マイナンバー制度で個人情報は確実に流出する

雑感

syaka

選挙の時に、何人かの方が、「私の名前と住所をどうして手に入れたのか」という問い合わせがあった。いずれも、「名簿から削除して欲しい」という意見だった。日本共産党のことを嫌っての電話だった。
公職選挙法は、選挙人名簿(有権者名簿)の閲覧を認めている。名簿の活用の仕方には、政治活動(選挙運動を含む。)となっている。
規定はつぎのとおり。

(登録の確認及び政治活動を目的とした選挙人名簿の抄本の閲覧)
第二十八条の二  市町村の選挙管理委員会は、選挙の期日の公示又は告示の日から選挙の期日後五日に当たる日までの間を除き、次の表の上欄に掲げる活動を行うために、同表の中欄に掲げる者から、選挙人名簿の抄本を閲覧することが必要である旨の申出があつた場合には、その活動に必要な限度において、それぞれ同表の下欄に掲げる者に選挙人名簿の抄本を閲覧させなければならない。

選挙はがきが届いたので驚いて電話がかかってきたということだ。
政党や候補者が、事前に選挙人名簿を閲覧し、手書きで書き写して名簿を作る努力を行い、有権者に選挙はがきなどを送る行為は、法律によって保障されている。がんじがらめの公職選挙法において、この制度は、有権者に候補者の主張をきちんと届ける正当な方法になっている。
この問題と、電話をかけてきた人のように、「送らないで欲しい」という要請に応えることは当然両立している。電話があった人については、書き写してきた名簿から郵送しない趣旨のことを明記して、今後は送らないという措置をとったり、名簿から消したりした。

最近は、自宅に表札を掲げない家も増えている。誰が住んでいるのかどうかも分からない。つき合いたい人だけつき合うというような形だろう。
こう言う方々の中には、日本が極力個人のプライバシーを守る社会になっているという誤解と錯覚がある。
個人情報の保護という点でいえば、個人情報保護法を守る責任のある組織は、5000人以上の名簿を管理している組織に限られている。個人の情報を集めて、それを名簿化し販売することは禁じられていない。
たとえば学校。生徒数がものすごく減少しているので生徒の個人情報を管理するという点では、この法律の対象外の組織ということになる。もちろん、公立学校が管理している個人情報は、公務員の守秘義務によって管理されているので、個人情報の取り扱いには、細心の注意がはらわれている。
学校で学級の名簿を作成し配布できるかどうか。結論から言えば、作成し配布は可能になる。ただし、作成する時には、学級名簿を作成し配布することに対する同意が必要になる(掲載に同意しない方がいれば、その方は名簿に掲載できなくなる)。事前に同意が得られていれば、作成と配布に問題はない。学校の中にある同窓会の組織が、同窓会名簿を作成し販売することも、事前に販売することも含めて同意を得ていれば販売も可能になる。

しかし、個人情報保護法は、誤解に基づいて一人歩きしており、個人情報保護ということによって、個人情報は守られているという認識が広がっている。政党や選挙人、候補者となるものが、選挙人名簿(氏名、住所、生年月日、性別を記載したもの)を閲覧し、手書きで書き写し名簿化し活用することさえが、あたかも禁じられているかのような認識をもっている方がいるのも、その一例だと思われる。

この一方で、国はマイナンバー制度の施行を準備している。税と社会保障の情報から出発して、さまざまな個人情報を12桁の番号で管理するというものだ。法律が施行されていないのに、今国会には、マイナンバーの活用範囲を広げる法改正が提出されている。改定案は、預金口座や健康診断・予防接種、中所得者向け公営住宅の管理にも適用拡大するとしている。預金口座への適用は当面任意、制度実施後の2021年をめどに義務化しようとしている。預金口座をマイナンバーに連動する目的は、社会保障給付の資力調査や税務調査などに活用するところにある。税務調査は簡単。税の滞納に対し行政は差し押さえ自由になる。まさに瞬殺、差し押さえが実現する。

