中学生と自由な時間

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先生と生徒の間で教育は成り立っている。教科書を使っている。しかし、肉声で語りかけ、子どもたちに伝えようとするところで教育は生まれる。教育は、教える側と教えられる側とのコミュニケーションによって成立している。
教育の主人公は誰なのか。
子どもたちこそが主人公だろう。

子どもたちに最善のものを与えるというのが子どもの権利条約の考え方の基本だ。
日本の教育は、子どもたちに最善のものを与えるようになっているのだろうか。
否。
という現実がある。
小学校も中学校も子どもたちにとっては、生活の場であり、人間としての成長が保障される場でなければならない。学ぶことは、知識に留まらない。
社会に出て、コミュニケーションが豊かにとれること。
人間に信頼を置き、力を合わせて新しいものを創造できるようになること。
自分の石を相手に伝えるとともに、相手の意見を真剣に聞くことのできる人間を育てること。
自分の意見を積極的に表明できるようになること。
学問を学び、自然と人間、社会への深い理解を培い、あわせて人間への信頼と未来への希望を培うこと。
こういうことが、学校生活の中心に座り教育のカリキュラムが組み立っていけばいいなと思う。

何という甘いことを書いているのか。
そういう意見があるのではないだろうか。
子どもたちは、受験という圧力のもとに置かれている。受験圧力を痛切に感じているのは、教師なのかも知れない。中学校の先生方は、毎年繰り返される受験というものに大きく支配され、学びを組織するのに非常に熱心になっている。
日々の努力も受験抜きには語れない。

ぼくは、学校生活を通じて、娘が豊かに育ってほしいと考えている。豊かさの中には、幅の広さがある。
人間としての幅は、数多くの体験や読書などによって培われる。10代の時に本をむさぼるように読み、さまざまなことを視野広く考えてほしいと思っている。
幅の広さを実現するためには、幅の広い体験が必要になる。
そのためには、たっぷりとした時間が必要だ。
幅広く本を読めば、教科書という限られた世界から羽を伸ばして、時には深く、広く視野を広げてくれるだろう。

しかし、なかなかそうはならない現実がある。
まずは、時間がない。クラブ活動と自主的な勉強と宿題が、子どもたちから自由な時間を削っている。
毎日の子どもたちの生活は、かなり単純で単調なことのくり返しだ。
クラブ、夕食、お風呂、家庭学習。子どもによっては塾。
夜、ゆっくり親と話し合う時間さえ少ない。

人間の脳は、場所を移動することによって活性化する。歩くこと、他の場所に車で行き、見て歩くことだけでも、脳にとっては刺激的だ。
しかし、そういう自由が失われている。

人生の中で10代は、10代の時代でしか体験できない。20歳を超えてから10代の頃の体験をしたいと思っても体験できない。失われた時間は取り戻せない。
人間も動物なので、今を生きている。今を一生懸命に生きるのが動物の本性だ。10代のものの見方は、10代のものだ。20歳を超えると10代の時の感覚は、悲しいけれど失われる。10代の不安定な、まだ定まっていない揺れる心で、多くのものを見、体験し、読みということが、人間の成長にとって欠かせない。
この大事な10代をクラブと勉強とだけで終わらせるのは非常にもったいない。

組織された別の時間が必要だというのではない。
必要なのはグータラ寝ることもできる自由な時間だ。自由な時間の中で、子どもが自主的に選択して体験できることが大事だ。
体験の中には友だちとの遊びも家族との交流も含まれる。

「そんなこと言って厳しい受験に勝てるんですか」
「もう少しがんばっていただかないと志望校に合格しませんよ」
これが、殺し文句だろう。
そんな言葉が返ってくると、親の背中には冷や汗が流れる。
殺し文句に反論はむつかしい。

計算が速く、事務能力が高く、理解力も暗記力も高くという人間だけが、自由な時間をもち、豊かな体験を重ねることができる。こういう人は、ガリ勉にはならない。
こういう天才的な人はいるだろう。しかも、こういう天才の中には、数少ないけれど人の何十倍も努力できる人がいる。
そんな天才のために日本の教育はあるのかも知れない。
間違っているのは、学校が、すべての生徒にこの天才を求めているところにある。

多くの子どもはついていけなくなって、しんどくなる。
しんどくなったらスクールカウンセラーが相談に乗ってくれる。
でも、しんどくなっている原因には、なかなかメスが入らない。メスは、しんどくなった子どもの心に入り、ときどき効果を上げて回復するケースも出てくる。
成果があったと教育委員会は喜ぶ。
でも、なんだかおかしい。


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Posted by 東芝 弘明