一斉報道にはシナリオがある?

雑感,政治

菅政権の支持率が高い。このことについて、ショックを受けた人もいるだろう。
安倍政権の支持率が30%台になっていたのに安倍総理が辞任を表明したあと、8月30日の共同通信の世論調査では56%になっていた。

東京新聞を引用してみよう。

共同通信は前回比20.9ポイント増の56.9%。読売新聞も同15ポイント増の52%だった。民放・TBS系列のJNNにいたっては同27ポイント増の62.4%。朝日新聞の調査では「安倍首相の7年8カ月の実績をどの程度評価しますか」との問いに71%の人が「評価する」と答えた。

ぼくの頭ではこの現象が理解できなかった。責任者が、病気の問題があったとはいえ、コロナ対策や河合夫妻の裁判などから逃げていたし、追い詰められた果ての辞任に見えた。その張本人が辞任したら一気に政権が瓦解するのではないか。そう思っていたのに真逆の世論になった。辞めたら本人のいない内閣の支持率が上がるのは、政治の世界でも希有な現象ではないだろうか。

引用した東京新聞では、閉店人気という現象ではないかということや7年8か月の実績が評価されたのではないかということも抱え得ていた。しかし、最後には、世論調査に詳しい埼玉大の松本正生教授(政治意識論)のコメントを載せていた。
「病気が理由だったため世間に『ご苦労さま』という意識が広がったのだろう。ただ、そもそも首相の辞任表明後に内閣支持率を調べる意味はあまりないのではないか」

ぼくは、安倍さんの辞任から出発した「劇場」は、その後行われる自民党総裁選挙の描き方まで、用意周到に準備された計画にもとづくシナリオを実行したように見えた。テレビは一斉に総裁選報道になだれ込んで、安倍政権の検証は行わなかった。一斉報道は、人物評価に終始した。
「政治を描いているのに政治の中身を描かない」
洪水のように流れる情報に乗って国民世論が動いた。ぼくにはそう見えた。その結果が菅政権の高支持率70%越えだった。

テレビが政権についての事実を描かなくなって久しい。政権与党の支持率が上がるのは野党がだらしないからという言い方が枕詞のように語られてもいる。安倍内閣は、桜を見る会までは世論の怒りを無視して、しらばっくれていた。しかし、新型コロナ感染が広がると、国会が機能しはじめた。安倍内閣の打ち出す政策は、国民を絞り込んで30万円配布するとか、お肉券を配るとか、アベノマスクを配るとかいうものだった。これに対して異論を唱えて修正に次ぐ修正、積極的な提案に次ぐ提案を行ったのは野党だ。その結果、これほど国民の声で政策が実現していくことはかつてなかったという状況になった。
持続化給付金などは、繰り返させる災害の中でも一貫して自民党政権が拒み続けてきた個人保障そのものだった。
これほど国会が機能したことはなかったという状況になった。野党は一致団結してよく頑張った。しかし、それでも野党はだらしないというような論調は続いていた。

安倍総理の外交手腕は高かった。菅さんには心配がある。こういう論調のなかで、菅さんは心配ありませんと言いながら、安倍総理には外交面で一定の役割を果たしていただきたいというような見解を述べた。

実際の外交は、ロシアに屈服して4島返還さえ言えなくなったり、アメリカのトランプ大統領に徹底的に追随して、必要のない兵器の爆買いを行っていたのに。目玉だった原発技術の輸出(大事故を起こした国なのに鉄面皮にも)も全部失敗したのに。

辞任から菅政権の誕生までのシナリオは、社会実験だったのだと思う。このシナリオでレテビを総動員したら、国民は高い支持率を示すのではないか。この社会実験は成功し、国民を誘導して事実から目をそらすことに成功した。丸め込んだマスコミを活用すれば、世論は面白いように動く。

菅政権の支持は張りぼて。厚化粧。実際には国会での所信表明も審議も何も始まっていない。あるのは、安倍さんとともに歩いてきた官房長官としての「実績」だけだ。この実績を克明に追いかけていたら今のような高い支持率はないだろう。

メディアの総動員による自民党安倍政権の化粧直し。安倍さんの顔に菅さんというお面をかぶらせた安倍政権。これが本当の姿だし、安倍さんの裏でメディアを支配してきた人物の表舞台への登場。これが本当の姿だろう。マスメディアが、菅さんをここまで持ち上げたのは恐ろしくもある。あなたが安倍内閣の下で行ってきたメディアに対する態度を我々は歓迎するという宣言になったのではないか。という点で。

国民が事実に目を向けて、くらしの中から声を上げれば、事態は急激に変化する。成功の裏で野党共闘が野党連合政権構想に向けて急速に動き始めている。野党はだらしないと言っていた人々は、連合政権構想が打ち出されたら何と言うだろうか。自公政権に代わる展望を打ち出したら、今度は野合と言って批判するだろうか。手のひら返しのプロパガンダに対し、立ち向かって打ち破ることが求められる。


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Posted by 東芝 弘明