U君の特技と人権フェスティバル
玄関のチャイムが鳴った。
「こんにちは」
聞き覚えのある声がした。
妻が出て、「Uさんです」と言った。
外に出るとU君の人なつっこい笑顔があった。
「柿もらったんですよ。柿ありますか。よかったらもらってください」
白いスーパーの袋にちょうど頃合いの柿が入っていた。
「これ、平種ですかね。いいですか、もらっていただけますか」
礼儀正しい。U君は、ぼくより10歳年下の議員だ。
この人には、誰にも真似のできない特技がある。
長野への視察の時に、彼は新幹線の中で、愁いをおびた女性の方に声をかけた。
「大阪に着いたら、どっちの扉が開きますか」
女の人は、左側を指した。
駅のホームに着くと新幹線の右側の扉が開いた。
女の人は、楽しそうに笑って、U君と会話を交わしていた。
愁いをおびた人は、たちまち大阪の中年女性に変身した。
「すごい」
ぼくは内心、ものすごく感心した。激しく感心したと言っていい。
秒殺の魔術師。つかみのU君。
すれ違いざまに親しくなれる力は、人並みをはるかに超えている。
「ぼく、声をかけるのが好きなんです」
柿はU君の笑顔のように、やさしいオレンジ色をしていた。
さて、昼からは、かつらぎ町の人権フェスティバルの舞台があった。
娘は、作文の部で表彰され、舞台で朗読を行った。表彰されたのはポスターの部6人、作文の部7人だった。
妻は、自分のことのようにドキドキして娘の姿を見ていたようだ。
作文発表の後、
さをり織りファッションショーや「オズの魔法使い」のミュージカルがあった。
ミュージカルには、笠田小学校の子どもたちがたくさん出演していた。
ある先生が、「女子は元気があるけれど男子がなあ」と言っていたが、今日のミュージカルは、圧倒的に女の子の力で成り立っていた。
小学校6年生の女の子たちの中には、もう青年期の入口に立っているような感じの子もいた。
ホールでは、青葉会がクッキーを販売していた。200円で1袋買った。ここのクッキーもおいしい。