同級生のTY君のお通夜に

雑感,出来事

「間もなく開式でございます」
この声が響くとざわめいていた葬儀式の会場が静かになっていった。
同級生のTY君が亡くなった。
突然の訃報だった。「何かの間違いではないか」「誤報ではないのか」
役場に車を走らせている途中で電話があった。この第一報を聞いたときに浮かんできたのは、こういう思いだった。
「役場で確かめてみる」
そう答えて電話を切った。
役場の書類には、TY君の名前が大書きされており、ぼくと同い年の年齢が書かれていた。
何度も書かれている名前を見た。何度見直してもそこにあったのはT君の名前だった。
ショックだった。

お通夜の会場には、何人もの同級生の姿があった。久しぶりに会う人がたくさんいる。同級生の多くは、お通夜の読経が全て終わるまで待っていて、水が流れるように柩の前に列を作った。「顔を見て手を合わせたい」ということだった。
同級生の背中を見ながら列の後ろに立っていた。気がつくと横にT君の渋田小学校からの同級生であるHさんがいた。「私、どうも顔を見るのは」という彼女の声が聞こえた。彼女のお父さんの葬儀もこのホールだったことを思い出した。
押し出されるようにして棺の前に立った。胸の方から少し見上げるような形でT君の顔を見た。笑っているように見えた。優しそうな顔だった。いつものT君の穏やかな顔がそこにあった。戒名の中に「誠実」という言葉があった。誠実という文字を見ているとT君の笑った顔が思い出された。彼のことをよくとらえた戒名だった。

T君は、一昨年に開いた同窓会のことを嬉しそうに話していた。幹事をさせてもらったぼくは、この話しを嬉しく聞いた。「またしてよ」という言葉が耳に残っている。

これから先、自分たちの世代も、同級生の死というものに向きあっていくだろう。
「そりゃあ、もうじき還暦やで」
お通夜に行く前にN君がそう言った。
同級生も髪の毛に白いものが増えたり、髪が薄くなったりし始めている。現役世代の一番最後にさしかかりつつある中で、何人もの同級生が、いろいろな病気を抱え始めている。
「1度でいいから脳のMRI、撮った方がいいで」
N君の言葉に強い意志が感じられた。彼も病気を抱えている。

ホールを後にする人が増えて、玄関口に同級生たちの塊ができていた。久しぶりやねという表情がにじんでいたが、その思いは抑えられ、少しずつ塊が解けていった。

ぼくの車に乗り合わせて行った3人もホールの外に出た。外は冷蔵庫のように冷たかった。車までのほんのわずかな距離なのに「おお、寒」という声が自然に出た。
2月11日の夜の通夜。母が亡くなった日もものすごく寒い2月14日だったことを思い出した。自分の車が駐車場に1つ、ポツンと残っていた。


にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 和歌山県情報へにほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へにほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへブログランキング・にほんブログ村へ

雑感,出来事

Posted by 東芝 弘明