野呂栄太郎「日本資本主義発達史」

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手元に2冊の文庫本がある。岩波文庫なのに集英社の文庫本用のカバーがついている。このカバーは、不織布らしきもので作られており、赤川次郎の「毒──ポイズン」の原稿用紙がデザインとして使われている。この人の手書きの文字は、小さい目の優しい文字だ。20代に買って、本棚に長い間埋もれていたので、紙の色もかなり変色している。
カバーの中の文庫本は、「日本資本主義発達史」(上)(下)だ。
野呂栄太郎(1900年4月30日 – 1934年2月19日)という経済学者をご存じだろうか。「日本資本主義発達史」は、慶應義塾大学の卒業論文として、野呂栄太郎が1926年、26歳の時に書いたものだ。岩波文庫は、「日本資本主義発達史」を今も文庫本として販売している。84年前の大学生の卒業論文が、本として売られていることに驚く。
この本を読みはじめている。とても26歳の人が書いた大学の卒業論文だとは思えない。論文の文章は、文語調なので少し読みにくいが、資本主義の発達史を日本の歴史から説き起こして論じている。
野呂栄太郎は、日本共産党員となり党中央委員長として活動していたが、逮捕、投獄され、警察の拷問によって病気の結核が悪化し、病院に搬送されたが死亡している。
この人は、小学校2年生のときに関節炎によって片足を切断し、片足は義足だった。そのために、公立中学校や官立高等学校からは入学を認められなかった。旧制北海中学(現北海高等学校)から慶應義塾大学理財科に進学している。
障害者に対し、戦前の日本は、非常に厳しい社会だった。義足というだけで、学業が優秀であっても進学の道を閉ざすということに、時代の後進性を感じる。
この人が生きていたら、大きな仕事を残したと思われる。
この本には、日本の歴史が経済学の視点で書かれている。人間は、経済活動なしに生きていくことはできない。経済活動を通じて日本の歴史を見る視点は、非常に重要だと考えている。この視点なしには、人間の歴史を本当に語ることはできない。時代劇などを見ると、経済的な視点の弱さを感じる。たとえば、武士がその時代を動かしていたのは、経済活動を支配して、民衆が生み出した生産物を搾取していたからに他ならない。「日本資本主義発達史」は、84年前の本だが、日本の歴史を読み解く上で、重要な地位を占めている。
「『日本資本主義発達史』を読みましたか?」
以前、歴史学に詳しい先生にそう問われたことがあった。読んで長年の宿題を果たしたいと思っている。
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Posted by 東芝 弘明