『誕生』

雑感

この歌をはじめて聞いたのは、飲み会のカラオケだった。同級生の彼女が歌う中島みゆきさんの『誕生』に心が震えた。はじめて聞いたこの歌は、その日のカラオケのなかで一番みんなの気持ちの中にいい印象を残したのように思われた。
彼女は、自分の娘が中学校を卒業するときに、保護者代表のあいさつの中で「生まれてくれてありがとう」という言葉を伝えたという。この言葉は、会場の人の涙を誘った。

人は、年齢を重ねると人との別れを経験する。失うことの悲しさを知っていく。失うことの悲しさを知ると生まれてきたことの意味の深さが分かってくる。中島みゆきさんの人生が歌詞に深く折り込まれている。中島みゆきさんは、この歌を力強く歌っている。歌を聴いていると「生まれてくれてありがとう」というメッセージが強く響いてくる。
この『誕生』をBEBEさんというシンガーソングライターがカバーして歌っている。透明感のあるきれいな声で歌う『誕生』もいい。澄んだ透明感のある景色の中に命がきらめいている。

3月は卒業式の季節。小さかった子どもたちが、小学校を卒業したり、中学校を卒業したりする。大きくなった子どもたちの背中に、「生まれてくれてありがとう」という言葉を重ねている人は多いだろう。この言葉は、親だけのものではない。見守ってきた人々みんなが、小さかったり大きかったりするが、この言葉を胸の中にもっている。
ぼくは議員なので、小学校と中学校の卒業式に出席させていただいて、子どもたちとお父さんやお母さんの姿を見ることになる。ぼくも、「生まれてくれてありがとう」という言葉を卒業生に贈りたい。
卒業生の前には、まだ切りひらかれていない道があり、その道はまだ見えない。道は、毎日、生活している中で次第にできてくる。人が歩いた後に道ができる。
どんなに道が見えなくても、どんなに道がゆっくりとしかできなくても、止まっても、前に進めなくても、生まれてきてくれたことを励ます人でありたい。

今日、ぼくは誕生日を迎えた。
この歳になると誕生日はめでたいものではない。という気持ちになってくる。Facebookでは多くのおめでとうが届けられた。祝っていただける気持ちはうれしかった。この歳になると、「生まれてくれてありがとう」と声を掛けてくれる人は少ない。自分を見守ってくれていた人々は、本当に少なくなった。ぼくたちの年齢は、見守る役回りになりつつある。
『誕生』は見守る側の人々の歌。でもこの歌は見守る側への励ましの歌のようにも聞こえる。


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雑感

Posted by 東芝 弘明