現在実施されようとしている中身だけでも、かなりの個人情報だ。この情報には価値があるので売れる。買いたい業者はうじゃうじゃ存在する。市町村の職員やマイナンバーのシステムに関わる業者が、金銭を得る目的で情報を売り渡せば、情報は漏洩する。職員の話では、サイバー攻撃による情報の漏洩は考えにくいという。情報流出の最大の危険性は人間にある。
同時に、このマイナンバーは、すべての事業者に対し従業員情報として管理を義務づける。共通番号法によると、扶養控除や源泉徴収票、社会保険の届け出などに共通番号を記載しなければならない。事業所は、社員やパート・アルバイト従業員だけでなく、その扶養家族、報酬や代金の支払い先の業者などの共通番号を集め、管理させられる。全国のすべての民間事業所がマイナンバーを管理すると、マイナンバーが漏洩する可能性は、無限大に拡大される。すべての事業所は、セキュリティー対策を講じる必要があるのだが、こういうことが実施されようとしていることを、ほとんどの国民は知らない。
事業所から漏れる個人情報には、マイナンバーとともに住所や氏名、年齢、税や社会保険料の源泉徴収の記録や家庭状況まで含まれる。こういう情報がまとまって漏洩すれば、なりすましが簡単に実現できる。なりすましが実現すると、情報の流出は洪水のごとく拡大する。
いったい国は、セキュリティ対策をどう考えているのか。5人ぐらいの事業所でもセキュリティ対策に10数万円の費用がかかるという指摘が「しんぶん赤旗」の記事にあった。すべての事業所が、セキュリティ対策を講じられる保障はどこにもない。事業所の場合は、サイバー攻撃によって情報が盗まれる可能性もあるだろう。このままでは、情報がザルのようにこぼれ落ちる。

個人情報保護が徹底している国だと思っている人が多いのだけれど、その一方で国は、国民の個人情報をどんどん一元的に管理しようとしており、本人よりも詳しく個人情報を把握できる国になろうとしている。すべての国民は、孫悟空のごとく、釈迦の手のひらで踊らされることになる。しかも、情報は、釈迦の手のひらからどんどんこぼれ落ち、日々流出することになる。
個人情報保護をうたい文句にしてきた国が、どうしてマイナンバー制度活用に走ろうとしているのか。ゆくゆくは、こうやって集めた個人情報を犯罪捜査などにも活用できるようにしたいということだろう。戦前、国は特高警察制度を作って国民の監視を強め、この監視体制は、さまざまな法律になって広がり、全国民を監視し、思想動員する体制にまで発展した。その結果、国民運動は徹底的に破壊された。がんじがらめの網の目は、21世紀、装いも新たにマイナンバーという耳障りのよい形で静かに準備されている。問題の危険性をマスコミは指摘しない。便利さを強調しながら特集記事を組んだりしている。

ここからは近未来の話。現時点ではぼくのおとぎ話。このおとぎ話は、グリム童話よりも恐いかも。
犯罪捜査のためにマイナンバーを活用するという次元まで到達したときに、国民監視の網の目は徹底的に確立する。国家秘密法案などの法律で国民を監視するためには、マイナンバー制度が必要になるという時代が、やってくる。戦争参加への道をひた走る安倍政権の暴走を止めないと、「他民族を抑圧する民族は自由ではあり得ない」というエンゲルスの指摘が現実のものになる。
すべては繋がっていく。自衛隊員が海外でアメリカの軍事作戦に協力することが国会で審議されようとしている。命令に背いた自衛隊員を罪に問う準備まで法案の中に盛り込まれようとしている。自衛隊員の管理。マイナンバー制度を活用したいですよね。この制度を活用できれば、自衛隊員の管理は格段に進歩する。自衛隊員の家庭事情、預貯金情報、健康状態などが手に入れば、隊員の管理は今よりもたやすくなる。貧しい人間から戦場へ、お金をちらつかせて戦場へ、ということも実現できる。もしかしたら国は、よだれをたらしてそうなることを夢見ているのかも知れない。


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雑感

Posted by 東芝 弘明