商品の物神的性格

出来事,雑感

商品の物神的性格について読みながら考えていた。資本主義社会は、資本を増大させるために、ありとあらゆる方向に商品が開発されて、販売(貨幣に交換)されている。人間と人間の関係が商品を介して結ばれると人間関係が見えなくなり、商品と商品が関係しているように見え、あたかも商品自身に力があるかのように見える。これによって商品が物神的性格を帯びる。
きらびやかな商品を購入するときはわくわくする。Amazonで買ったときは、到着するまでの間が待ち遠しく、来たときは「キター!!」という感じになるが、パッケージを開けて説明書を読んでという段階になると、「なんだこんなものか」という感じになって、急速にワクワク感が小さくなる。

「このサプリを飲むとみるみる痩せますよ」というものすごい宣伝に刺激を受けて、サプリを購入し、いざ飲んでみて、体重を毎日量っても芳しい効果が現れないと、サプリに対するワクワク感が急速にしぼんでくる。商品の購入後は、多くの場合こういうことを味わっている。
パソコンも以前はそうだった。商品の説明やカタログを読んで、「あんなことも、こんなこともできるのか」と思って使い始めてみると、画像の表示がものすごく遅かったり、パソコンがなかなか動かず、処理がはかどらなかったりということが多々あった。

商品販売のための消費者に対するラブコールは、一言で言えば「買ってー、私を買ってー」という悲鳴のようなものだ。ラブコールはあの手この手、クールに攻めるか、ゴテゴテ感満載に攻めるか、意表を突いた攻め方をするか、何の商品か分からないような宣伝の仕方をするのか、方法は千差万別。しかし、ラブコールに違いはない。宣伝がなければ商品はなかなか購入されない。もちろん、中には「この商品はいいね」というものがたくさんある。
資本主義社会に生きている人間は、商品の物神的性格に心が奪われて、その商品のマニアになったり、誰もなってくれなんて言っていないのに、しかも一銭もお金にならないのに、口コミ宣伝員、もしくは伝道師(エバンジェリスト)のような役目を自ら買って出て、商品の宣伝さえしている。

車という商品は、所有欲の塊のようなものだ。おととい高野山から下りてくるときに真っ新なダークグレーのフェラーリとすれ違った。誰もが目を引く車に乗っている人は、商品の物神的性格の虜になっていることだろう。土建屋の社長が好んで乗る車、社長を乗せる黒塗りの車とか、みんな車のかもし出す雰囲気によって、自分を偉く見せるというような感じがある。

ぼくなどは、さりげなくMacBookProを開いて作業をしていて、「えっ、何このパソコン、うっすー」とか「画面がめっちゃ綺麗やなあ」などと言われたら、自分が誉めてもらっているかのような錯覚に陥る。たばこを吸う人のこだわりライター、女性の化粧品、健康食品、有名店のケーキや食事、みんなの会話の中に商品にまつわる話題の何と多いことか。

こういうことを考えながら、電卓の歴史を少し調べてみた。世界初の電卓は1964年にシャープが発売したオールトランジスタ電卓、コンペットCS-10Aというものだった。重さは25キログラムほどあって、値段は53万5000円もした。55年経った2019年の今、シャープが販売している電卓の中には、シャープ カラーデザイン電卓 10桁表示 ホワイト系 EL-M335-WXというものがあり、Amazonでは760円で販売されている。もちろん、機能、使い勝手は、2019年の760円電卓の方がいい。
当時のサラリーマンの年間給与の平均(ただし1965年)が、44万7600円だった。2012年のサラリーマンの年間給与の平均は、473万3600円(厚生労働省の賃金構造基本統計調査)、2017年の民間サラリーマンの平均給与は432万2000円(国税庁「民間給与実態統計調査」)だ。
1965年の給与と比べると現在は約10倍(最近、サラリーマンの年収は減っていて、1990年代はじめとほぼ同じ水準に落ちてきている)になっている。給与だけで物価換算はできないが、単純化して言えば、1964年に販売されたシャープの電卓は、現在の物価でいえば、535万円もしたことになる。これよりもはるかに軽量で機能の高い電卓が760円で買えるということだ。物価換算でいえば、価格は7040分の1になったということだ。

どうして、時代とともに電気製品は安くなってきたのか。この謎を経済学は解明できるのか。
商品の分析を徹底的に行い商品とは何か、貨幣とは何か、賃金とは何か、資本主義的生産とは何かを徹底的に明らかにしたマルクス経済学は、この謎を解明できるようになっている。
いま、作成している講義資料は、こういうことを紹介しながら商品の謎に迫ろうとしている。さて、みんなに伝わればいいのだが。

今日は、こういうことをしつつ、知人宅におじゃまして、日本共産党に入ってほしいというお話しをして、快く入ってもらうことができた。野党統一によって政権構想を打ち立てようとしているこの時期に、いっしょに活動できることはすごく嬉しい。

出来事,雑感

Posted by 東芝 弘明