農協解体へ 2005年9月9日(金)

出来事

昨日、自民党の集会のなかで農協の理事長が、「農協を解体しようとしている」と報告し、農協解体反対を訴えたようだ。
郵政民営化が実施され、農協が解体されたら田舎はどうなるのだろう。農協は合併以後、様々な支所を閉鎖し支所の統廃合を進めている。紀北川上農協も支所の閉鎖が目立つ。
農協は協同組合なので公務員ではない。巨大な農協を解体する理由はどこにあるのだろう。
小泉総理は、農協の独占禁止法適用除外を批判してきたという。もし、協同組合であること自体がおかしいということになれば、大変な事態に直面することになる。
協同組合から民間会社への移行が方針だとすれば、文字通り農協は縮小・解体に向かう。
農協の総資産は453兆円。協同組合だったからこそ、税制面でも優遇されてきた。もし民間会社への移行を義務づけられたら、現在の経営形態を維持できない問題に直面すると思われる。
農協の解体案は、経済・信用・共済に分割するというもの。自民と公明の連立政権は、7月29日に中間報告を出そうとしていたが、9月11日以降に公表を延期している。選挙が終わるのを待って公表するということだ。
ところで、郵便局はかつらぎ町に7つある。このまま推移すれば、最も身近な金融機関は郵便局になる。しかし、民営化されるといくつ郵便局が残るのか、という状況になるだろう。
郵政民営化法案で、僻地・離島で守るとされた郵便局は7000しかなかった。田舎のなかには僻地でも離島でもない田舎がたくさんある。7000か所からもれた郵便局は、採算が合わない場合、閉鎖される。
農協の経営が今以上に苦しくなり、支所の閉鎖がさらに進み、郵便局が閉鎖されていけば、田舎は郵便局と農協という就職口を奪われる。市町村合併をさらに推進するということだから、農協と郵便局、役場が地域から撤退するというところさえ現れる。
郵政民営化の目的は小さな政府の実現にはない。郵政は黒字なので財政の削減にはならず、国庫納付金の廃止、課税の開始によって国の収入減を実現する。これは全く皮肉である。
国鉄の分割民営化は、国鉄の膨大な資産の民間への払い下げと民間会社の誕生によるローカル線の廃止縮小を実現した。国民の財産であった鉄道網は、その結果、資本に切り売りされ、解体されていった。和歌山線も3つの区間に分離され、粉河──和歌山間、粉河──橋本間、橋本──王子間で採算が問題視されるようになった。
粉河──橋本間は、夏場の日曜日、月1回10時頃から4時頃まで運行が停止される。保線の点検工事が昼間おこなわれているので運行を停止するのだ。夜間工事はコストが高い。電車を止めてでも昼間点検をした方が安く上がるというのが電車停止の理由だ。
自治体には、和歌山線の廃線問題が浮上するのではないかという不安がある。
電車がなくなり郵便局が縮小し、農協も縮小し、役場も縮小していけば、農村地域は目に見えて疲弊していく。
構造改革は、大企業の減税を先行させ、経済活動を支援し、規制を緩和し、労働法制を緩和して正規雇用の縮小と非正規雇用の増大を促進してきた。
橋本内閣が推進しようとした構造改革を、小泉総理はもう一度引っ張り出してきて、4年4か月推進してきた。
アメリカのニューオリンズのハリケーン被害。被害を拡大したのは貧富の差の拡大だった。竹中平蔵さんは、アメリカを手本にして日本で新自由主義を実践して見せた。大企業減税と高額所得者減税、庶民増税をすすめ非正規雇用である派遣労働や契約社員を増やすことによって貧富の差は見事に拡大した。
銀行資本と大企業は経営を立て直し、余剰資金をだぶつかせ始めた。一方の極には富が増大し、一方の極には貧困が蓄積しつつある。
「構造改革は着実に成果を上げつつある」
「痛みの先に未来がある」──ありましたよ。未来が。
貧困の増大と資本の蓄積という未来が。
これは日本をアメリカのようにしようということだ。
──しかし、決定的な違いがある。それは労働運動の絶対的ともいえる差だ。アメリカは、働く人を守る組合が存在している。雇用者と被雇用者の契約がかなり鮮明に存在し、転職は日本より容易に実現する。
日本の構造改革は、急激に雇用のルールを壊してきた。国会で労働基準法が改悪されても、爆発的な労働運動はおこらない。正規雇用の縮小と、長時間過密労働、サービス残業。働きながら死ぬ現実。
改革──まだまだこれから。国民はどれだけ負担に耐えれるか。
痛みの先に、未来はある。
ニューオリンズのような未来が。
構造改革に拍手。
拍手すればするほど鮮血がしたたり落ちる。


にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 和歌山県情報へにほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へにほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへブログランキング・にほんブログ村へ

出来事

Posted by 東芝 弘明