筆箱がやってきた

出来事

文房具屋さんが身近なところに存在しなくなって久しい。10年以上になるのかも知れないが、オークワ(スーパー)で筆箱を買って使ってきた。オークワの商品棚に並んでいる筆箱の種類は少なく、しかも子ども向けの筆箱がほとんどだったので、大人が使える筆箱となると、選択肢は一点程度になる。

その一点を買ってずっと使ってきた。あるとき町長(今の町長の2代前)も筆箱を使っているのを知った。筆箱からペンを取り出すのを見ていると、ぼくと同じ筆箱が目の前にあった。
事務所で会議をしていたときにSさん(原県議会議員)がぼくの対面に座っていた。Sさんが鞄から出した筆箱は、ぼくと同じものだった。
「オークワで買ったんですか」
「そうやで。おれのんとおんなじやな」
こういう会話になった。
オークワがものすごくたくさんの商品を注文して棚に並べる中で筆箱の占める割合は、ほとんど0に近いのかも知れない。でも文房具の陳列棚には、10年以上も同じ筆箱が並べられている。同じ商品を延々と陳列するのは、大人の男性の筆箱を統一したいという「筆箱統一計画」があるのだろうか。同じ筆箱がいたるところにある現象というのは、かなり具合が悪い。
くだんの筆箱は、これだ。

「この筆箱は誰のものですか」
もし落とし物になって、会場で声をかけて筆箱が提示されると、10人の手が一斉に上がる。こうなるとみんな驚く。
同じ筆箱を持っている人を見るたびに、オークワで買ったんだなと思いつつ、この現象はよくないと思ってきた。しかし、この現象から離脱できる日がやってきた。

日曜日の会議のときに、ぼくの後ろに座っていたのは、いつもニコニコしている女性のOさんだった。髪は茶髪だ。この人のように誰に対しても心が開かれている人は少ない。ぱあっと笑顔が咲いている。夕方になっても夜になってもまったくしぼまない朝顔のようだ。話をしているだけで楽しい。
彼女のテーブルには、スタンド型の筆箱があった。
「この筆箱いいですね」
そう話しかけ、Amazonのサイトで販売されているコクヨの筆箱をみせて、
「この筆箱ですよね」
と言うと、彼女はいきなり、
「これ、東芝君にあげるわ」
笑いながらそう言って、筆箱から筆記用具を取り出し始めた。筆箱にはペンだけでなく、いろいろな小物が入っていた。
「ドラえもんのポケットみたいだ」
そう思いながら、並べられる小物を見ていた。クリップだけでも5,6個あった。
「いいんですか」
「あげるわよ」
なぜ、ぼくにくれるのか、その真意というか意味は分からないが、嬉しくなってきた。
「いえいえ、そんな訳にはいきません」という言葉が出てこない。
「もらっていいんですか」
こっちの言葉が出てきた。

こういういきさつでやってきた筆箱にペンを移し替えて立ててみた。それがこの画像だ。もし壊れたら同じものを買おう。


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出来事

Posted by 東芝 弘明