基地問題の陳情は不採択

かつらぎ町議会

(画像はオール沖縄会議作成のもの)
総務産業常任委員会で、沖縄の普天間基地閉鎖、辺野古新基地建設中止という沖縄の住民投票の結果をふまえて、沖縄にどうして負担が集中しているのか、国民的な議論を行って、基地が必要だというのであれば全ての市町村を候補地として米軍基地を引き受けることを議論して、沖縄県外で基地を負担してほしい。それが民主的な解決方法ではないか。という陳情が議論された。この陳情は、善意から出発している。辺野古新基地建設反対を前提としているが、この態度をとる限り普天間基地はずっと残り続けるということを懸念しているのだ。

結果をまず書いておこう。
委員会の5人の議員は、この陳情に対し全員が反対の態度をとったので不採択となった。ぼくもこの陳情には同意できないという態度をとって反対した。ぼくの反対理由は、普天間基地の閉鎖と辺野古新基地建設の中止を無条件ですすめるべきであって、沖縄にある危険な基地を日本のどこかに移設するということで問題は解決しない。沖縄県民は、沖縄の苦しみを県外に移すことも求めていないということだ。ぼく以外の4人のうち1人はぼくと同意見だった。さらに2人は、辺野古新基地建設はやむを得ないという態度を示した。もう1人は、なぜこの陳情に反対したのか理由は明らかにしなかった。

付言すれば、在日米軍の海兵隊は、ここ数年拠点を九州の佐世保などにも移動させ、今まで以上に広範囲に作戦を展開するようになっている。普天間基地閉鎖、辺野古新基地反対という状況下で、アメリカは海兵隊のエリアを広げ、基地の強化を図っている。海兵隊の沖縄県外への拡張はすでに始まっている。この現実も見る必要がある。

沖縄県民のたたかいには、発展の歴史が刻まれている。たび重なる米兵の犯罪や毎日引き起こされている騒音問題、航空機などの事故、自然破壊、環境汚染。これらの問題に対し、沖縄県民は、次第に普天間基地の閉鎖と辺野古新基地建設反対をセットで考えるようになってきた。もちろん、県民の中にはさまざまな意見があり、普天間の閉鎖のために辺野古の基地建設はやむを得ないと考える人もいるし、県外移設を求めている人もいる。その中で普天間基地の閉鎖は、県民の共通の願いであるのは確認できると思われる。
このような状況下で、今年2月に行われた住民投票によって、県民の多数は辺野古基地建設反対という態度を鮮明にした。この意思表示は歴史的な意義をもつものだ。その後行われた衆議院補欠選挙で自民党の候補者は、普天間基地閉鎖のための辺野古新基地建設を公約に掲げた。この候補者は選挙で敗北した。当選したジャーナリストの経歴をもつ屋良氏は、主要争点の一つだった辺野古新基地建設に反対し「新基地を建設せずとも米海兵隊の運用見直しにより、米軍普天間飛行場の全面返還は可能」と訴えた。この選挙結果は、沖縄の民意がどこにあるのかをより一層鮮明にした。

委員会の審議では、局長が陳情の資料の説明を行い、政府資料を活用して政府の見解を紹介した。沖縄県の言い分としては、2013年1月に安倍総理に提出された「建白書」が資料として出され、これも説明された。説明では、政府の辺野古基地建設が唯一の解決策という説明がなされたので、ぼくは、「これでは、沖縄の言い分が伝わらない。沖縄県と日本政府の意見が真っ向から対立している。国と自治体は対等平等なのだから、日本政府の見解を資料で説明するのであれば、なぜ沖縄県が辺野古新基地建設に反対しているのか、関係資料を出して議論すべきではないか」として、資料の追加提出を求めた。
基地問題の経過については、防衛白書の年表が示された。見て驚いたのは、経過の中に全市町村41の市町村長と議員、沖縄県議会の議長や各会派代表が安倍総理に提出した「建白書」のことが全く書かれていなかった。この一点だけでも、日本政府のまとめた基地問題の経緯が、沖縄県民の思いとは著しく食い違っていることが見て取れる。

ぼくの資料要求に対して、ぼくともう1人が資料の提出が必要だという態度を示し、3人が資料の提出は必要ない。これで分かるという態度をとった。

ぼくは、沖縄県にはまだ行ったことがない。米軍基地も沖縄の美しい海も、この目で見たことはないし、沖縄の料理もまだ食べたことがない。審議の中でこのことを問題にして、発言する議員がいた。
「議員の親睦旅行(自分たちで積み立てたお金で親睦旅行を行っている。公費は出ていない)にどうして東芝議員は行かなかったのか。行った議員は沖縄で基地を見た。資料や文献だけで基地問題を論じても基地の本当の姿は分からないのではないか。沖縄にも行かないで基地問題を論じるのはどうか」
この意見に対して、ぼくはこう答えた。
「おっしゃるとおり。ぼくは今まで現場を大事にしてきた。しかし、残念ながら沖縄には行っていない。今、日米地位協定について調べているが、目に見えないことが多い。日本に一体何人の米軍がいて、何人の軍属、何人の家族が基地にいるのか、日本政府は正確には把握していない。アメリカは日本に対して報告する義務はない。目に見えないことがたくさんあるので、学ぶことと現場を見ることを大切にしてきた。沖縄の基地を見たというのであれば、ぼく以上に沖縄の基地問題を深く理解できるということではないか」
しかし、この議員は、「辺野古基地建設はやむを得ない」という態度を示した。あえてぼくは聞いた。
「沖縄県民が住民投票で7割以上基地建設反対の態度をとっていても、住民の意思は尊重されないということですか」
この問いに対しては、そうですということだった。
沖縄県民が、戦後70年以上苦しみ続けてきた問題に対して、委員会はこういう答えを出した。

ぼくは、沖縄の基地問題は、戦後米軍基地に苦しめられてきた沖縄県民の思いがどこにあるのかを知ることから始まると思っている。住民投票までおこなって民意を明らかにした沖縄県民の意思が通らない日本に地方自治はあるのか。なぜ工事費を出す必要のない日本政府は、沖縄県民の意思を無視して辺野古基地建設を強行し続けるのか。なぜアメリカは、自分の国の、しかも日本防衛の任務をもっていないと明言している海兵隊の基地建設にお金を出さないのか。
アメリカは、辺野古基地建設で日本政府と合意しているが、それは、日本政府の態度を了解しているということであり、何が何でも辺野古ということではないことも明らかになっている。アメリカは、日本政府と沖縄県が対立していることを高みから見物している。日米に横たわっているこの異様な力関係は、日本国民全体の大問題ではないだろうか。


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Posted by 東芝 弘明