ファクトチェックの視点

雑感,出来事

雨だった。雑賀増己議長が亡くなったという連絡が入った。議会だよりの委員長・副委員長による最終校正があったので9時20分頃、議会事務局に行った。議会運営委員会が開かれていた。終わってからお悔やみに行くというので同行した。

玄関の前に立つと雑賀議長の奥さんがあいさつに出てこられた。遺体の前で手を合わせると涙がこみ上げてきた。
家の外に出ると「はやかったなあ」という声が出た。「何人現職のまま議員が亡くなったのか」という話も出された。現職議員のまま亡くなった議員はかなりいる。

雑賀議長は、7月末に就任してからほとんど議長の仕事ができないまま入院された。9月議会は副議長が代行して運営された。入院されてからそんなに期間も経っていない。どんなに復帰したかっただろうか。顔を拝見させてもらったときにそういう思いが浮かんできた。

議会だよりには、議会の構成替えのpageを作った。ここに議長が逝去されたことを一言書き添えた。結局、この議会だよりを見ることなく議長は亡くなられたことになる。議会だよりのページ数は26ページになった。一言一句を見て誤りがないかチェックする作業は、わずか26ページでもかなりの作業になる。1冊の本を世に出すためには、どれほどの労力が必要になるだろうか。新聞の発行力はすごいと思う。誤字や脱字が極力少ない。FACT CHECK(ファクトチェック)は、心許ないが。

ファクトチェックに関わって、少しだけ書いておこう。菅政権に対する世論調査。昨日掲載されていた読売新聞と朝日新聞を見るとかなり菅政権の支持率に開きがある。読売が67%、朝日が53%。14%もの開きがある。不思議だ。無作為抽出による世論調査だから、同じ設問だったら同じような結果になる。サンプル数が一定数を超えると傾向が似通ってくるんのではないだろうか。しかし、新聞社によって世論調査に違いがあり、政権に近い報道を続けている新聞社の内閣支持率は、批判的なところよりも高くなる。どうして、いつもこういう結果になるのかが分からない。
おそらく設問の仕方に違いがあるのではないだろうか。ぼく自身、世論調査で「支持政党は日本共産党です」というと調査員に驚かれたことがあった。知人が受けたものでは、日本共産党が選択肢に入っていないという世論調査もあった。

客観的であるはずの世論調査さえこういう傾向がある。大阪市廃止、特別区設置の「都構想」の特集を読売新聞が行っていたので数日前に読んだ。特別区設置によって財源が大阪府に移ることはほんの一言触れているだけ、都市計画の権限を失うなどの情報は書かれていない。二重行政の解消が焦点だという論点が前に出る。新聞の1ページの3分の2ほどスペースを割いているのに、「都構想」の本質に迫っていかない。なんだろう。新聞記事にさえファクトチェックをかける必要があるという状況になりつつある。

戦前獄死した市川正一という日本共産党員は、大本営発表の新聞記事を読み比べて、自分でファクトチェックを行い、もうすぐ日本帝国主義の敗北をもって戦争は終わることを見抜いた。事実を報道しない記事にはどこかにほころびが出てくる。勝った、勝ったという報道ばかりしていた新聞の記事を読んで戦争の状況を読み取った眼力は鋭かった。獄中にあった宮本顕治も妻の宮本百合子に同じように戦争が終わることを伝えている。

ファクトチェックをしながら新聞を読む時代になった。いまは「しんぶん赤旗」があるので、まだ戦前よりもファクトチェックはしやすい。「都構想」にしても「日本学術会議の任命拒否」にしても、新聞を読み比べれば、直接事実に触れることのできない地方にいる自分たちでもファクトチェックはできる。事実がどこにあるのか。「都構想」も「学術会議」も法律に基づいて成り立っていることなので、法的には一体どういうことになるのかを追及すれば、二つの問題の真実は見えてくる。そこをごまかして描いている論調には、ほころびが潜んでいる。
法律で言えば、大阪の「都構想」は都構想ではない。府は都にならない。実現するのは大阪市の廃止と特別区の設置。大阪府と市区町村の仕事の中身は違うので3分の2も大阪市の財源が大阪府に移ったら福祉や教育など生活に関わる施策は間違いなしに後退する。実際、すでに廃止する施設と事業は「都構想」の計画に盛り込まれている。
学術会議の任命の仕組みは日本学術会議法で規定されている。菅総理の任命拒否は、この法律に違反している。ここに問題の焦点がある。

事実がどこにあるのか。言葉どおりファクトチェックの視点はここにある。


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雑感,出来事

Posted by 東芝 弘明