復讐(2004年以降『帰還』に変更)』がビデオ化される前だった。25歳だったのかも知れない。『エピソード4』の映画館上映から7年が経過していたと思われる。

『スター・ウォーズ』の最初の第1作に『エピソード4』というタイトルを入れたのは、ビデオ版からだったという指摘がある。
映画を見た感想で言えば、『スター・ウォーズ』の第1作は、一話完結の話として作ったような感じがする。出演した俳優も有名な人たちではなく、映画がヒットするのかどうかも不確かだったというのが真相に近いかも知れない。
ただ、確かだと思われるのは、ジョージ・ルーカスが、最初から壮大な脚本を作っていたことだろう。壮大な脚本を映画化するときに、一番映画化しやすいところを1話完結という形で作ったのが『スター・ウォーズ』だったのではないか(脚本の最終稿には『エピソード4 新たなる希望ウィルの日誌より』という記述があるという)。『エピソード5』は明らかに次の話に続く終わり方をしている。『エピソード4』の成功が3部作を作ることのできる条件を生み出したということであり、最初のヒットが現実のものになって6話のエピソードを現実化する見通しがでてきたのではないかと考える。ジョージ・ルーカスの思い描いていた構想は、最初から壮大なものだった。構想の実現を阻んでいたのは映画を制作する資金だった、ということだろう。

『エピソード6』である『ジェダイの復讐』を上映したのは1983年だった。これ以降ルーカスは、『スター・ウォーズ』の制作を中断する。当時のSFX(特撮)技術では、ルーカスが思い描いていた作品世界を表現できないというのが、作品の撮影を中断した理由だった。
彼は、『スター・ウォーズ』の興行的成功を受け、監督としての報酬アップを断って、この映画のマーチャンダイジング(販売戦略)の権利の半分を確保する。このことによって、巨万の富が入るようになる。この成功を土台にルーカスは、ドルビーデジタルの映画音響システムの会社、THXプログラムを立ち上げ、やがて映画における映像と音響について絶大な影響を与えるようになる。さらにDVDやBlu-rayなど家庭における映像コンテンツにも絶大な役割を果たす。こういう経緯を見ると、ジョージ・ルーカスは、ビジネスにおける才能が豊かだというのがよく分かる。

SFXの技術の進歩は、コンピューターの発展とともにあった。ルーカスの心を大きく動かしたのは1993年上映の『ジュラシック・パーク』だったらしい。この映画を見て、ルーカスは、『スター・ウォーズ』の新たな3部作を制作することになっていく。
『エピソード1 ファントム・メナス』が上映されたのは1999年だった。『エピソード4』の上映から実に22年が経っていた。
『スター・ウォーズ』は、ジェダイ(騎士)になる前のルーク・スカイ・ウォーカーが反乱軍の一員として帝国に戦いを挑み、次第にジェダイに成長し、敵のシスとダース・ベイダーを打ち倒すまでを描いている。この戦いの中でダース・ベイダーがルークの実の父親であることが明らかにされ、父親もジェダイの一員だったことが明らかにされる。
『エピソード1』から『3』までの主人公は、アナキンス・カイウォーカーだ。アナキンの子どもの頃を描いたのが『エピソード1』であり、アナキンが成長して、やがて暗黒面にとらえられてダース・ベイダーになるまでを描いているのが『エピソード2』と『3』だった。
『エピソード3 シスの復讐』が上映されたのは2005年だった。初上映の77年から28年が経過している。それからさらに10年、今年の12月『スター・ウォーズ』は新たな3部作に向けてその第1作の公開に踏み切る。今年上映される題名は、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』だ。2012年にディズニーがルーカスフィルムを買収し、新しい3部作を制作することを発表し、新しい『スター・ウォーズ』が始まった。ルーカスフィルムがディズニーに丸ごと買収されたので、今後はディズニー作品として世界に配給される。
少し脇道にそれて書いておこう。ルーカスフィルムCG部門にピクサーがあった。のちにピクサーはMacの創業者であるスティーブ・ジョブズに買収される。ジョブズは、買収したピクサーによって経営的に成功し、それを基礎にしてアップルに復帰し、無収入でCEOに就任する。ディズニーは、結局ルーカスが作ったピクサーもルーカスフィルムも手に入れたということだ。
ルーカスは、自分の手に入れた富を慈善事業であるギビング・プレッジに賛同し、資産の大部分を寄附することを表明している。

1977年の映画上映時にすでに壮大な構想を持っていたことに心が動く。何度かテレビの再放送を見たときに『新たなる希望』の映画の最初に『エピソード4』と画面に出たのを見て鳥肌が立つような感動を覚えたことがある。すでに6部作が完成していたときのことだった。

ほぼ40年の歴史をもつ『スター・ウォーズ』のことを考えると、映画の生命力について、書いてみたくなった。しかし、息の長い映画というものは、『スター・ウォーズ』だけとは限らない。形は色々。監督と俳優がどんどん入れ替わりながら作り続けられている『007』のシリーズ、何度も何度も作り直される『スーパーマン』や『スパイダーマン』、連作として作品化されている『ターミネーター』など。娯楽映画、エンターテインメント作品、ヒーロー物だといわれているような作品だが、これらの作品が持つ生命力は、映画史のかなり大きな部分を占めている。巨費を投資し作り続けているということは、それだけ多くの人々に受け入れられてきたということでもある。

多くの作品群の中で『スター・ウォーズ』は、壮大なサーガ(年代記、英雄伝説)に基づく作品という点であまり他に例を見ない(似ているのは『ハリー・ポッター』だろう)。大きな物語を40年近くもかかって映画化する。そこに映画への執念を感じる。


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雑感

Posted by 東芝 弘明