国会で真相解明ができない理由は与党にある

雑感

議院内閣制は、政権与党が首班指名を行って首相の下で内閣が構成される。この仕組みは、与党が大きな議席を持って、与党を構成し、しかも内閣がこの与党に対して絶対的な権限を持った場合、たとえばアメリカの大統領制よりも、はるかに強大な権力を持つようになる。権力の分立が有効に働かず内閣の暴走が生まれ、ストップがかからない傾向を持つのではないだろうか。

調べてみるとネット上にこういう指摘があった。
「議院内閣制は立法と行政の分立よりも、両者を融合させることによって、執政府が立法行政における強力な主導力を手にすることを志向した制度であり、この点で、権力分立を志向する大統領制とは明確に重きを置く価値が異なるのである」(「子どもの誤解を招く?教科書における議院内閣制と三権分立」— 蒔田 純)

安倍内閣は、次のような仕組みの下で動いている。
1つ目は、小選挙区制下での自民党総裁の権限の強化にある。衆議院の1人区である小選挙区制で、自民党総裁によって候補者の公認が得られなかったら、当選できないという事態が生み出された。
2つ目は、自民党内の財政権限が、自民党総裁に集中したことだ。企業・団体献金は、政治家個人に対してできなくなり、献金は政党に対して行われるようになった。また、政党助成金が政党に入ることになったので、政治献金を中心とした党の財政も、政党助成金の配分も、自民党総裁に集中するようになったのだ。

自民党内における自民党総裁の権限の巨大化によって、内閣総理大臣は、行政の長だけでなく、国会の与党の中でも強大な権限をもつ存在になった。こうなると首相の暴走に歯止めがかからなくなる。

「桜を見る会」の野党の追及を、現時点で阻んでいるのは国会内の与党だ。国会が安倍総理出席の下での予算委員会を開くようにすれば、総理は国会審議に応じなければならないし、与党が内閣に対して必要な資料の請求と開示を求めれば、必要な資料は全部出てくる。しかし、与党は、安倍総理を全面的に擁護して、審議を拒否、資料の提出も拒否している。野党は、重要案件を脇に置いて「桜を見る会」ばかりを追及しているという批判があるけれど、与党が審議拒否をせず、資料の開示を求めていれば、「桜を見る会」は決着がついている。与党の抵抗が今のような事態を生み出している最大の原因の一つになっている。

安倍総理は「国会が求めるのであれば応じる」というような言い方を繰り返し言ってきたが、この発言をする場合、必ず国会は審議を求めない。与党を支配している安倍総理は、このことを見据えた上で「国会が求めるのであれば」と言っているということだ。

アメリカの大統領は、予算編成権も法案を提出する権限も、議会に出席する権限ももっていない。行政府の長として権力に制限がかけられている。しかし、日本の議院内閣制は、政府が与党を完全に支配したら、多数を占めた与党と内閣による政治の暴走が生まれてしまう。自民党総裁=内閣総理大臣という形を変えて、自民党総裁と内閣総理大臣を別の人物にするような仕組み、政党助成金の廃止、企業・団体献金の完全な禁止などを実現すれば、内閣総理大臣の暴走には歯止めがかかるだろう。自民党総裁=内閣総理大臣という仕組みを改めるのは、自民党内の制度変更なので他の政党がどうのこうのいう筋合いではないが、あまりにも個人に権限が集中している今の仕組みをどうにかしないと、政治の暴走には歯止めがかからないのではないだろうか。

日本の地方自治体の首長も暴走できる体制にあることは以前に書いた。予算編成権と議案提出権及び人事権と予算執行権、こういう権限を一人で兼ね備えた自治体の首長は、安倍内閣よりも強い権限をもっている。この自治体の長が、議会の多数を押さえ込んでしまえば、日本の地方自治体は、暴走する政治を生み出しかねない。

小泉改革以降、首相に権限が集中する仕組みをつくり、内閣官房と内閣府の強大な仕組みができあがり、官僚の人事を握ることによって、内閣総理大臣を中心とした巨大な権力機構ができあがった。安倍総理が上手に運営しているから、安倍さんに変わる人物がいないから長期政権になっているのではなくて、与党を押さえ込み、官僚を押さえ込み、マスコミを抱き込む権力としての仕組みが安倍内閣を通じてできあがっているので、安倍一強になったということだろう。この巨大な力をもった独裁的な仕組みを打ち破るためには、野党共闘による野党連合政権以外に道はない。そう思う。


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雑感

Posted by 東芝 弘明