大阪市存続、「都構想」敗北。よかった。

出来事

朝3時50分に起きて、赤旗の日刊紙を配り、5時30分に共産党の事務所に集合し、3人で大阪市住吉区の投票所に向かった。大阪市の一番南の下にある住吉区まで、渋滞がなければ1時間。和歌山市内に行くのと時間は変わらなかった。現地の事務所に6時30分過ぎに着いて、宣伝機材を受け取って住吉区役所の投票所に着いたのは、7時10分前だった。

サイレント・スタンディングをして、住民投票で争われる大阪市廃止に反対を投じるようアピールする宣伝活動を2時間行うということだった。住民投票は、公職選挙法の適用を受けないので、投票日の蓋が閉まるまで自由に活動できる。

7時から9時までの2時間、4人で二手に分かれて投票所の外に立った。住吉区役所は、複合施設になっていて、正面入り口の向かい側には運動公園がある。ぼくが立ったのは公園側だ。7時に公園側に立つとすでにグラウンドでは少年野球が始まっていた。運動公園の周りも公園になっていて植栽が施されてグラウンドの外周をジョギングやウォーキングをしている人が何人もいた。ぼくたちは、手にはプラスター(ポスターを貼ったプラカード、造語。建築関係のプラスターボードとは無関係)を持って立った。一目見て都構想に反対している運動団体の宣伝に見える。

反対した政党は自民党と共産党。賛成の側は大阪維新の会と公明党だった。反対運動は、徐々に広がって自主的に反対する市民が増えてきた。今回の投票用紙には、「大阪市を廃止して特別区を設置する」という文言が入ったので、5年前のように「大阪市はなくなりません」というウソの宣伝はすることができなかった。大阪市を廃止して特別区を設置するという1丁目1番地の事実(不思議だと思われるだろうが、これがなかなか浸透しなかった)が浸透するに従って、反対する人が増えていった。

大阪市を廃止して4つの特別区をつくるというのは、大阪だけで巻き起こっている運動だ。日本には、20の政令指定都市があるけれど、二重行政の解消で大阪のような議論を行っている地域はない。政令指定都市の人口要件は現在50万人。政令で指定されると一般市から政令指定都市に移行する。移行すれば、都道府県からさまざまな権限が委譲される。都道府県と対等という訳ではなく警察や農林水産や防災関係で都道府県が管轄している部分は委譲されない。教育委員会の権限も強まるので、政令指定都市独自の少人数学級を実現することも可能になるし、教職員の給与も決めることができる。

多くの大都市は、権限の強まる政令指定都市を目指してきた。市町村合併によって政令指定都市になった例もある。今まで多くの権限が委譲される政令指定都市になりたいという例はあっても、政令指定都市を解体して、東京都にある23の特別区になろうとする運動は、大阪維新の会の独特のものだった。特別区は、一人前の自治体ではなく、多くの権限が都道府県に移管される。住民に密着した自治体が、特別区になると都市計画の権限さえ失い、財源も都道府県に委譲されるので政令指定都市が自分の意志で特別区に姿を変えるという運動は考えがたい。
しかも大阪維新の会は大阪市廃止、特別区設置の住民投票を「都構想」というネーミングで呼んだ。しかし、このネーミングは「看板に偽りあり」だった。どんなに特別区をつくっても、大阪府は都にはならない。将棋ではない。相手陣営に入った「歩」は「と」になるが、「都構想」では、どんなに特別区が増えても大阪府は大阪府のまま。「府」は「都」にはならない。5年前は、大阪市廃止なのに「大阪市はなくならない」と言い、今回もさまざまなごまかしに終始した。今回も『ウソとのたたかい』という形になった。

横たわっている問題の根っこを考えると、橋下徹さんが大阪知事になって構想した「大阪都構想」=大阪市廃止、特別区設置は、まさに一人の司令官による上からの改革だった。地方自治体のもっている権限は、地域住民の自主的な権限と直結する。住民主権の考え方や立場からは、自分たちの地域の権限と財政を都道府県に移管して、住民サービスを低下させるという考えは生まれようがない。まさに「都構想」は、大阪府からみた大阪市の再編だった。大阪府が大阪市を解体して、権限と財源を自分のものとして、それを開発等に活用する。ここに問題の本質がある。

大阪維新の会の説明が分かりにくかったのは、ここの中心問題を語らなかったからだ。また、語れないからこそ「都構想」という看板に偽りのあるネーミングを掲げ、投票用紙に大阪市廃止を書き込みたくなかったのだ。本当の姿が浸透するに従って、反対の意見が増え、追撃が広がるという形になった。
スタンディングをしていると寄ってきてくれた人が何人かいた。反対している人は、維新がごまかしていることに対し、怒りを持っていたのが共通していた。「なんで、こんな余計なことを2回もするのか」という女性もいた。

9時に終了したので一旦和歌山に戻り、今度は会議のために橋本市に行って、午後3時にもう一度住吉区役所に向かった。今度は1人で車を運転した。外環状線を横切るのにものすごく時間がかかった。今日は、人口移動が激しかった。大阪から戻ってくるときも高野山行きの車は渋滞していたので覚悟はしていたが、外環状線を横切っても渋滞は解消されず、結局、住吉区役所まで2時間もかかってしまった。午後5時から8時までのスタンディング。住吉区役所と住之江区役所を間違って案内された人を迎えに行ったりして、時間のロスはあったが、8時までスタンディングを行うことになった。

途中から維新の宣伝隊がやってきて、住吉区役所の角の信号でハンドマイク宣伝と周辺への呼び込み宣伝を行いはじめた。大きな音だったが、何を語っているのか聞き取りにくかった。「お互い仲良くやりましょう」と声をかけてくれて、「話し合えば分かりますよ」と言ってリーダー格の人は目の前を通り過ぎていった。

開票結果。自宅でNHKの特集番組を見た。最初1万票ほど賛成が反対を上回っていた。ドキドキしながらテレビ画面を見ていると、「お父さん、先にお風呂入ったら」と言われたので、お風呂に入って湯船につかった。
「反対が賛成を上回って、勝つって。NHKの独自調査が出たよ」
と妻が風呂のドア越しにそう言った。
「やった。よかった」
大きな声が出た。

風呂から上がると、大阪維新の会の吉村さんと松井さんの敗戦の弁を述べる記者会見が行われていた。
反対 678813
賛成 667283
これで開票率98%。僅差での勝利だ。ウソとのたたかいに勝ったのが嬉しい。


にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 和歌山県情報へにほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へにほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへブログランキング・にほんブログ村へ

出来事

Posted by 東芝 弘明