答弁調整があってもいい?

雑感

答弁調整のことで話をした。真剣勝負がいいという話をしても、「答弁調整をしてもいいのではないか」という意見が根強かった。「国会のようなやり取りでいいではないか」という意見がすんなりと受けとめられないのは不思議だった。「答弁調整によって要求が実現するのであれば、それでもいいのではないか」ともいう。

「そんな議会になると、日本共産党の議員も議会の枠の中にからめとられて、アンタッチャブルではなくなる。牙が抜かれる」
そういう風に話をしてもなかなか通じなかった。
裁判の世界には予定調和的な裁判はない。
スポーツの世界にもシナリオはない。
学校の生徒の授業にもシナリオはない。先生が計画を立てたとしても、キャッチボールをし始めると生徒がいる限り計画どおり事は運ばない。
こういう世界と議会は違ってもいいらしい。

しかし、そういわれても納得がいかない。議会のやり取りから真剣勝負がなくなったら、次第に議会そのものが形骸化して、魂や精神が失われる。
地方自治体の会議の中に蔓延している多くの会議における予定調和、シャンシャン、当局の思惑どおりの会議運営が、どれだけ物事から大事な精神、魂を抜き取っているか。戦後70年以上が経って、多くの会議が形骸化している姿は痛ましい。田舎の審議会の答申の中には、当局が原案を作成し、審議会が原案に対する修正もほとんどなくそれを可決し、案がとれて答申の成文となる。審議会の答申として当局は、錦の御旗みたいに答申を大事にするが、担当者は自分で作成した答申であることを知っている。審議会を通過すれば箔がつく。金箔がつくのかも知れない。こういう会議は、すごく形骸化している。昔、「意見を言ったら、こんな会議では意見を言うもんじゃない」と言われた人がいたが、そういう気色の悪い現実が、過去には多かった。
このような答申の作成からかつらぎ町の長期総合計画は変化した。大学の教授が座長に座り、代表となった委員も積極的な意見を言って、かつらぎ町の実態と住民の意向を踏まえた計画が作成された。原案をそのまま通すような予定調和を起こさないようにするためには、会議の在り方を変える必要がある。

本会議場の運営が、すべて原稿を双方が読み上げる形になってしまったら、議会の精神、魂は失われる。
「本会議場はそういうものだけれど、委員会の質疑は生々しいよ。それでいいじゃないか」
という意見もあるだろう。確かに委員会における質疑・応答まで答弁調整をしている例は皆無に近いだろう。日常的に委員会で、そういう生々しいやり取りをしているのであれば、本会議場での一般質問もそうすればいいのではないか。

本会議における質問と答弁がすべて出来上がった原稿によって成り立つのなら、本会議を開く必要はない。双方が徹底的な打ち合わせとすり合わせをして、原稿を作成したら互いにそれを提出して、パソコンによって読み上げさせればいい。そこに人間は必要ない。双方が原稿を読み上げるような一般質問のために日程を3日間、4日間とって、多くの人間を拘束させる意味はない。
国会における質問主意書とそれに対する答弁書という方法にも、大きな意味がある。一般質問における答弁調整は、議員がテーマを語り、そのテーマに沿って意見をすりあわせれば、問題点が鮮明になり、議員の掲げている要求が実現することについては、大きな意味がある。やり取りの過程の中には真剣な努力があるので、一般質問における準備は、国会の質問主意書と答弁よりも中身が濃いだろう。

「そうやって実現するんだからいいじゃないか。それに出来レースであっても、答弁が質問の前に全部出来上がっていたとしても、それを県民の前で公開して、見てもらえることに意味があるのではないか」
それはそうだ。見える化すれば多くの人に伝わる。

見える化の意義を主張したいのであれば、双方が時間をかけて演技を磨いてほしい。そうすれば原稿の読み上げに魂がこもる。演技力の高い俳優の方々に質問書と答弁書を渡して演じてもらえればなおいいだろう。迫力が出る。言葉に魂がこもる。今回の〇○県議の役を演じてくれるのは、佐藤浩市さん、知事役は役所広司さん。こうなれば、学芸会と八百長にはみえない。そういう迫真の演技が、本物の議員による原稿と本物の当局による答弁をもとに行われるのであれば、見に行きたい。

「そんな馬鹿げたことはできない」というのであれば、真剣勝負に切り替えればいい。議員がテーマを開示し、テーマに対する考え方を示したあとは、双方が質問と答弁のために努力すればいい。答弁調整をやめて本会議場でのやり取りを真剣勝負に切り替えれば、学芸会と八百長は終了する。もちろん、最初はチグハグだったりお粗末だったりするだろう。しかし、一定の経験を重ねると、真剣勝負に磨きがかかる。議員の質問に魂がこもり、答弁にも精気が宿る。形骸化した本会議はこの努力が始まれば綺麗さっぱり消えてなくなる。


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雑感

Posted by 東芝 弘明