庁舎の候補地は白紙になった

出来事,かつらぎ町議会

9月会議初日。本会議は3時まえに終了したが、庁舎建設検討特別委員会が開催され、8月10日に大谷の旧選果場(現集積場)の用地買収がうまくいかなくなり、当初の構想は白紙に戻ることが報告された。町当局は、用地買収に対して町は予算を家組まず、予定地ではなくあくまで候補地として交渉するという態度で臨み、農協に対し3億7000万円という金額を提示し、用地の買収、建物の撤去、移転補償を行う姿勢を示したが、金額的な折り合いがつかず白紙となったというものだった。

ぼくの考え方を書いておこう。
町は、笠田中のほ場の用地買収のように、予算を組み、庁舎建設の基本構想を組み立てた上で、用地に関わる計算も行って買収交渉に当たるべきだった。ただ、相手のあることなので、ぼくが言うような態度を取っていたとしても交渉はうまくいかなかったかも知れない。

現時点で明確にのぞみたいのは、総合文化会館を建設したときのように、マスタープランを策定して庁舎建設の考え方を内外に明らかにした上で、町地買収なり現地建て替えなりを検討すべきだということだ。総合文化会館建設時は、マスタープランを先行させつつ、用地選定と用地買収が行われた。総合文化会館のマスタープランの発想は、豊かなものだった。実現には至らなかったが、音響の抜群な施設をつくるとか、当時はやり出したハイビジョンを活用した展示を行おうとか、プラネタリウムを設置しようとか(これはすぐに却下になった)、使い勝手のよい施設にしようとか、規模をどのように設定しようとか、いろいろな角度からの可能性が追究されていた。
このマスタープランに基づいて、Panasonicのツインタワーに行ったり、入善町の大ホールを視察に行ったりした。入善町の大ホールはクラシックコンサートができる大ホールに徹底的にこだわったことによって、クラシック界の注目が集まり、レコーディングが盛んに行われるようになった施設だった。
このマスタープランが生かされて、施設が建設されていれば、今以上に魅力のある施設になったかも知れない。
庁舎建設の場合は、業者に委託してマスタープランを立てるにしても、まず町職員による課題の洗い出しを行う必要がある。

  • 仕事場であり住民の拠点である庁舎の在り方をどう考えるべきなのか
  • 費用面でどのような庁舎にすべきなのか、華美なものにするのか、簡素なものにするのか
  • 職員一人当たりの仕事のスペースをどう確保すべきなのか
  • 庁舎にはどのような機能が必要なのか
  • 町民にとってどのような庁舎をつくるべきなのか

考えるべきことは多岐に渡る。
まずは職員集団による課題の洗い出しと基本的なコンセプトを明らかにすべきだと考える。その上に立って民間のコンサルタントにマスタープランを委託するか、町がいうようにサウンディング調査(民間によるコンペティションによるマスタープラン的な提案──これは、費用をかけない民間からの提案となる)にかける必要がある。
このときにカギを握るのは、具体的にどれだけ町の考え方を示せるかどうかだろう。

町は、実際の庁舎をPFIで行おうとしている。PFIというのは、民間の事業とセットで庁舎を建設したり(庁舎のビルの何階までが庁舎、その上はマンションのような考え方、商業施設との組み合わせもある)、庁舎を建ててもらって、家賃を払ったり、リースにしてリース料を払ったりする方法、または、ある程度企業側の裁量に事業をゆだね、建設に至るまで企業との協議を重ねつつ庁舎を建てる方法など、いろいろなケースが考えられる。

どうしてこのような考え方が出ているのかについては、説明が必要だろう。
庁舎建設の基金は4億2500万円。早い話が庁舎を建てるのに必要なお金がないということだ。お金がないので企業によるサウンディングとかPFIという話が出ているということだ。しかし、お金がないからこそ、基本的な構想を打ち立てる必要がある。お金のないのに合わせてどういうような建物を建てるのかということが一つの命題になる。
紀の川市みたいに豪華ホテルのような建物は作る必要がないだろう。
何もかも業者任せでリースにしたらいいということにはならないだろう。

いずれにしても、どのような形で庁舎を建設するのかを、具体的に見定めないと方向性は決まらない。現時点でぼくがここに書いているようなことは、何も具体化されていない。町から出てきたのは、サウンディング調査を実施するということと、建物はPFIで建てるということだけだった。しかも、このことを具体的に検討した資料は存在しない。

井本町長が新庁舎建設の意向を明らかにし、用地を買収し、一定の庁舎建設の基金を積み立てた時点で、中阪町長が新しい町長に就任した。中阪町長は、井本町長が予定していた用地には庁舎を建てないことを明らかにし、新たな候補地として大谷の旧選果場を決めた。それから3年がたった。現時点で庁舎建設については、作ることを表明した基本構想もできていない。

集団で多面的な方向から検討する材料さえも用意されていないのが現状で、用地の件だけが先行し、交渉がうまくいかず用地は白紙に戻ったという状態になっている。これからどう進めていくのか。まずは執行権をもっている町が、フリーハンド状態(全方向への可能性を秘めているが、方向が何も決まっていない状態)を脱して、庁舎建設を具体化する方向へと足を踏み出す必要がある。議論のアウトラインにすべき、たたき台のたたき台に当たるものは、行政職員が作らなければならない。それをしないと何も決まらないまま、時間だけが過ぎていく。


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Posted by 東芝 弘明