「持たざる日本の最低基準」

出来事,議員の活動

一般質問が終了した。今回は2番目だった。いつも、一般質問の準備の際には、情報をできるだけ広く集め読み込むようにしている。質問テーマについて考えながら資料を集めていると、新しい視点が見えてくる。奈良県が和歌山県よりも民主的にコロナ対策を行っていることを感じたので調べていくと、いろいろな発見があった。和歌山県のホームページのコロナ対策の情報は、実に素っ気ないし、和歌山県が何をどう考えているのかはなかなか見えてこない。

これに対して、奈良県は、住民から見てもいろいろな対策が見えてくるようになっている。県独自の施策は、国の資料のようにプレゼン用に作られていたので、考え方を深く理解することができた。和歌山県の素っ気なさとは大きな違いだった。

橿原地区(橿原市、高取町、明日香村)は、市町村と医師会が連携して新型コロナ対策としてドライブスルー検査場を設置していた。設置費用は自治体が出し、PCR検査の機械は医師会が調達していた。ここまで準備を進めながら県に相談すると、奈良県はこの仕組みを受け入れ、県の保健所との連携でドライブスルーの予約が取れるようにし、保健所が検査の必要なしということになったとしても医師が判断すれば検査ができるようになった。これは、奈良県が奈良県の対応を超える仕組みを受け入れたということを意味する。

「柔軟だなあ」と思った。かたくなさがない。ドライブスルーの設置場所は、地元の人々に橿原市が説明して受け入れてもらった。こういう検査の場所を設置することの了解を得たし、ドライブスルーによる検査で風評被害は起こっていないということだった。
奈良県は、元々感染症に対応している医療機関については、そこでコロナに関わる診療とPCR検査を行っていることを奈良県の広報とホームページで公開している。こういう対応も和歌山県には存在しない。

天理大学のラグビー部で59人の感染クラスターが発生したとき、天理大学の学生に対する風評被害、差別的な事件が起こった。これに対して天理市長はメッセージを発信し、次の日に天理大学の学長といっしょに記者会見を開いた。被害の中には天理大学の学生には、教育実習に来てほしくないというものも含まれていた。不安があって拒否したい気持ちが生まれるのは理解できるとしつつ、記者会見では、教育実習生にPCR検査を受けてもらうという対応も明らかにした。学生は、ラグビー部の感染には全く接触していない人だったので、記者会見の次の日、学校は教育実習生を受け入れる。PCR検査は必要ないということになった。
風評被害や差別のことについて相談すると正面から対応したことに驚いた。ドライブスルーを設置した橿原市には、差別や風評被害に対する相談窓口があった。
こういう違いはどこから生まれるのだろう。奈良県は、住民が医療機関に直接アクセスして診察とPCR検査を行える仕組みを構築しようと動いていた。根底には、住民に対する信頼があることを感じた。

こども園のテーマは3つめのこども園は必要だというものだった。今回は2つの園を訪問させていただいた。2年前にもこのテーマで質問をしたことがある。その時には、丁ノ町にあった保育所を活用すれば、3つめの園は開設できると提案した。
今回は、国の保育士の配置基準と面積基準を軸に質問した。赤旗の記事の中に国の基準は、1948年に作られたものだという記述があった。今から72年も前に作られた基準が、今の基準のまま使われていることに驚いた。調べていくと国の保育に関わる基準がどのようにして作られたのかを調べた大学の論文があった。1948年というのは、戦争が終わってまだ3年しか経っていない地点であり、日本はGHQの統治下にあった。闇市が全国の各地に存在しており、食料にも事欠く状況はまだ続いていた。論文の中に当時の厚生省の課長の文書が引用されていた。
「戦後直後の状況では、『持てる国』アメリカの最低基準は、特に物質面において『持たざる日本』の最低基準ではありえない」

「持たざる日本の最低基準」──この言葉には驚いた。アメリカが示した基準の多くを受け入れられないとして、最小限の基準を設けたということだった。保育士の配置基準も面積基準も科学的根拠に乏しいということが論文の中には書かれていた。
基準が作られた当時でさえ、持たざる日本の最低基準だったのに、72年間もこの基準が変わっていないところに日本の保育の根本問題の一つがある。今回の準備で分かったことの一つはここにあった。なぜこども園が過密になっているのか。なぜ、正規の保育士以外に多数の保育士を雇用しないと保育を運営することができないのか。

質問の中心点もここに置いた。
3つめのこども園を設置することを前向きに考えたいという趣旨の答弁が教育長と町長から表明された。少しは役割を果たせたと思った。


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Posted by 東芝 弘明