ねじれ国会について

雑感

散髪屋さんで髪の毛を切ってもらっていると、ぼくの頭を器用に触りながら旦那さんがこう言った。
「小選挙区制なんてやめて、中選挙区制に戻したらいいんや。和歌山県やったら全権を一つの選挙区にして5人か6人通るようにしたらいいんや」
この発言をきっかけに衆議院と参議院の話が始まった。

参議院の不要論とかが、まことしやかに論じられ、「大阪維新の会」などは憲法を改正して参議院を廃止しようとまで呼びかけている。

参議院は、ものすごく重要な役割を発揮して存在しているし機能している。
これがぼくの結論。

国民にとって必要な法案のうち、みんながいいというものは、民主党から日本共産党まで賛成して成立している(もちろん、なかには、良い法案であっても、いくつかの古くさい主張の政党によって成立しないものもあるが)。
考えるべきなのは、なかなか審議が進まない法案があるのはなぜかということだろう。マスメディアは、法案が通らないのは衆参がねじれているからだという。それをもって、国会が機能していない、ねじれ国会が問題だとまくしたてる。参議院不要論が浮上してくる。こういう解説のときには、法案の内容は紹介されない。

しかし、本当に問題なのは法案の内容だ。なかなか通らない法案は、功と罪がせめぎ合って存在しているので、意見が対立し綱引きが行われている。衆参のねじれ状態があるので、こういう法案の場合は、衆議院で可決しても参議院では否決されてしまう。現在の状態は、否決された参議院での法案は、衆議院に差し戻される。この法案は、衆議院の3分の2の賛成で可決成立となるが、民主党の衆議院議席は291(60.6%)、与党系の新党大地・真民主(3)と国民新党(3)を足しても298議席なので3分の2の320に達しない。
現在の国会は、与党と野党が国会で綱引きをして対立する法案については、可決・成立しない状況にある。

このような現在のねじれ国会は、どうして生まれたのだろう。
まずは衆議院の仕組みから考えよう。
衆議院は、小選挙区制と比例代表制に分かれているが、小選挙区制で比較して多数派になった政党が、過半数を占めるような仕組みになっている。300の小選挙区制と180の比例という関係が、こういう結果を生み出している。
小泉さんによる郵政選挙が行われたのは2005年。このとき自民党は296議席、公明党は31議席を獲得した。与党である2つの政党の議席は327議席で議席占有率は3分の2を超えた。
このときの小選挙区制を軸とする衆議院選挙で小泉内閣がとった戦術は、郵政選挙だと銘打って、郵政民営化こそが選挙の最大の争点だというキャンペーンをはって、国民の支持を得るという劇場型のものだった。
しかし、多数を占めた自民党は、小泉さん就任以来の構造改革をさらに推進し、2年後の参議院では、敗北をみずからつくりだす結果となり、自民党は大敗北を喫することとなった。改選後の参議院の議席は、自民83、公明20の計103議席となり、参議院の議席総数242に対し42.6%の議席にしかならなかった。
このときの参議院の敗北は、2009年の総選挙における自民党の敗北、民主党による政権交代への流れの始まりだった。

2009年の民主党の政権交代時の衆議院における民主党の議席は308あった。民主党は、この3年間で選挙もしていないのに離党や除籍、辞任などで17議席も失っている。政治をやればやるほど議席が減っていく政党であるのが民主党の特徴だといえる。
民主党が勝利したのは、構造改革を批判し、政治の転換を訴えたことが大きい。マニフェストに掲げた政策は、小泉構造改革への批判とそこからの転換だった。「コンクリートから人へ」、「後期高齢者医療制度の廃止」、「自立支援法の廃止」などは、その典型だった。しかし、政権についた民主党は、鳩山、菅、野田と変遷した中で、完全に自民党流の構造改革路線に立ち返り、マニフェストをかなぐり捨ててしまった。この路線の先にまっていたのが、消費税増税とTPP参加、原発再稼働だろう。

政権交代後実施された2010年の参議院選挙で民主党は敗北した。選挙後の参議院の議席は105議席、与党系の議席を合わせても110議席(45.5%)しかない。自民党の時代でも衆参のねじれが起こり、民主党の時代になっても衆参のねじれが起こって今日に至っている。

このような歴史的経緯は、何を物語っているのだろうか。
衆議院選挙で多数を占めた政党が、次の参議院では、国民の支持を失って敗北し、参議院では過半数を占めることのできない結果となった。自分たちの政治の結果としてねじれ国会ができたのに、これを参議院の制度のせいにするのは、自分たちの政治の悪さを自覚しないものではないだろうか。

法案がなかなか通らないところにこそ、国民に意思が働いている。参議院は、暴走しようとする衆議院の多数の横暴をしっかりくい止める役割を果たしている。この抵抗の時間が、TPP参加反対や消費税増税反対の運動を生み出し、問題の本質を明らかにしていく時間になっている。
参議院を廃止したらどうなるだろう。小選挙区制を軸とする衆議院による多数政党が、政治を暴走させることは間違いない。憲法を改正して、参議院を廃止しようとする「大阪維新の会」の主張は、日本の政治を暴走させるとんでもない方針ではないだろうか。


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雑感

Posted by 東芝 弘明