笠田高校野球部、惜敗、準優勝 2005年7月28日(木)

かつらぎ・発見伝

12時30分から笠田高校と智辯和歌山の高校野球決勝戦が始まった。
試合の結果は次のとおり。

笠田高校は逆転に次ぐ逆転で、5回裏、6対4とリードした。智辯のエースは2回の裏、笠田高校の3点をたたき出した攻撃の前に降板しライトに入った。
しかし、笠田高校のエース尾崎君は、次第に球威を落とし、コントロールが乱れ始めた。智辯は打線に火がつきはじめ、ヒットがつながるようになってきた。6回の表に1点を入れられ、スコアは6対5と追い詰められた。
尾崎君は、7回表、智辯の攻撃になると制球力が落ち、コントロールが乱れ、ナインに振り向いて手を挙げる動作にも機敏さがなくなっていた。疲れがピークに達していた。1死1、2塁のとき、智辯のエースだった松隈君が、レフト前ヒットで同点打をたたき出した。ピンチが続く。2死満塁。辻本君が2打点となるセンター前ヒットを放ち、突き放した。
ランナーはまだ2人塁上にいた。笠田は、たまらなくなってタイムを取り、尾崎君のもとに内野手とキャプテンが駆けより、誰かが尾崎君の肩に手を置いて励ました。
しかし、尾崎君は限界をすでに超えていた。智辯の3人目のピッチャー竹中君は、左中間のスタンドに吸い込まれるホームランを打ち3点を追加した。智辯打線はこの回、一挙に6点を獲得した。
7回表の智辯の攻撃が笠田高校の追撃を打ち砕いてしまった。智辯は8回表にもだめ押しの1点を追加し、12対6と笠田高校を引き離した。
笠田高校の投手陣は2人。エースの尾崎君と土屋君の2枚看板だ。応援していた多くの人は、7回表、ベンチにいたキャプテンを含むみんながマウンドに駆け寄ったとき、尾崎君を交替させるのではないかと感じていた。しかし、交替は告げられなかった。続投と励まし、これが伝令の中身だったのだろう。
なぜ、ピッチャー交替をおこなわなかったのか。2番手のピッチャー、土屋君は、昨日の準決勝で完投していた。8回表、マウンドに立った土屋君は、あきらかに尾崎君より球威がなかった。

智辯和歌山の投手陣は、3人体制だった。3人ともエースに見劣りしないスピードの早さと制球力がある。3人目の竹中君は、満塁のピンチでマウンドに上がり、笠田高校に逆転を許したが、次第にピッチングが冴えてきた。6点差のリードを得てからは、攻撃を押さえ込んでいった。勝敗は、投手陣の厚さの違いだったのかも知れない。
29年も経つと応援の仕方は大きく変わるものだ。学生服を着て鉢巻きを締めた男子学生は見られない。軍歌を歌う応援団はもはや存在しなくなっていた。
女子の応援団は、目の覚めるようなブルーのTシャツだ。チアガールの女の子達もブルーに黄色のラインの入ったユニホームだった。あの重たい校旗を持った人間は見あたらなかった。
会場にいたのは、必勝旗を左右に振る男の子だ。彼は応援席の最上階で、この旗をかろやかに振っていた。
6対4になったとき目頭が熱くなった。点を取るたびに応援する観客は総立ちになって拍手を送った。6点差になってからも、応援席は、声を振り絞って選手達を励ました。
9回裏、セカンドゴロをダブルプレーでさばいた瞬間、智辯の選手達は全力で走り寄り抱き合いもみくちゃになった。智辯和歌山が優勝を決めた瞬間だった。この姿にサイレン音が重なった。
笠田高校野球部の選手達は、全力を出し切ったと思う。彼らは、試合終了後、応援スタンドの前まで来て、みんなで深々と頭を下げた。拍手が鳴りやまなかった。応援団の女の子達は、何人も涙をぬぐっていた。地区大会予選、準優勝。智辯和歌山を笠田高校はずいぶん苦しめた。すがすがしい試合だった。
笠田高校野球部の夏は終わった。紀三井寺球場は、高校球児の夢を球場の建物に染みこませて幕を閉じた。


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かつらぎ・発見伝

Posted by 東芝 弘明