タンポポの種

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5月3日はゆっくりさせていただいた。
妻の親戚の家族が来て、話をすることになっていたので、1日中ぶらぶらすることができなかったのだが、3歳のヤマト君が来て、いっしょに遊んで楽しかった。
話が佳境に入っていくので、ぼくは、ヤマト君を連れて近所を散歩した。
「あ、お花」
というと、「ほんとお花だ」「あ、ここにもお花」というリアクションが返ってくる。
東京圏に住んでいるので、イントネーションや言葉尻が東京弁なので、何だか面白い。
ちっちゃな男の子が、回りきらない舌で標準語をしゃべる。
四つ角や三叉路にさしかかると、「こっちに行きたいです」「あっちには行きません」、「さっき、お父さんとここ歩きました」
ぼくと散歩に行く前に自分のお父さんと歩いた道をよく覚えている。
お花を発見して、下からのぞき込んで、
「お花、穴開いてる」なんてことも言った。
強烈な関西弁の女の子と上品そうに聞こえる東京弁の男の子と3人でいっしょに歩いたらどうなるだろう。こんなことも考えた。
歩き回っているなかで、種になったタンポポを見つけたので、摘みとって息を吹きかけた。
種が空気に乗って流れるようにゆっくり飛んでいく。
「ヤマト君も吹いてごらん」
「うん」、ふうー。
だが、3歳のヤマト君の息はそよ風よりも弱い。
なかなか、タンポポの種は飛んでいかない。
息とタンポポの種の距離を一生懸命測って、ふうを繰り返す。
ふう、
 ふう、
  ふう、
ようやく3つほどタンポポの種が飛んだ。
飛ぶと、嬉しそうな顔になった。
歩きながら道の真ん中で、ふう、ふう、ふう、と種を飛ばす。当然、種が全部なくなると種飛ばしは終了する。
「ヤマト君、タンポポなくなったから、タンポポーって呼んだら出てくるかも知れないよ」
ぼくがそう言うと、ヤマト君はものすごく大きな声をはりあげた。
「タンポポー」
「タンポポー」
近所に大きな声が響く。事情を知らない人が聞いたら、植物であるタンポポに声をかけている姿は不思議だろう。
少し恥ずかしいが、そこは教えた手前、「タンポポいないね」といって歩いて行く。
「タンポポー、出ておいで」
ヤマト君は真剣だ。
「タンポポ出てこないね。タンポポいないね」
残念そうだった。
それでも歩き回っていると、道ばたに2本、空き地で2本という感じでタンポポの種を5本ぐらい発見した。摘みとって、道のど真ん中に立ち止まって、ふう、ふう、ふう、と種を吹く。
「ここで吹きたい」
と言ったら立ち止まって、ふうーと吹く。
ぼくの服に種が飛ぶと、ヤマト君は、体をよじって笑い転げる。笑いは、ツボにはまってクライマックスを迎えていた。
なんとも可愛らしい。
途中、随分歩いたので、「だっこして」といって手を伸ばしてきた。
娘をだっこしていたときと同じ姿勢で、ヤマト君を抱き上げる。
ぼくは、娘の小さい頃のことを思い出した。
散歩から帰ってくると、ヤマト君はすっかりぼくを気に入ったらしく突進して抱きついてきた。
ちっちゃい子に気に入られると幸せな気分になる。
こういう休日は、最高に楽しい。


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Posted by 東芝 弘明